(幌/神木隆之介)
僕 怖いんだよ
だって 僕だけはどうしても
涙がこぼれないんだもん
ねぇ おじいちゃん
僕って冷たい人なのかな?
とっても 冷たい人間なのかな?
(お祖父ちゃん/杉浦直樹)
そうじゃないさ
幌は 優しい子だよ
おじいちゃんが保証するよ
(幌)
だったら・・・
(お祖父ちゃん)
心にある
幹が太いんだ
(幌)
幹?
(お祖父ちゃん)
木だよ
人間は誰もが 心に
木を持っているんだ
(幌)
心に木が伸びてるの?
(お祖父ちゃん)
そうだよ その木が
幌は普通の人より太くて強いんだ
人はね 幌
悲しいことがあると 瞬間
その木が折れてしまうんだよ
そうすることで
木が悲鳴を上げるように涙をこぼす
だけど 幌の幹は太くって強いから
簡単には折れない 風が吹いても
雨が叩いても 折れない
(幌)
嵐が来ても?
(お祖父ちゃん)
そうだね
(幌)
でも どんな意味があんの?
僕は・・・
(お祖父ちゃん)
慰めてあげられる
支えてあげられるじゃないか
人はね 心の木が折れると
自分ではどうしていいか分からない
何も考えられない だけど
幌の幹は強いから
そんな時でも 考えられる
行動することができる
思いやることもできる
幌が 誰よりも強くて
優しい証しが そこにある
世界を救える程さ
_
(幌)
僕 おじいちゃんが
一番好きだよ
(お祖父ちゃん)
ダメだよ
好きに順番つけたら
(幌)
でも 本当なんだ
(お祖父ちゃん)
よし じゃあ
ここだけの秘密にしよう
(幌)
うん そうしよう
___
(幌の声)
僕も いつかはポロポロと
涙を流す時が来るかもしれません
大きな僕の心の木は
役目を終えて 折れてしまう
世界のすべての人を救い出したあとには
___
(お祖父ちゃん)
宇宙は広大だ
それに比べたら 人間なんて本当に
目に見えない塵みたいなもんさ
他人と争うことなんか
何て無意味なことだろうと
思うよ
(愁/幌の同級生/本郷奏多)
でも 不思議ですね
その塵みたいな僕たちは
生きている
(お祖父ちゃん)
ほんとに 生命は不思議だ
_
(お祖父ちゃん)
きっと怖いさ
いや 怖いって
だって 人間だもの
だけどね 神様はそれを
乗り越えるために
一つだけ 強い力を渡してくれる
(幌)
強い力?
ゲームのアイテムみたいなもの?
(お祖父ちゃん)
いや もっと遥かに
素晴らしいものさ
労わり合う 思いの力を
くれたんだよ
_
(幌の声)
正直言って僕は
女の子を好きとか
嫌いだとかいう気持ちは
まだよく分かりません
でも 労わり合う気持ちは
持ちたいとは思っています
それが世界で いいえ
宇宙で最高の強い力だから
___
(お母さん/原田美枝子)
人の悪口を言ったらダメよ
時々 思っちゃうのは
仕方ないけど
口に出して 言ってはダメ
口に出さなければ
そのうち 思うこともなくなるわ
人を指さしてはダメよ
人差し指でさしても
中指 薬指 小指が
自分を指してるでしょ
優しい人になってね
傷つけられても 優しい人に
好きって言葉は 魔法なの
言われた人を 幸せにする魔法
友だちにでも 誰にでも
悲しい人はね 好きって
言われたことない人だから
___
(お祖父ちゃん)
前に言ったね
幌の心の幹は 太いんだ
分かるかい?
お父さん 姿が見えない
お兄ちゃんは 悲しみに
心を閉ざしている
お姉ちゃんだって
いっぱい いっぱいだ
こういう時こそ
幌の出番じゃないか
_
(お祖父ちゃん)
一方で想像しなさい
お父さんの立場になって
想像しなさい
自分以外
人の気持ちになれるかどうか
想像力がなければ
人を思いやろうと思っても
その言葉は響かない
想像してごらん
もう長くないことを知りながら
夜ごと あの2階の部屋で
お母さんのそばにいた お父さんを
朝が来る度に 目覚める度に
まだそこに命があると ホッとして
しかし 確実にいなくなるんだと
また夜を迎えただろう
そんなお父さんを
お前たち 最低な父親だと思うのか?
