2023年7月5日(水)にきらめき病院で腹腔鏡下大腸ガン切除手術を受けました。

同年6月にS状結腸ガンが発見された時点でStage IVでした。

 

術後6日目。初診で診てくれた門松先生が夏休みから戻ってきているはずなので、今後の治療について相談したいと看護師を通して伝えました。

 

7月11日の夜、ベッドサイドに門松先生が来て「今、話せる?」と言われ、以前佐野先生から術前説明を受けた個室に連れていかれました。

 

私はStage IVでガンが発見されたとき、J大学病院の先生からもう根治できないと聞き、抗がん剤治療で辛い思いをしてもどうせ長くもたずに死んじゃうんだから。何も治療しないで死にたいと思っていました。

 

その後、セカンドオピニオンをもらいに行ったS病院の先生が、「患者さんの人生観もあるから、医者といえどもそこには踏み込めない。でも、個人的には一日も早く抗がん剤治療を始めた方がいいと思う」と言ってくれました。個人的な意見を言ってくれたことに、この先生の「人としての情」を感じてありがたかったけど、まだ、抗がん剤治療をしてみようかなとまで心は動きませんでした。S病院の手術の技術が私のニーズを満たせなかったので、この病院は選びませんでした。

 

でも、きらめき病院の初診で門松先生から人工肛門にしないで大腸の原発巣を切除できると言われて、天にも昇る気持ちになりました。そして、入院中、若いドクターたちに毎日明るく声をかけてもらって(ちやほやしてもらって)、私の気持ちが明るい方向に向かえた気がします。

 

一番の決め手は、初診の門松先生の優しい印象です。この先生となら抗がん剤治療やってみようかなという気持ちになれたんです。

 

今後の治療について、1時間ぐらい門松先生と話し合いました。

後になって、このタイミングで話し合ったのは正解だったとわかりました。外来でこの話し合いをすると、20分以内に強制終了させられたはずです。

 

門松先生の説明は次の通りです。

***

  • S状結腸ガン、多発肺転移、肝転移、リンパ節転移の診断でした。腸閉塞の恐れがあるため、S状結腸切除を行いました。
  • 切除不能の遠隔転移があります。予後改善のためには化学療法が必要です。無治療の場合は予後半年から1年と予想されます。化学療法を行った場合、現時点では平均3年半ほどです。
  • 化学療法を行うに当たって、エルプラットベースのものとイリノテカンベースのものがあります。
  • 特徴的な副作用としてエルプラットは末梢神経障害、イリノテカンは消化器症状と脱毛があります。両方同時に行うレジメンもありますが、副作用が強いのでララさんの希望には合わないでしょう。
  • 化学療法のレジメンおよび投与方法を決める際、大きく分けると3つの観点があります。

1.入院 or外来

2.点滴のみ or内服+点滴

3.ポートを入れるかどうか

 

  • ポートは右胸部に中心静脈ポートとカテーテルを挿入します。局所麻酔での手術が必要です。わずかですが、感染や破損のリスクがあります。ただし、入れることで治療方法の選択肢が増えるとういい面があります。
  • 入院で行う場合はPICCを毎回挿入します。
  • ポートなしで外来、エルプラットベースでご希望ですので、XELOXというレジメンに分子標的薬を加えます。これは遺伝子検査の結果に応じて決定します。
  • 場合によって肝不全や重症感染症など命に係わる副作用がありますが、頻度は少ないです。
  • 根治を目指すものではなく、ガンおよび抗がん剤とうまく付き合いながら、なるべく元気かつ長生きできることが理想です。基本的に治療に関しては無理してなんとかして行うというよりも、体調に合わせつつ長期的な視野で行っていくのがいいと思います。

 

2023年7月11日19時

説明医師:門松健輔

***

 

門松先生によると、今は抗がん剤の副作用を抑える薬が発達しているので、抗がん剤投与から2、3日は具合が悪いかもしれないけれど、ずっと具合が悪い人は少ないとのことでした。

 

門松先生:抗がん剤はエルプラットベースとイリノテカンベースがあるけど、どうする?イリノテカンは脱毛がどうしても避けられないから、女性は嫌でしょ。

 

ララ:うーん、そうですね。急にウィッグ準備するのは大変だから、やっぱりエルプラットにしようかな。

 

門松先生:(PCに外来予約画面を出しながら)いつからやる?あんまり間を開けない方がいいよ。

 

このときの門松先生の口調はこの上なく優しくて、特に「いつからやる?」はすごくすごく優しかったです。一生忘れられないぐらい。

 

ララ:門松先生、先生のお名前には「松」が付いていますね。私の名前には「藤」が付いています。いにしえより「松」と「藤」には深い縁があるんです。「藤」は蔦だから何かにつかまらないと立っていられません。そのとき何につかまるかと言うと「松の木」と決まっているんです。平安時代の貴族の庭には、必ず「松」と「藤」が並んで植えられていて、「藤」は「松」にからまってこそ美しい花を咲かせることができるんです。だから「藤」には「松」が必要なんです

 

あ、門松先生が突然デスクに突っ伏してプルプルしてる!

どうしたのかしら。笑いをこらえていたのか恥じらっていたのか、今もわかりません。

 

門松先生:(顔を上げて笑顔で)じゃあ、支えましょう。

 

門松先生から「支えましょう」と心強いお言葉を頂き、7月31日(月)から抗がん剤治療をスタートすることに決まりました。

 

この頃の私は、人工肛門にしないで生きていけるなら残りの人生の時間が短くても幸せ。髪の毛が抜けたら、いろいろなヘアスタイルのウィッグを作って楽しんじゃえばいい。金髪のウィッグも作っちゃおうかな、という軽やかな心でいました。