迫力ある本格派
時代劇時代の到来か?
時代劇時代の到来か?
今年は時代劇ブームなんでしょうか。本作品のほかにも、ぞくぞくと時代劇が公開又は公開予定となっています。時代考証、日本家屋、着物、かつら、殺陣、所作等々、現代劇にくらべると専門技術や知識が必要なんじゃないかな?と想像します。侍文化は日本特有のものだから、時代映画を撮影するうえで必要な専門技術や知識がきちんと引き継がれていくよう、時々に製作して欲しいなと思います。
本作品には、見せる要素が満載です。
まずキャスト。邦画はあんまり観ないので若い俳優さんは知らないけれど、まず大御所、松方弘樹、平幹二郎、松本幸四郎が脇をやっています。存在感といい、漂う風格といい素晴らしいのですが、松方さんだけは刺客の役じゃないほうがよかったなと感じました。あのお方は千両、万両役者です。黙って立っているだけで絵になっちゃう花形大スターですから、何を演じても「松方弘樹」なんですよね。それこそ老中役のようにちょっとだけ出てくる役ならともかく、全編を通じて刺客として活躍する役なので、他の12人と一緒にいると浮いてみえるんです。殺陣なんで別格でしょ。流麗で決まっていてかっこよくて・・・でもそれがまずい。血なまぐさいリアリティーのある映画であの華麗さはかえって邪魔でした。なんかもったいなかったです。
主役の役所広司さんはいつもながらうまいですね。彼がダメな演技しているところを観たことないような気がします。彼は松方さんとは対照的に演じればその役の顔になる人だと思います。
今回、びっくりして見直したのが、稲垣吾郎君。冷酷残忍な明石藩主役をこれでもかというほどの切れ味で演じています。視線から放射される「狂」に思わずゾクゾクしてしまいました。スマップの他のメンバーも映画やドラマに出演しているようですが、今まで観た他の誰よりも役者として際立つ演技でした。
市村正親さんは意外な発見です。劇団四季の俳優さんだったなんてこれっぽっちも知らなかったし気づかなかった方だけど、セリフ回しといい貫禄といい、時代劇専門の俳優さんかと思ったほどです。
セットも豪華でした。本作品は、志ある12人の侍と1人が密命を受けて暴君(将軍の弟だから始末が悪い)を参勤交代の移動中に討つお話。普通のやり方では近づくことさえ出来ないから、道中の宿(宿場全体)に罠をはるという戦法なのだけど、火薬やら移動する壁やらトラップやら仕掛けがおもしろいです。また、屋敷の佇まいや風俗描写も見応えがあり、特に既婚の女性がきちんと眉をおとして、お歯黒していたのがとても気に入りました。
トラウマになりそうな恐さもまた特筆すべき点かな。暴君の残虐性は最初の方で分かるのですが、その撮り方が凄いのよ。下手な怪談よりよほど恐い映像です。インタビューによると監督はトラウマを狙っていたみたいです。
文句があるとすれば、笑いをとろうとしている場面ですべっていることでしょうか。それも展開をぶち壊しにしかねない程なので、岸部一徳さんとのアレは無い方がよかったと思います。三池監督は、「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」でも石橋貴明をつかって思わず引いてしまいたくなるシーンを撮っていましたから、この手の笑いが好きなのかもしれませんが、理解不能な感覚です。
刺客の侍の中に一人山の民、小弥太が入るのはなかなか良かったと思いました。最後の一部を除けばですけど。志ある侍の気概だけを手放しに礼賛している訳ではないでしょう。争いとは?戦いとは?人の本能とは?侍の戦い(大義の戦い)も、そこに累々と横たわる屍をみれば虚しさは同じ。小弥太が粗野であるにせよ、その欲求が食べることや好きな女に向かっていることに安心感を感じました。「妖怪大戦争」と同じメッセージがあるような気がします。
上映時間:141分
監督:三池崇史
出演:役所広司、山田孝之、伊勢谷友介
公式サイト:http://13assassins.jp/
