出入りの激しい外科一般病棟

盲腸で未明の5時頃入ってきた大学生。
緊急に転院してきた女性は点滴のルート取りが出来なくて3人位の看護師さん総力戦。
それでも駄目でドクター出動。

互いの病気のことを話すことはなかったから、何の病気なのかほとんど分からなかったけれど、室内帽を被っていたのは、ガン患者さんだろうな。

先月26日に入院してきた私は、いつのまにやら最古参の牢名主ならぬ病棟名主になってしまいました。けれど、今日退院です。でも、


嬉しくない


嬉しくない


嬉しくない



お向かいの患者さんは相当な大手術をされたようで、集中治療室から2日前に戻って来たのだけど、未だに食欲がないといってご飯に箸がつかない。肺癌で、場合によっては肋骨を外して腫瘍をとることになるかもしれないと言ってたな。何か分からない太いチューブが2本。痛いとも言わずじっと耐えている。

辛いだろうな。

苦しいだろうな。

 でも、腫瘍がきれいにとれたのだったらそれが一番いい。

 

わたしの担当ドクターが2日前に

「退院の日決めていいからね」

って、伝えに来たとき、私はきっと一生で一番悲しい顔をしたと思う。


お腹の中に腫瘍があるのに?


先生、わたしの腫瘍は取ってくれないの?

先生、わたしの腫瘍は取ってくれないの?

先生、わたしの腫瘍は取ってくれないの?




 心のなかで、何度も同じ言葉を繰り返していました。

 嗚咽にも言葉にも叫びにも出来ない思いが涙になって溢れでてとまらなかった。

 誰かにすがりついて大声で泣きたかった。

外は憎らしいほどの快晴です。