私は2023年7月5日(水)にきらめき病院で腹腔鏡下大腸ガン切除手術を受けました。
同年6月にS状結腸ガンが発見された時点でStage IVでした。
術後は3週間に1回の通院でXELOX療法で抗がん剤治療を続けていましたが、2024年7月撮影の造影剤CTで薬に耐性ができてしまったことが判明し、次の抗がん剤を担当医と模索中。
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『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』(関本剛 著)を読みました。
43歳でStage IVの肺ガンが発見された緩和ケア医の著書です。
「残り2年」は今の私の予後と同じなので、この先生はどんな考え方をしてどんな気持ちなのかなと興味がありました。
緩和ケア医としての体験や考えを記しているところは別として、概ね今の私と同じ境地に達していると感じました。
一番心に残っている箇所は、脱毛に関する記述。少し長くなりますが、引用します。
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緩和ケア医である私は、人間が誰しも持っている「最期はこうありたい」とう理想を、非常に価値あるものだと考えている。
「先生、私は美しく死にたいんです」
これは、死を前にしたある70代女性の言葉である。そして女性は、自らの言葉を見事に体現した。
この女性の「うつくしく」という言葉には、「見た目も美しく」という意味も含まれていた。
使用する薬の種類にもよるが、抗がん剤治療を続ければ、髪の毛は抜け、肌は荒れ、体重は落ちる。それは他者にネガティブな印象を与える可能性があるのだが、この女性にとっては「何があってもそういう姿で死にたくない」ということが、大きな願いだったのである。
私もその気持ちはよく分かる。
サイバーナイフ療法を行ったとき、ピンポイントではあるが、放射線を照射した部分の頭皮周辺で脱毛が起きることを知らされたとき、意外に大きなショックを受けたのである。
私はいままで頭髪が薄くなるということはなく、ありていに言えば「ハゲる」という悩みを抱えたことはまったくなかった。
それが一転、髪の毛が抜けてしまう可能性に直面したとき、「イヤや!」と感じてしまい、自分の意外な自意識に驚かされた。
そう若くもない男性の私がそう思うのだから、女性にとっては毛髪がなくなる、肌が荒れるという肉体的な変化は相当ショックになりうるだろう。
……
XELOX療法に耐性ができてしまい、次はイリノテカンという脱毛する抗がん剤を使いたいと担当医から言われて、どうするか悩み続けている私の琴線に触れました。
そう。どんな治療をしてももう助からないと言われている私は、ボロボロの姿になって死にたくないです。ボロボロになるまで治療してもしなくても助からないのだから、なるべく美しい姿で死にたいです。
予後2年だと、イリノテカンで脱毛したら新しい髪の毛が生えてくる前に死ぬでしょう。
「髪はまた生えてくるから」と励まされると、「雑な励ましはやめて」と言いたくなります。
ガンが完治する可能性が高い人なら通用する「髪はまた生えてくる」も、予後2年といわれている私には通用しません。悪気はないかもしれないけど、無思慮な励ましはこちらの心を傷つけます。
人生最後の2年間を髪の毛が無い悲しみに苛まれながら生きるのは辛過ぎる気がします。
懸念は外見の問題だけにとどまりません。
フルウィッグをあつらえてみたけど、装着するととっても不快です。頭をしめつけられている感じがするし、頭皮はすごく発汗するので相当蒸れるらしい。
そして、ちょっとコンビニに行くだけでもウィッグを付けないと外出できないなんて。
友人に会ってお茶するのも億劫になって、引きこもりになるかもしれません。そこからうつ病を発症したらどうしよう。
考え過ぎといわれるかもしれないけど、ガン患者の精神状態は一瞬にして暗転する可能性があることは既に体験済です。
一方で、ウィッグだからこそエンジョイできる金髪やピンクの髪で暮らしてみたら楽しくなれるかなとも思えるときもあります。案外気持ちが慣れるのかもしれないとも。
担当医は、イリノテカンを使わず、本当なら3次治療で使うロンサーフで代用すると、予後2年が1年半か1年に短縮されるかもしれないと言っています。
でも、「生きる」ってどういうことなのか深く考えると、あくまでも私の場合ですが、長く生きることより生活の質の方が優先ではないかと思います。
まだ、次に使う抗がん剤を決めることはできません。しばらく悩みそうです。
「美しくありたい」という気持ちは、人からどう思われるかということより、自分がどう感じて生きるかということだと思います。
著者の関本先生は、残念ながら45歳で天に召されました。
ご冥福をお祈り致します。