思えば幼少期から、

「ネトネト」「ニチャニチャ」「ベトベト」「ジメジメ」「ジクジク」

と形容されるいかにもさわったら不快感を持ってじっとり貼りつきそうものは嫌いだった。

つまり、はるか以前より、天敵の好きなものは私が嫌いなものだったわけだ。

 

数ヶ月前、出勤途中の道路でペチャンコになった灰色の巨大な物体を見かけた。

急いでいたから一瞥しかできなかったけれど、形状からして最悪の天敵、あいつだったと思われる。

広範囲にわたって出没する数体のうち、近所に出没する方のヤツはこれで退治されたわけだ。

 

ああ、これで平安が訪れるのね。

どこの誰だかわからないけれど、轢いてくれた人、ありがとう。

めでたしめでたし。

 

なんて思っていた数日後、帰宅の途中で轢かれていたあいつと同じシルエットが闇にうごめいていたのを目撃した。

 

なぜだ。

あいつはもうこの世にいないのでは。

生き返ったとでも――?!

 

ハッ!!!!( ̄□ ̄;)

 

まさか、もう一体、いる……?!

 

私が見ては恐怖してきたのは一体ではなく、何分裂かしたうちの一体だったのか。

喜ぶには早すぎたか!

 

かくして、平和な時代は瞬く間に終わり、またもや暗黒時代が訪れた。

※ウチの近所周辺で。

 

やつの存在におびえながら外出する日々が続いた。

そんな矢先、今日、またあらたな敵を発見してしまったのだった。

それはいままで遭遇していなかった小型版。

最初、葉っぱかと思っていたら、モソモソ動き出したのでさっそく阿鼻叫喚。

 

しかもウチのマンションの前にいるし(怖)

 

キィー ヤー アー!

 

思いっきり走って後退して振り向けばまだいる。

しかも通路の真ん中に。

 

ええい、早く去れーーー!!!

 

誰も見ていないのをいいことに、ブンブン腕を振り回すおかしなジェスチャーで退散の指示を出す私。

それを遠くからでもわかるのか、私の動きに合わせたかのようにおとなしく従って移動する天敵。

 

私:早く行かんかー!(変なジェスチャー)

 

敵:(のそのそ前進)

 

私:早よ行けーい!(変なジェスチャー)

 

敵:(のそのそ前進)

 

私:ほれ、早くー!(変なジェスチャー大振り)

 

敵:(スピードアップ)

 

本当は仲がいいんじゃないのかと周りから誤解されるような気の合い方で私はヤツに道を譲ってもらい、

悲鳴を上げながら玄関までたどり着いた。

 

それにしても、葉っぱ一枚くらいの大きさのヤツは初めて見た。

新参者か?

 

ハッ!!!!( ̄□ ̄;)

 

――子孫ができたのか?!

 

想像すまいと恐れていた方向へ事態が展開してしまった。

一匹の毒蛇が千個の卵を産む例えはもはや避けられない。

暗黒時代はやがて冥界新時代へと突入するのであった。

ド━━Σ(ll゚艸゚(ll゚艸゚ll)゚艸゚ll)━━ン!!!