周防正行監督の「Shall we dance」から10年を経た新作。日本の刑事裁判の人権無視の現状に目をそむけたくなる作品である。
作品は、列車で女子中学生に身に覚えのない痴漢の嫌疑かけられ逮捕されたフリーターの青年(加瀬亮)の冤罪裁判を描いている。
どれだけ否定しても、「どうせお前がやったんだろ!」と恫喝する刑事(大森南朋)「認めれば罰金で、交通違反と一緒だ。」といいながら、この刑事は裁判でそれを平然と否定する。「それだけ混雑していたんだ。偶然手が触れてしまったと考えられないかな?」と誘導して自白調書を取ろうとする、その上司。検事までが、「いつもでも否認してタダで済むと思うなよ。」とか「裁判しても無罪にはならないからな!裁判は長いぞ」と脅す。初めて泊まる拘置所で呼んだ当番弁護士も全く親身にならない。
結局、役所広司と最初痴漢裁判を嫌がった瀬戸朝香の二人の弁護士が担当になり、母親や友人、元恋人の支えもあり裁判が始まる。彼の無罪を証明する女性の証人も登場するが、無残にも1審では小日向文世の裁判長から執行猶予のついた有罪判決を言い渡される。
ラストは主人公の裁判に対する失望の独白で終わる。「裁判とは正しい判断をする場所ではない。真実を知っているのは神だけだ。とりあえずの事実を判断され今日ボクは有罪になった。でも、これは間違っている。それでも、ボクはやっていないのだから。」
安易なテレビドラマなら、これで無罪となりハッピーエンドなのだが、この作品は、最後まで重い問題を投げかけてくる。