恥ずかしい男だと・・・
___
(お祖父ちゃん)
人間だからだよ 幌
人は誰でも
愛されることを望むんだよ
それが一番幸せなことだと
分かっているからねえ
でもね そのためには
相手が必要なんだ
愛は 偶然の出会い
運命の出会いや色んな出会いの中で
育まれるんだよ
でも もしかしたら
そういう相手に出会えないかもしれない
そうすると 自分だけ ただ愛していても
無駄だと 思ってしまうかもしれない
だったら 恋することも愛することも
やめようって 考えるかもしれないねえ
誰も愛さない・・・
幌 それは人間でなくなることなんだよ
恐ろしい怪物になることなんだ
だから人は 人間でありたいと思う以上
愛することをやめてはいけない
たとえ 誰からも愛されなくてもね!
___
(ミラ/幌の同級生/大後寿々花)
“行動は秘策の敵”って
なんかの本に書いてあった
つまりね 体を動かすと
その間 あまり考えないし
疲れて眠っちゃうから
独りで考えたり
孤独と向き合ったりする時間がない
要するに 歩けない分
私は考えるから
お利口さんになるの
(幌)
でも・・・
結局は勇気がないんじゃない?
怖くて リハビリって言うの?
やらないんでしょ
_
(幌)
僕は人間でいたいんだよ
おじいちゃんが言ってた
好きになることは大事だって
好かれないからって 誰も好きにならない
そういう風になると
人間じゃなくなっちゃうって
怪物になっちゃう
___
(園子/原田美枝子)
あたしはさ そういう子
嫌いなんだよね
自分ばっかり 潔癖でさ
正義感強いフリしてさ
周り困らせて それに気づかないで
人のこと 鈍感呼ばわりしてるの
それで やっぱり 都合が悪くなると
泣いちゃうわけ?
悔しくてさ 自分のために流してる涙だよね?
自分が一番で 他の人間のこと
思いやれない人間にありがちのさ
_
(お祖父ちゃん)
幌は 世界中の人を
応援したいんだろ?
(幌)
うん
(お祖父ちゃん)
みんなに優しくしてあげたい?
(幌)
うん
(お祖父ちゃん)
そうなると これからもきっと
多くの人に傷つけられて
しまうかもしれないねえ
(幌)
・・・僕 平気だよ
だって僕の心の幹って
強いんでしょう?
(お祖父ちゃん)
ああ
_
(幌)
お母さんが言ってた
人を傷つけるのは
悲しい人だって
たぶん 誰にも好きって
言われたことがない人だって
だから僕ね そういう人にあったら
好きって 言ってあげるんだ
(お祖父ちゃん)
傷つけられてもかい?
(幌)
うん そうだよ
(お祖父ちゃん)
幌
幌がそんな大人になったら
素晴らしいことだねえ
ほんとに 世界が救えるかもしれないなあ
(略)
(お祖父ちゃん)
それはどうかな? 幌
そういう子は 優しくされることに
慣れてないだけかもしれない
慣れてないと どうしていいか分からなくて
思わず 逆な行動を
してしまうことがあるからねえ
勇気を出して もう一度だけ
チャレンジしてみたらどうだ?
_
(幌)
僕の名前は 幌
君を優しくかくまってあげる
雨や風や たとえば
嵐が来たとしても
_
(幌の声)
もう一度だけ 優しくしてみよう
それでダメなら 諦めます
ああ 僕はこれ以上
ミラに嫌われたくないんです
神様 勇気をください
___
(お祖父ちゃん)
本当の優しさというのは
責任感を伴うものです
言葉の慰めは
その場だけのことだ
だけど 本当の優しさは
そのあとも ずっと
見守る相手への
深くて強い気持ちが必要じゃないかと
(ドラマ『あいくるしい』2005)









