今週は、レジデントいじめで悪名高い指導医Fの下で働いていたので、そのストレスがここ数日の投稿に反映されている可能性は否定できないと申し上げた上で、前回の話題、まだ続けます。

 

ユンギ飲酒運転事件3部作?最後の投稿です。

 

というのも、私が目にした海外掲示板では、ユンギがBTSを脱退すべきかということまで熱く議論されていて。日本でもそんな議論が起きてるのかしら。

 

結論から書くと、私は脱退すべきなんてことは全く考えていません。

 

メンバーはたぶん彼を許したいと思っているだろうから。それにユンギは、残念ながらというべきなのか、BTSスピリットの中核でもある。

 

また卑近な例で申し訳ないのですが、いつものごとく一見関係ない話を挟みます。

 

このたびFと初めて働くことになった私。Fは、いわゆるハンサムの部類だと思うのですが、スリザリン系というか、噂も手伝って、私は彼から笑顔を向けられるたびに、うへぇー怖い、何を考えてるんだか、と虫唾が走る思いでした。

 

チーム構成はいつもの感じで、指導医、先輩、私、学生3人だったのですが、Fの指導はどちらかといえば、私より先輩に対して風当たりが強く、私自身はヒヤヒヤしながらも粗相なく週をスタートさせました。火曜ごろには少しプライベートな雑談なんかも持ちかけられ、水曜あたりに先輩が疲弊してきて、私が患者リストの60%を持ち始めた後も風向きが変わる様子はありませんでした。

 

ところが。

 

金曜の夕方になって、チャットで10段落ほどの長いメッセージがFから届きました。お題はカルテの書き方について。最初は特定の患者さんのカルテに関する記述で、ここを変えてほしい、というような内容だったのですが、そのあとは一般的な指摘であり、そばにいた他のレジデントも、そのメッセージの長さに唖然。面白がって写真を撮る者までいました。「こんなの、あいつの好みの問題だし、らじこは問題なくやってるから気にする必要はないよ」と皆口々に慰めてくれたんですが、Fの指摘は非常に的を得た内容で。

 

しかも送信時刻までよく見ると、最初の段落から始まって、Fは20分ほどかけてそのメッセージを書いてくれていたのです。最後には「まぁこんなとこだけど、この1週間の君のパフォーマンスは悪くなかった」と一言添えられていました。

 

お世辞か、はたまた嫌味かもしれないけれど、最近の私は額面通り褒め言葉を受け取ることにしているので、メッセージの全てを真摯に受け止めました。

 

しかし周りは自信たっぷりのプライド高きアメリカ人レジデントたち。1日の終わりに、患者さんの治療方針について何か言われるならまだしも、カルテの書き方についてのしつこい指導を、しかも直接口頭でではなく、メッセージでネチネチされることに関して、いろーんな意見がありました。

 

適切な指導だったかどうか、永遠議論が飛び交う中、夜勤担当のJが部屋に入ってきたのです。彼はプログラム随一のイケメン。日勤隊が帰り部屋が少し空いたタイミングで、ひとこと「俺はまだFにいじめられたことないんだよね」と。

 

私の先輩は「それは君がイケメンだからだよ」と言った後に、不適切な発言だったと軽く謝りました。

 

イケメン扱いに慣れきっているJは「そんなこと気にしないでくださいよ」と白い歯を光らせて「イケメンなのは自覚してますから」

 

らじこ「え?でもイケメンだったらいじめられないってことは、、、Fは、あ、いやなんでもないです」

 

先輩「言いたいことは言いなよ」

 

ら「いや、不適切な発言だと思うので」

 

先輩「ゲイかって聞きたかったんでしょ、そうだよ、Fのパートナーは男だよ」

 

ら「あ、、、そうなんですか」

 

