「状況? なにが状況だ おれが状況を作るのだ!!」
一軍人からフランス皇帝にまで上り詰めたナポレオンは、そういいました。
状況に左右されるのではなく、自分が状況を作るのだと。
実際には、起こる出来事を完全にコントロールすることはできませんが、その出来事に対して自分がどうするかは決められます。上記の言葉の意図は、そこにあります。
これは非常に重要なことですが、その「自分がどうするかは決められる」という部分について、しっかりと説明されている本はほとんどありませんでした。
一番分かりやすいのはサミュエル・スマイルズの「自助論」ですが、これは根性論のように受け止められる要素もあり、現代人が惹きこまれて読むものではないように思います。
『世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう』
奥山真司著
この本は、地政学・戦略学者である奥山真司氏の初の自己啓発本です。
自分の人生戦略を考える上で、絶対に知っておく必要があることが書かれています。
冒頭に書いた「自分がどうするかを決める」ことの重要性についても、わかりやすく書かれています。
というわけで、簡単に内容をご紹介。
<第一章 なぜ日本人は戦略が苦手なのか>
▼多くの日本人が、戦略と戦術をごっちゃにして考えている。
本来は、戦略は「戦争にどう勝つか」、戦術は「戦闘にどう勝つか」ということ。
ビジネス戦略について書かれた本も、多くは戦略ではなく戦術について書かれている。
▼ルール作り変える欧米、ルールに従う日本。
戦略的思考が不足している日本は、ルールを自国の有利な方へコントロールしようという思考がほとんどない。そのため、高い技術力があっても、欧米が作ったルールの中に従うという選択肢しかなく、不利になる。
スポーツでも、どんなに高い技術力があっても、ルールを変えられたら勝てなくなる。
▼ビジョンやミッション、アイデンティティ、歴史観、宗教観などが薄い多くの日本人は、高いレベルから物事を考える戦略的思考も弱い。
▼スキルをいくら磨いても、ルールが変わったら、それに合わせて別のスキルを磨く必要がある。
いい商品を持っていても、流通の仕組みを握っているAmazonに従うしかない。
▼生き残るにはリアリズムが必要。
リアリズムとは、誰かが助けてくれるということを期待せず、自分が生き残るという視点から物事を考えること。いわば、自助の精神。
<第二章 戦略を考えるうえで大事な3つのイメージ>
▼3つのイメージとは、ファーストイメージ、セカンドイメージ、サードイメージのことで、それぞれどこに原因を置くかという違いがある。
▼サードイメージは、景気が悪い、不遇の時代など、「環境」に原因を求めるもの
▼セカンドイメージは、会社が悪い、学校が悪いなど、組織に原因を求めるもの。
一番多くの人がもつイメージ。
▼ファーストイメージは、「自分に起こる出来事は、すべて自分に原因がある」と考えること。
自分が変われば、自分の世界も変わっていくと考え、自助努力で向上するという気持ちを持つこと。
▼「状況? なにが状況だ。おれが状況を作るのだ!」と言ったナポレオンのように、
今の状況は自分が引き寄せたものという考えが、自分の世界を変えることにつながる。
▼一番大事なのはファーストイメージ。
自分が変わらずに世界を変えることはできない。
<第三章 戦略の本質を知れば、世界を変える「人生の戦略」が生まれる>
▼戦略とは、戦争に勝つやり方。
突き詰めれば、相手をコントロールするためのプラン。
▼戦略は科学的なものではなく、アート。
▼戦略はレベルが存在し、それは階層として見ることができる。
上から、世界観→政策→大戦略→軍事戦略→作戦→戦術→技術となる。
▼この階層は、上にいけばいくほど抽象的になる。抽象度が上がる。
▼性能や技術にこだわり続ければ敗北する。
第2次世界大戦のとき、日本のゼロ戦は機能性に優れ、強かった。
そして日本人には、正々堂々と飛行機同士で、個人のスキルを比べるような形で戦おうという考えがあった。
しかしアメリカは、「要はゼロ戦を落とせばいい」という考えから、ゼロ戦がいけない高度まで上がれる飛行機をつくってゼロ戦を落とすというやり方を選択した。
▼ビジョンはファーストイメージに帰結する。
自分はどうなりたいのか、自分はどうしたいのか、自分は何者かといった考えが、欧米人は日本人より強い。
<第四章 あなたの人生に「2つの戦略」を授けよう>
▼戦略には、順次戦略と累積戦略がある。
▼順次戦略はすごろくゲーム、累積戦略はしらみ潰しゲーム。
▼この2つのバランスを取ることが大切。
▼生き残るために必要な3原則は、
1、冷静であること
2、選択肢を多く持つこと
3、柔軟であること
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本当はまだまだ書きたいことがたくさんありますが、ここに書ききれるものじゃないので、ぜひ読んでみて下さい。
自己啓発系の本に慣れきった人でも、新鮮な内容です。
世界を変えたいなら一度”武器”を捨ててしまおう