・早くも再開される対中ODA ~戦略なき日本の外交~
政府は凍結状態だった05年度分の中国向け円借款について、近く実施を閣議決定する方向で最終調整に入った。週明けにも関係閣僚による海外経済協力会議を開き、08年の北京五輪までに対中円借款を終了させる方針とともに確認する。05年度分は04年度の859億円から750億円程度に減額する予定だったが、凍結解除にあたり、中国への反発の強い自民党の理解を得るため、さらに700億円以下まで減らすことを検討している。
円借款の供与は通常、年度末までに決定、次年度以降に実施するが、05年度分の対中円借款については今年3月、東シナ海のガス田開発協議で中国側が尖閣諸島周辺を含む共同開発を提案したことや、小泉純一郎首相の靖国神社参拝に対する激しい非難などに自民党内の反発が強まり、年度内決定が見送られていた。先月23日にカタールで行われた日中外相会談で首脳会談を除く各分野の対話や協力を進めることが確認され、「前向きな話をする環境が整った」(外務省幹部)と判断した。
こういうニュースを聞くと、日本の外交の卑屈さや稚拙さもまだまだ直っていないのかと思わされます。中国の政策としての徹底した反日や、東シナ海ガス田問題や、軍備増強により逼迫した危機を目の当たりにし、今年度の対中ODAを凍結したというニュースを聞いた時は、当然ながらやっと中国に対しても普通の外交が出来かけてきたかと思いましたが、今回の凍結解除は、中国側から何の譲歩も引き出していない状態で勝手に日本から再開を決定しようとしています。前回と変わっているのは、一度だけ外相会談を行っているだけ。そこでは靖国問題に関しても、東シナ海ガス田問題に関しても、中国側の譲歩が出ているわけでもなく、何ら進展もしていないのです。ただ一回の外相会談が行われただけで凍結解除。これでは何のために凍結をしていたのかさえわからなくなってきます。
ODAというのは、ただ単にお金をばら撒けば良いというものではありません。同時に日本の国益にも繋がるように、戦略的に行うべきものです。徹底的な反日政策を続け、東シナ海ガス田などでも横暴極まる態度を続ける対中国に関しても、08年度から停止予定の期間を早めるというさらに強硬な手もちらつかせながら、何らかの譲歩を引き出す外交カードとして使用するべきなのではないでしょうか。経済成長著しく、強がる中国も、まだまだ金が欲しいはずです。中国側も、現在の経済成長を維持する為には自国だけの力ではもはや限界であり、日本を中心とした海外からの投資が不可欠だというシグナルを発しています(過去記事参照→・中国の主張通りの総理を選ぶべきだと主張するマスコミ ~温家宝首相が暗に出したサインとは~ )。そんな中国に対し、何の外交的進展もない状態でやっぱりODAはこれまで通り差し上げますでは、何の戦略的価値もありません。単なる金のばら撒きどころか、さらに中国をつけ上がらせる結果にもなりかねません。
先日、やっと政府内に「ODA戦略会議」というものが出来上がり、垂れ流しを防止するというニュース を聞いた矢先にこの結果は非常に残念です。何の為に出来た戦略会議なのでしょう。ODAを再開することで、対話をしやすい状態にしたという言い訳も聞こえてきそうですが、中国に対しては先に餌を与えてはいけないことくらい今までの外交で学ばなかったのでしょうか。再考を希望します。
参考書籍:
怒りを超えてもはやお笑い!日本の中国援助ODA―誰も知らない血税3兆円の行方
青木 直人
中国は日本を併合する
平松 茂雄