先輩「こないだ研修医が看護師の名前を忘れちゃって『あのブロンドの綺麗な看護師』って言ったら、まぁそれ自体も不適切な表現ではあるけど、Fが、そんなんじゃわかんねぇよ、俺男にしか興味ないからって言ってたし、彼は別に隠してないから。W先生は特にオープンにはしてないけど」

 

ら(頭が混乱。**W先生は先週の指導医です。)

 

先輩「まぁ私も男には興味ないけど、そんなこといちいち日常生活で嫌味ったらしく言う必要もないしね。じゃまた明日」

 

*Jとらじこ、しばらく病棟業務に追われてから、部屋に戻ります*

 

ら「Fがゲイだって知ってた?」

 

J「いや」

 

ら「先輩自身もLGBTだって言ってたね」

 

J「あぁね、あれは唐突だったから俺もびっくりしたわ。W先生は、ぽいけど」

 

ら「FとW先生がパートナー同士ってこと?」

 

J「俺もそこちょっと混乱したんだけど、流石にそういう意味ではなかったんじゃない?」

 

ら(独り言)「でも聞き間違えじゃなかったんだ。やっぱりアメリカってすげぇーな」

 

J「え?」

 

ら「あ、いや、なんかざっくばらんでいいなと思って」

 

J「あー、LGBTとか日本ではまだタブーなの?それは辛いね。アメリカはもうそういう時代は終わったよ。俺には正直、関係ない話だけど」

 

ら(今度こそ心の中で独り言。アメリカってやっぱすげーな)

 

この最後のJの発言。俺には正直、関係ない話だけど。強烈だなと思いました。

 

いろんな綺麗事を言っても、ストレートな白人アメリカ人男性の医者といえばアメリカ社会のピラミッドの頂上に位置するわけで。そういう人間がLGBTについて「俺には関係ない話だ」と言及しても「配慮の欠如」だとか「差別発言」として捉えられる心配のない時代にアメリカは達しているということなのか。

 

この会話からは伝わりにくいですが、Jは実は結構いい奴で。アイフォンの待ち受け画面はグクテテ的な親友との上裸ツーショットで、これについてはことあるごとに冷やかされています。面白いし、マイノリティを差別するような人ではないというのが私の彼に対する印象です。

 

ただアメリカって結局、実力で差別をねじ伏せられる社会なんですよね。

 

要するに、誰かがマイノリティに対する差別意識を有しているかなんて、表からは到底わからないわけで。下手したらみんな隠れトランプかもしれない。でも、差別意識はあっても、実力があればそれを認めるのが、一般的なアメリカ人だと私は思います。

 

この印象は幼少期に私が抱いたものと合致していて。

 

イエローアジアンとして差別されたくなければ、勉強なり特技なり、強みを一つでも二つでも持つといい、ということを私は10歳にも満たないうちに身をもって実感したわけですが、今でもそう思っていて。

 

私がイエローであること、あるいはFがゲイであることは、私たちのアイデンティティの一部であることは間違いなく、それをもってして我々に差別意識を抱く人はいるんだろうけれど、それと、我々が優秀な医者であるかは、全く関係ないということです。

 

Fに至っては、LGBTであることより、レジデントいじめの方が目立つアイデンティティなわけで笑

 

優秀な医者でありさえすれば、イエローだろうがゲイだろうが関係ない。それがアメリカ社会だというのが今の私が感じているアメリカです。

 

なぜこんな話をするかといえば、私はユンギに対して今後、ある種の差別意識を持ち続けてしまうだろうと思うからです。それは徐々に薄れていく感情だろうけれど、きっとゼロにはならない。

 

泥酔運転をしたことは変えられない事実だし、それをめぐる「嘘」も変わらない。(前回申し上げた通り何を嘘と呼ぶかは人によって違うと思います)

 

でも、それと、彼の、例えば音楽家としての実力は分けて考えたいと思うわけです。

 

BTSの性質上、メンバーのキャラクターやメンバーどうしの関係性を魅力としてアピールしてきた今までのアプローチを考えると、それがどこまで可能なのかはわかりません。

 

