皆様、お久し振り。
ニカイドウ乱子です
あ、そこのあなた! 乱子のこと忘れてるでしょう!
確かに登場回数は少ないわよ、推理小説読んでる回数が少ないから。
※説明しよう。
世界最長ミステリー、二階堂黎人の「人狼城の恐怖」に出てきた探偵、二階堂蘭子に対抗して誕生したのがへっぽこ迷探偵ニカイドウ乱子。
推理小説を読むと登場してははずれっぷりを披露して大活躍。
決め台詞は明後日の方向を向いて指をさし、「犯人はあいつよ!」
「ちなみに、先生がコナン・ドイルを愛してやまないのは存じてますが、他にお勧めはなんですか」
乱「有栖川有栖の「女王国の城」。本全体が大きな仕掛けになっているのに気付いた人はいるのかしらね」
「はあ。さて、今回の刀城言耶シリーズですが、かなりのめりこまれていらっしゃいましたね」
乱「読むのに4日もかかっちゃったけどね。
いつも思うけど作者の三津田信三はよく勉強してるわね。書くより資料読みに時間を取られていると思うのよ。
今回のはいつもの言耶シリーズにある日本の怪奇民俗学じゃなくて、
昭和性風俗史を中心に描かれていたわね。新鮮だったわ。
遊女哀史と、廓というおどろおどろしい世界観にホラーテイストを加味させて、見事に恐ろしい作品に仕上げていたわ。
なにより、ストーリーテーラーとして一級品だと思う三津田信三の手腕には感服」
「4部構成でしたね。それぞれで語り手を変えて」
乱「一部は花魁と廓の日常を書いた導入編。
二部は戦中の昭和風俗史。ここでホラーにくわえて推理小説っぽい謎が散見される。
三部は戦後の風俗史と吉原遊郭通史。推理小説としての明確な謎が提示される。
四部は言耶による解決編。相変わらず検証しながら推理する手法だったわね」
「それで、今回もまちがえちゃったんですね」
乱「いまでも私の中ではあいつが犯人なんだけどね!」
「まだ言いますか!」
乱「私の論拠のほうが正しいはずよ!」
「先生に論拠なんて言葉は似合いません。
そもそも、ミスリードにひっかかっちゃったのに、
そのミスリードこそ正しいって主張するのもどうかと思いますよ」
乱「確かに、言耶が導き出した犯人のほうが意外性があるから読者としても満足よ。
でーもーさーあー、矛盾点は残っているわけでさー。
特に三部のラストシーンを読むと、あいつが犯人じゃないと辻褄が合わないわけでー」
「なに変顔になってるんです。
事件は解決しちゃったんですからね。
このままだと先生はクリスティの「アクロイド殺人事件」しか勝ってませんよ」
乱「どっかに面白い事件ないかなー」
ホラーとミステリーが好きな人にはこりゃたまらんらんの刀城言耶シリーズ。
「首無」「厭魅(まじもの)」とはちがった珠玉の一作だと思ったのでした。
面白かった!
幽女の如き怨むもの(講談社文庫)