(一択/峯田和伸)
ヘレン・ケラーみたいですね

(花/麻生久美子)
そう言われんのが
一番腹立つんだけど!
この子はこの子だよ!
何とかみたいとかって言うな!


___

(風子/アパートの大家/宮本信子)
人は見かけで判断するの

ほとんどの生き物はね
見かけで判断するものなの


あんただって そうしてるでしょう
違う?
こいつは いい奴そうだとか
なんか怖そうとか
この子は可愛いから
良い子に違いないとか

そうでしょう?

_

(一択)
この世界にあるものにはさ
きっと全部に意味があるんだよ


俺もまだ よく分かんないけどさ
必要とされて 生み出された意味がさ
一緒にさ それ見つけようぜ!

なあ 一緒にさ


_

(一択)
ラヴ&ピース&ロック&スマイルだ!

___


(一択)
バカでも
お前みたいに腐ってねーわ

 

_

[語り/宮本信子]
考えるな 一択
考えると ろくなことはないんだから
惨めなままでいい
 

___

[語り]
よく お前は一体何を考えてるんだ
とバカに対して 怒る人がいますが
あれは やめたほうがいいですね
だって 何も考えてないんですから
怒る方が虚しくなります
でも 何が起こるか分からないのが
バカの面白いところ

誰かが言いました
本当のビッグサプライズは
バカにしか起こせない
そして ビッグサプライズを
人は “奇跡”と呼ぶんです

 

_

(福池/アパートの住人/浅香航大)
福祉って こういうことだと思うんです!
与えるだけじゃない 与えられるものの方が
大きんだ その歓びがあるから・・・

(佳代/アパートの住人/中村ゆりか)
いや 与えられてないで
与えろよ ほんと腹立つ!

(福池)
何がですか?
何か間違ってること言ってますか?

(佳代)
人と比べて 自分はまだマシだ
恵まれている だからもっと頑張らなくちゃ
とかそういうの 上から目線で
大嫌いなんだよね!

(福池)
そういうの すべて否定してしまうことも
上から目線なんじゃありませんか?

 

_

(花)
あんたに そんなこと言う資格ない
絶望したこともない奴に
正志をどうこう言う資格なんてない

分かんないでしょ?
このまま行ったら ひょっとして自分は
自分の子供を殺してしまうんじゃないかって
そう思っちゃう気持ち 分かんないでしょ?

正志は正志なりに
精一杯 頑張ったよ
でも 絶望したんだ 自分に
だから 逃げた

 

_

(一択)
絶望の先には
何があるんですか?


(花)
そんなの分かんない

(一択)
希望がなきゃ
いけねんじゃねえかなぁ

俺は そう思うなぁ

 

_

(一択)
希望は ありますよ

 

___

(福池)
一人ひとり
ケースは全部 違うわけで
何もかも 一緒くたにして
こうすればいいんだ
っていう福祉じゃ
ダメだと思うんです

 

_

(佳代)
な~んか ああいう奴って
ちょっと腹立つよね
世界をシンプルに捉えててさ
ムカつく!
で ムカついた自分が
汚い気がして 落ち込む

 

_

(風子)
いると うるさくて
うざくて イヤなんだけど
でも いないと
ちょっと 物足りない

 

(八袋/光石研)
なんでしょう
この感じ

(風子)
家族なんじゃない?

 

_

(一択)
やっぱ 分かって欲しいよー!
俺も 愛されてー!

いつか 海にも 花さんにもさ
愛されてーぞー!

愛されてーぞー!

 

___


(花)
天才なんかじゃないよ
この子は
普通の子だよ

なに? 障害のある子は
何か特別な才能がないといけないの?
なきゃダメなの?

 

_

(花)
愛してやるって言ってんだよ
あんたのこと
もう一回だけ 愛してみるよ
怖いけど・・・
もう一回だけ
愛してみるよ
 

___

 

(花)
無駄かもしれないっていう
つまんない現実より
いつか分かるかもっていう
夢の方が楽しいって
どっかのバカが言うもんだからさ

 

_

(一択)
負けねーぞー
勝てなくても
負けねーぞー

 

_

(風子)
人は そんなに
カッコ良くも 最低でもない
ほとんどの人が
その間を生きてる

 

(花)
分かるような
分かんないような

(風子)
ただ 一択の場合
ウジウジしてるだけなんじゃないの?
ウジウジしたり グチャグチャしないと
ダメらしいわよ ロック野郎は
その先に ロックはあるらしい

そうらしい


___

(一択)
真っ暗で
何も見えないと
怖いですね

波の音で
海があるのは分かるけど
海ちゃんには それも
ないんですよね・・・

でも あるんですよ
海は
ここにあるんだ

ずっと ある

 

_

(一択のばあちゃん)
どうやって
生きてったらいいか
そんなもんに
答えはねんだ
生きてくしかねんだ
人間は

あとは 上等に
生きるかどうかだ
分かっか?

 

_

 

(ばあちゃん)
なんだ その
ロックって?

(一択)
強い人
って意味だよ

 

_

 

(一択)
最近思うんですけど
ロックってのは
弱い者の心の叫び
みたいなとこが
あるじゃないですか

弱い人を
ちゃんと守るのも
それもロックなのかなぁと思ってね

 

_

 

(風子の声)
そう 私は準備をしています
準備はしているのだけど
その時が来るのを
待っているわけです
もうすぐ それはやってくる
一番素敵な瞬間を
見てからにしようとね
そういう 私の勘は
外れない

 

_

(一択)
海・・・ 分かったんだ
名前だって
みんなに名前があるんだって

 

ドアを開けたんですよ
海ちゃんは
ついに 開けたんですよ

 

_

[語り]
そこからの海ちゃんの変化は
凄まじいものがありました
恐らく彼女は 自分の周りには
人や 物や 色んなものがあって
それには 一つひとつ
名前があるのだということに
気づいたのでしょう
だから すべてを知りたがった
何もかも 知りたがった

 

海ちゃんの変化は
すごいものがありました
でもドアを開けて
ほんの入り口にいるのでしょう
そこには 名前があって
その先には 意味があることを
理解しなければならないのだから
でもそれは 遠い先の話ではありませんね
もう ドアの外に歩き出したのだから
彼女は

 

_

(風子)
よし 決めた!

あたし しばらく旅に出る
もう準備はできてるの

どこに行くかは決めてない
どのくらいかも決めてない
1年か 5年か 10年か

私ね この歳になってさ
なんか 分かったような気でいたんだよねぇ
この世界のこと
なんか すべて知ってしまったかのようなさぁ
偉そうな錯覚をしてました


でも 海ちゃん見てたらさ
なんか もっと知りたくなったんだよねぇ
色んなこと だから
ちょっくら 世界を見てくるよ

だって私は 風の子だからねぇ
外に出て行かないとね

 

_

(一択)
生きててよかったー!

これからも
生きていくぞー!

ラヴ&ピース&ロック&スマイルだー!

 

 

(ドラマ『奇跡の人』2016)