以前より読みたいと思っていたハヤカワのSF小説
「君を愛したひとりの僕へ」
「僕の愛したすべての僕へ」
を読み終わった。
「並行世界」をテーマに、どちらも暦(こよみ)くんという男性が主人公で登場する。
ちなみに、「並行世界」とは、
私たちがいるこの世界は幾つもの層でできており、わりと簡単にその並行する層(世界)へ移動できる。
移動は並行世界の自分とお互いの意識が入れ換わるだけで、並行世界のもう一人の自分に出会うことはない。
ただ、そこは自分の知る場所ではない。
幾つもの層のうち近い世界なら友人のネイルの色が違うとか、朝自分が注文したスタバのコーヒーの種類が違ったとかの程度。
遠くなればなるほど、自分が違う職業についているとか、地球が滅んでいるとか激しく異なる世界になっていく。
なんなら、どこかの並行世界では、
ノーベル文学賞を受賞している私がいるヾ(ーー )ォィ
ちなみに、並行世界(パラレル・ワールド)は高校生の頃、パタリロで習ったので知っていた。
パタリロはつくづく有難いマンガだ。
少女マンガなのにミステリー、SF、スパイ、ホラーから落語までなんでもやってくれたから。
幸せな物語が好きな人はこちらから読むといい。
せつない物語が好きな人はこちらから読むといい。
「僕が~」は主人公がラノベ調の明るく軽い性格設定。
内容も基本がほんわかのほほん。
反対に、「君を~」は主人公が常に深刻そう。ひたすら孤独。
内容も切羽詰まった感じ。
並行世界なので登場人物が違う世界を同じ時間軸で生きている。
パラダイム・シフトによって世界がリンクし、小説同士ザッピングする細工もある。
幸せな物語がいいと思って「君を~」から読んだんだけど、
どっちの結末を読んでも、つらくなった。
脳天気なまでに幸せな人生を送れる世界がある反面、不幸に生きている自分も存在する。
つまり、たとえば、並行世界001で生きる自分は幸せでも、並行世界050は不満を抱えていて、並行世界300では地獄絵図。
作中では「不幸な自分の上に幸せな自分が成り立っているのなら全力で幸せを享受しなくてはならない」というようなくだりがでてくる。
だとしても、不幸な自分を知ってしまったらやりきれない。
すべての自分が幸せであってほしいなんて欲張りなんだろうか。
私は独りよがりをしてつらい気持ちにはなりましたが、
全体としてはパラレル・ワールドものとしては非常によくできている作品なのでオススメSFです(^0^)