八犬伝というと、私はNHKの人形劇を思い出す。辻村ジュザブローの人形と、今は亡き坂本九が黒子の衣装を着て進行役をしていた連続ドラマだ。しかし、もう少し若い方は、薬師丸ひろ子と真田広之のカドカワ版八犬伝を連想する様だ。このブログでも同作についてレビューを書いたが、過去より無料でネット配信される作品で、多くの方が視聴されている。
当作は山田風太郎の原作で、八犬伝を実写化するだけでなく、作者である滝沢馬琴と葛飾北斎との交流も描いている。最初、「虚」の架空のお話である八犬伝と、「実」である馬琴と北斎のエピソードの入れ替わりが忙しく、戸惑うこともあったが、やがて作品に没入することになる。
やっぱり、名優である役所広司と内野聖陽の共演による重厚な演技のおかげだろう。当作は、とにかく配役が豪華だ。怨霊である玉梓は、栗山千明が前作の夏木マリに匹敵するような怪演だ。鶴屋南北の立川談春もハマっていたと思う。劇中の歌舞伎のシーンも中村獅童が出演したりしている。そして、人気者の河合優実もお姫様役で登場する。彼女など、チョイ役で使っているから大したものだ。
素直に、面白い作品だった。作中のセリフにも出て来るが、テーマである「虚と実」は当作自体の構造でもあり、無理なく表現できていると思う。何よりもエンターテインメントとしても、とても楽しめる作品だった。何年後、八犬伝というと当作のことを思い出す人が増えるかもしれない。
イオンシネマで視聴