でも、ユンギが今までメンバーに向けてきた優しさもまた変わらない彼の真の姿の一部であり、当事者として精神疾患に苦しむ人に寄り添おうとした勇気も、飲酒運転とは関係のない、彼が持つ一面であることは紛れもない事実なわけで。

 

BTSメンバーがこの件についてどう思っているかは私は知る由もないけれど、私がメンバーだったら、彼の罪は罪として、でも彼のそれ以外の部分を切り離して考えないと前に進めないだろうとも思う。

 

ある意味で、ユンギはBTSを白紙に戻したのかもしれない。

 

彼らが、また社会に認められる日が来るとすれば、それは今度こそ、彼らの実力が差別をねじ伏せるときだから。

 

その段に至るまで、彼らが頑張れるのか、あるいはメンバー同士の馴れ合いで終わるのか、ファンを含む傷の舐め合いを笑われるだけの存在にBTSが成り下がってしまうのか。

 

私のような不機嫌な猫をしっかり丸め込めるような強さと信念とプライドを今だからこそ、ユンギにはもってほしい。

 

もはや形骸化してしまったように見えるラブマイセルフなんていう歌詞は思い切って忘れて、ゼロから真新しい音楽を届けてほしい。

 

改めてファンになるかどうかはそのタイミングでまた考えます。

 

それまでゆっくり、ここで日記という名の手紙を書き続けながら。

 

 

Blackbird - Beatles

 

Blackbird singing in the dead of night Take these broken wings and learn to fly All your life You were only waiting for this moment to arise

ブラックバードが真夜中に鳴いている

折れた羽根をバタつかせながら飛ぼうとしている

生まれてからずっと

君はこの時が来ることをずっと待っていたんだね

 

Blackbird singing in the dead of night Take these sunken eyes and learn to see All your life  You were only waiting for this moment to be free

ブラックバードが真夜中に鳴いている

落ち窪んだ目で真実を見ようとしている

生まれてからずっと

自由になるこの時をずっと待っていたんだね

 

Blackbird fly Blackbird fly Into the light of a dark, black night

ブラックバードが飛び立とうとしている

ブラックバードよ 飛ぶのだ

漆黒の闇の中に一筋の光を求めて

 

 

黒人女性の人権擁護や解放について歌われているこの楽曲を書いたマッカートニーは、1980年1月にWingsツアーのために来日した際、マリファナ所持の罪で9日間拘置所で過ごしています。この時彼は「マリファナの所持使用が日本で違法だとは知らなかった」と主張しましたが、ツアーはキャンセル、日本中のファンを失望させたことをリアルタイムでご存知の方もいらっしゃることでしょう。でも私はこの楽曲を聴くとき、マッカートニーのマリファナ所持のことなど一切考えません。

 

私が今ユンギに言いたいのは、そういうことです。

 

 

PS 「手紙」という映画をご存知ですか?原作より映画の方が良かったと私が感じた数少ない作品の一つなんですが、服役中の兄の弟(主人公)が、差別に苦しむ姿を見て上司が声をかける時のセリフです。記憶を頼りに書くのでニュアンスだけですが

 

「君はこれからも差別を受けるだろう。君の家族もその差別に巻き込まれるに違いない。それを君は不公平だと思うかもしれないけれど、社会はそうは思わない。君は今後も苦しむ。でも中には君を認めてくれる人もいる。君はそういう人たちを大切にして、自分の居場所を築いていくしかないんだ。無理だと思うかもしれないけれど、無理じゃない。現に私は今、君のことを高く評価している。君はもうスタートを切っている。今まで頑張ってきたことを続けるだけだ」

 

ユンギはどちらかといえば映画の兄の立場ですが、人はどんな時もどんな場所からでもやり直せると私は信じています。

 

映画のラストは素晴らしいものながらとても悲しいので、BTSが描くストーリーは違うものになることを願っています。

 

 

最後までお付き合いくださってありがとうございました♡