それは年末も押し迫った2022年12月某日。

2022年ノーベル文学賞受賞者アニー・エルノーの短編小説「事件」を映画化した「あのこと」を観に渋谷へ行ってきました。

やっぱり、産んだ子の責任は取らないとね。(意味深)

 

軽はずみな行為により望まない妊娠をした主人公。

しかし、1960年代のフランスは中絶が違法行為にあたるため医者が処置をしてくれない。

前途洋々たる自分の未来を守るため、追い詰められた主人公はある行動に出る。

そんな彼女の3か月間を描いた物語。

 

アニー・エルノーが称賛していただけあって、原作に忠実に作られていた。

多少の脚色はあるけれど、逸脱はしていない。

ただ、キャッチコピーの「あなたは<彼女>を、体験する」というほど観ていて共鳴はしなかった。

 

珍しく監督の映画の撮り方や登場人物の演技から意図するものが読み取れなかった作品。

大事件であるにも関わらず淡々としているので、日常の一場面を見ているような印象を受けるせいだろうか。

よくわからない。

 

正直、万人受けはしない映画だと思う。

なにせ、題材がアレだから。

それに、フランス映画なので、ヌードシーンがバンバン出てくる。

女性の肌の質感がリアルに撮られているせいか、濡れ場も、凄惨なシーンも生々しい。

何も知らないで観に来た人はトラウマになるような気がする。

 

平日の昼間に観に行ったので、観客は少ない。

それでも客層は不思議だった。

年配のおばさまたちはまだしも、もっさいオッサン(職業不明。文学愛好者のような知性の輝きはないから、底辺の映画ライターか?)、大学生と思われる青年(勉強に来た映画監督志望者だろうか)がいた。

 

さすがに「観るのやめといたら?」と忠告したくなったのは、高齢者夫婦。

映画が始まる直前、場内が暗くなってからノコノコやってきて、「まあ、暗くて席がわからないわ」とおばあちゃんが陽気な声で叫んでた。

どう考えても内容を検討もしないで観に来た能天気お嬢バアちゃんと、それに無理矢理つきあわされたおじい様という組み合わせだなー。

と思っていたら、案の定、映画が終わって明かりがついたら、お嬢バアちゃんはバツの悪さを誤魔化すかのようにヘラヘラしながら帰り支度をし、おじい様は憮然とした表情で固まって座ったままだった。

あの二人、気まずくなるから映画の感想とか言い合うことはないだろう、きっと。

 

帰り道、ラーメン屋「Renge no Gotoku (れんげのごとく)」でパーコー担々麺(おいしい)を食べながら思う。

 

どう考えても、生殖行為で割を食うのは女性なんだよね。

望む望まないにかかわらず、妊娠ってそういうものだから。

特に望まない妊娠だと、女の子はつらい思いや酷い体験をして心も体も傷めるのに、ただ男は逃げるだけ。

中絶法があるなら、逆に男性にも法律を科すのが平等ってもんじゃないだろうか。



 

「独身男子は全員パイプカット」

 



とか。

※再手術で生殖可能になる施術もあるのでそっちで。

 

などと、あれこれ物思いを馳せた「あのこと」体験でした。