ヴァロットン展 (三菱一号館美術館) | Duet’s Weblog in Ameba

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冷たい炎の画家 ヴァロットン展
会場:三菱一号館美術館
会期:2014年6月14日から2014年9月23日まで
公式サイト:
http://mimt.jp/vallotton/

7/18(金)に鑑賞した。 音声ガイドを使用(ナビゲータ:恒松あゆみ、解説:高橋明也館長)、高橋館長はブロガーナイトでお話を聞いたことがあるので馴染み深い。 気合の入った解説でした。感動

フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)
スイス人。 大学卒業後にパリのアカデミー・ジュリアン(私立の美術学校)で学び職業画家になった。
美術史的にはナビ派(印象派→ポスト印象派→ナビ派→アールヌーボー→フォービズム(野獣派))に所属するが、ナビ派の中心的な画家ではない。

<展覧会のみどころ>
1.日本初の回顧展である。
2.胸騒ぎのする風景、不安な室内、クールなエロティシズムなど、観る者に様々な感情を抱かせる、現代的な作品が多い。
3.三菱一号館美術館が所蔵する187点のヴァロットンの作品からの選りすぐりであること。

そういえば、当美術館のオープン時にヴァロットンの版画コレクションが素晴らしいと聞いていた。 でも、ヴァロットンについて知らなかったからすっかり忘れていました。凹

<展覧会の構成>
第一章 線の純粋さと理想主義
初期の作品、立体感がほとんどない、フラットな表現が印象に残る。
第二章 平坦な空間表現
フラットな表現に装飾的な技法がプラスされて来た。
第三章 抑圧と嘘
この章に分類される作品が、もっともヴァロットン的だと思う。 人の心の「黒い」部分を描き出していながら芸術性があるという。
第四章 黒い染みが生む悲痛な激しさ
木版画。 黒が占める部分が多い。 テーマとしては第三章と同じ。
第五章 冷たいエロティシズム
悪意を含んではいないが、無表情で乾いた視線が印象的な作品が並んでいた。
第六章 マティエールの豊かさ
マティエール。 説明をきちんと読まなかったのですが、画の肌触り・質感という意味だと思います。 テーマとしては第五章と同じ。
第七章 神話と戦争
神話をテーマにした作品は、エロティシズムも神々しさも全くない。 下品であられもない表現をわざとやっているのがみどころ。
これが戦争だ!という木版画の連作。 第一次世界大戦ですね、当時はこの世の終わりに感じたにちがいない。

第一章から
<トルコ風呂(1907)>

展示室の先頭に架けられた作品。 初期の作品に分類されていますが、ヴァロットンは40代、完成度が高いと感じたのはそのせいか。
ぱっと見、日本画風でした。 



第二章から
<肘掛け椅子に座る裸婦(1897)>

椅子と絨毯が同化して見えて、え?と見直すと実は肘掛け椅子に裸婦が座っている。 裸婦が部屋の奥にいるような錯覚を起こしたり、距離感が面白いと思った。



<ボール(1899)>
デッサンを元にしているように見える作品だが、解説によりますと、緑の濃い左上部分と右下のボールを追いかける少女は、2枚の写真から作り上げた(創作)。 ボールと少女にまったく躍動感がなくて凍りついているように見えるのは、カメラで切り取った(瞬間)をそのまま移植したからだろうか。




第三章から
<アンティミテ(1897-1898)>
Intimite(アンティミテ)は「親密な、心地良い」というニュアンスだが、明らかに悪意を含んだアンティミテであります。
木版画に閉じ込めた悪意。 それにしても木版画の魅力に取りつかれそうです。



<貞節なシュザンヌ(1922)>
ダニエル書のスザンヌは、マグダラのマリアと共に裸体画のテーマに取り上げられることが多い。 まったくもって動機が不純である。 と思っていたら、ヴァロットンもそう感じていたのですね、ふふふ。




第五章から
<赤い絨毯に横たわる裸婦(1909)>

冷たいエロティシズム、だそうで。 そこまでは感じなかったけれど強さを感じた。



第六章から
<海からあがって(1924)>

偽肖像画と解説されていた。 だから不自然で、だから瞳の力が強すぎるのかもしれない。



第七章から
<グリュエリの森とムリソン渓谷(1917)>

ヴァロットンは社会派の画家だったので、後半生の彼にとっての重要なテーマは戦争だった。 第一次世界大戦では従軍画家として前線に行っている。
戦地を描いた作品は多く、その特徴は兵士の姿が描かれていないことだとか。
この画を、「西部戦線異状なし」を思い出しながら鑑賞しました。 私が最初に読んだ戦争小説だったので自分の中では特別感があるのです。



にんじん(ジュウル・ルナワル)>
挿絵がヴァロットンだったとは。。。