世界経済フォーラムのアジェンダを読んで「マイクロカプセル」と呼ばれる目に見えない小さなプラスチック物質について考えてみました。

 

 使い捨てプラスチックと言えば、レジ袋やペットボトル、食品トレーが思い浮かびます。最近ではコロナウィルス感染で使い捨てマスクも大量に海に漂うプラスチックとして問題になっています。しかし、それらとは別に、カメラのレンズで捉えられないプラスチック汚染物質が海に浮かんでいます。

 

 それは、私たちが日々使用していながらも、目にすることのない使い捨てプラスチックです。砂粒ほどの大きさのマイクロプラスチックは、回収してリサイクルすることができません。少しずつこれが大きな問題になり始めています。

 

 「マイクロカプセル」と呼ばれるその物質は、マイクロプラスチックの一種で、毎年何百万トンも生産され、洗濯用品、スキンケア製品、化粧品の原材料に添加されています。今回はその中でも衣類の洗剤や柔軟剤に使われている香料マイクロカプセルについてお話ししたいと思います。

 

 

 香りには不思議な力があります。科学的に巧妙な方法でその効果を発揮します。私たちの脳は、衣類がある種の香りを放つ時、その衣類がより白く見えるような感覚を引き起こします。ブランドによってそれぞれの香りに特徴があり、その香りを商品の付加価値とすることができるのです。その付加価値を支える存在が香料マイクロカプセルです。

 

 香料マイクロカプセルは、目に見えないほど小さなプラスチックのカプセルの中に香料を閉じ込め、熱や摩擦などでカプセルの膜が破裂することで少しずつ香料を放出する技術です。

 

             マイクロカプセルが破裂して飛び出す様子です。

 

膜が破裂するまで香料は揮発せず、化学変化を起こさないため、香りが何日も場合はよっては何カ月も長続きします。その技術により人が意識しやすい瞬間に香りを放つことができ、私たちが好きな「洗い立て」の香りが感じられ、大ヒットになっています。干されている洗濯物が乾く際にそよ風に乗って広がる香り。頭から衣類を被った時に感じる爽快感。長い一日の終わりまでしっかりと残る香り。これらを可能にしているのはマイクロカプセルで、主な材料はメラミンホルムアルデヒド、ポリウレタン、ポリウレアなどです。ただし、マイクロカプセルは含有量が製品総量の1%未満のため、日本では表示の必要がなく、「香りのカプセル」「香りのスイッチ」などと表現されていることでマイクロカプセルが使用されていると判断するしかありません。

        

 さて、欧州の状況ですが、エナジーセービングトラストによる洗濯機使用データーに基づき推測したところ、英国の平均的な家庭では一週間の洗濯サイクルにおいて5500万個のマイクロカプセルが放出されています。欧州だけでも、毎年17000トン以上のマイクロプラスチックが洗濯用洗剤やその他の洗浄剤に添加されています。

 

今、これまでよりも頻繁に洗濯することは、コロナのパンデミックから身を守るための一つの方法として、特定の職業にとって非常に重要なことです。しかし洗濯の回数を増やすことはより多くの洗剤を使い、多くのマイクロカプセルを放出し、汚染を加速させることになります。

 

 柔軟仕上げ剤の香料に、はじめてマイクロカプセル技術が導入されたのは、2008年、アメリカのP&Gです。それ以来世界中に広がって、今や洗剤メーカーはマイクロカプセル技術で香料使用料は3割削減ができるようになっています。業界にとっては革命的な技術ですが、洗剤や柔軟剤にそんなに長く続く香りが必要でしょうか?

 

 海洋を汚染し、回収することも出来ないマイクロプラスチックが、意図的に添加されています。洗剤や柔軟剤にマイクロプラスチックが使用されていることすら私たちは知らされていませんでした。法規制が必要と考えますが、まずは皆さんとこの問題を共有したいと思います。

 

by strawberry-dew