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すっかり秋らしくなって肌寒くなってきましたが、皆さん休日はいかがお過ごしでしょうか。

 

今日は少しゆっくりできるので、DNAについて書こうと思います。学生時代に一応授業で遺伝学をかじっているだけに完全に門外漢とは言いきれない立場で書くのは少し勇気がいる投稿なのですが、ふーんこんなハナシもあるんだ程度に思っていただければと思います。間違いはご教示いただければ幸いです。

 

DNAに埋め込んだマルウェアがコンピュータを攻撃--米で実験に成功 - CNET Japan

 

まずそもそもDNAとはデオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleicAcid)という物質のことで、デオキシリボースとリン酸と塩基という部品からできています。塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類があって、ざっくり言うとこの配列が遺伝情報になっています。2重らせんのそれぞれは同じ情報を担っており、紫外線などで一本が壊れても、もう一本が遺伝情報を維持してくれます。また、塩基のすべてが遺伝情報になっているわけではなく、「ゲノム」と呼ばれる塩基のつながり全体の中に「遺伝子」と呼ばれる配列がちりばめられており、この遺伝子が最終的に目の色などの「形質」を決めるのです。ちなみに、チンパンジーとヒトが98.5%以上の「DNA」を共有している、というのは「ゲノム全体のすべての塩基」を見て98.5%が同じであるということを言っており、一方、親子が50%の「DNA」を共有している、というのは「遺伝子」が50%同じであるということを言っているのだと思います(我々は遺伝子を母と父から半分ずつ受け取っており、たとえば、耳垢の乾・湿をつかさどる遺伝子は母から1つ(たとえば乾)、父から1つ(たとえば湿)を受け取っているわけですが、この2つの遺伝子、塩基配列としてはほとんど同じでありながら、ごくわずかな違いにより遺伝子としては異なるものとして扱われるわけです)。私の理解をかいつまんでざっくりお伝えするとこんな感じになるのですが、何はともあれ。。。

 

防弾少年団(BTS)』DNA和訳・日本語の意味は?イケメン過ぎる動画を公開!

 

実はまだBTSのことをあまり知らなかったときに偶然この曲のMVを見て、このグループはずいぶんLGBTQに思い入れがあるんだな思っていました。今見ても、レインボーカラーの衣装といい、背景色といい、歌詞の内容と言い、明らかなメッセージはやはり「ゲイもバイもレズもヘテロもトランスも個人の選択ではなく遺伝子の作用で決まる運命である」(よって批判の対象にするべきではない)ということなのだと思います。

 

一目で君だとわかった

お互い呼び合っていたかのように
僕の血管の中のDNAが教えてくれた

僕がずっと探していたのは君だって

 

僕らの出会いはまるで数式みたい

宗教の律法 宇宙の摂理

僕に与えられた運命の証

君は僕の夢の源

この手をとって

君に伸ばす僕の手は決まっていた運命だから

 

しかし「ゲイ遺伝子」などというものがあるとしたら、ゲイがゲイである限りその遺伝子は次世代に引き継がれないので、「ゲイ遺伝子」はとっくのとうに淘汰されているはずなのです。それなのになぜ同性愛はこんなにも普及(?)しているのか。同性との性行為経験のある45万人以上の人の遺伝子と、そういった経験がない35万人以上の人の遺伝子を比較した研究から、同性との性行為経験のある人は、ゲノム全体にちりばめられたいくつかの遺伝子バリエーションを共有していることが分かっています。決して「ゲイ遺伝子」たるものが存在するわけではないのですが、いくつかの遺伝子バリエーションが集まると同性愛の傾向を生み出すようなのです。

 

そしてこれらの遺伝子が今も生き残っているということは、それらがヒトの生存を助け、あるいは生殖につながる遺伝子だということなのですが、興味深いことに、同性との性行為経験がない人の中でも性行為の相手が多い人や、リスクを厭わずオープンな性格と自らを評価する人は、同性との性行為経験がある人とより多くの遺伝子を共有しており、また、同性との性行為経験がない人の中でも、同性愛につながる遺伝子を持つ人は外見が魅力的であると評価される傾向にあったのです。Genetic patterns offer clues to evolution of homosexuality (nature.com)

 

この研究は一流科学雑誌で取り上げられながらも限界や問題点がいろいろと指摘されていますが、同性愛行動を示すのはヒトだけではありません。このことは、同性愛が「自然の摂理に反する罪」であるとの主張を退ける事実として、米国最高裁でも精神科学会が引用しており、ソドミー法を覆す主張にも利用されたようです。

 

ペンギンのゲイカップル 2度目の子育てを終える|FunLifeHack

 

アリストテレスの時代から記載がある動物の同性愛行動、その目的は上下関係を決めるための行動とも、絆を深めるための行動ともいわれており、たとえばペンギンに関してはすでに1911年に報告がありましたが、その内容があまりにもショッキングであるとの理由で専門家の間でのみシェアされた研究内容はギリシャ語に訳されたままお蔵入りとなり、2012年まで出版に至りませんでした。しかし、オスのペンギンのつがいが放置された卵を孵化し子を育てる例は世界中の動物園で繰り返し観察されてきましたし、場合によってはそばにメスがいてもオス同士の絆が強すぎて繁殖行動につながらないようなケースもありました。Homosexual behavior in animals - Wikipedia

 

この愛がほしい ホンモノの愛が

僕の視線の先は君だけ

君は僕をさらに強く引き寄せる
太初のDNAが君を望んでいるから

これは必然なんだ これは愛なんだ

僕たちだけがホンモノの愛なんだ
彼女を見るたびにびっくりする

不思議だけど何度も息が止まって なんだか変だけどもしかすると

これがいわゆる愛ってやつなのかな

はじめから僕の心は君に向かっているから

 

とはいうもののやはり思い出されるのはリチャード・ドーキンスが40年以上前に唱えた、「遺伝子は利己的である」という主張です。要するに、我々の一見、利他的に見える行動は、本当は自らを守ろうとする遺伝子に促されたものであるというのです。自分が損害を被っても、同じ遺伝子Xを持つ他の個体を助ける方が遺伝子Xにとって利益が大きければ、我々は遺伝子Xの仕業で自らを犠牲にする運命にあるのです。そうして遺伝子Xは淘汰を勝ち抜いていくというわけですね。我々生命は結局のところ、遺伝子が時を超えて生き残るために利用する「一時的な入れ物」にすぎないということです。

 

ここまで何となく考えてふと思い出したのが、グクとテテの外見が似ているという点です。個人的にはこの2人の区別がつくまでにしばらく時間を要したように記憶しているのですが、もしかして彼らはフツウの赤の他人同士より多くの遺伝子を共有しているのではないかと思ったのです。とすると、彼らの遺伝子たちが「利己的に」働いた結果2人は惹かれあったということになりますが、世の中には研究が溢れかえっているもので、どうやら友人同士は赤の他人同士より多くの遺伝子を共有することが知られているようです。DNA mates: how genetic factors may play a subtle part in our friendships | Genetics | The Guardian

 

外見が似たもの同士が友人になるという傾向はプラトンの時代から言われてきたことのようですが、友人同士は、同じ曾々々祖父を有する人間同士と同程度に遺伝子を共有しているというのです(特に嗅覚をつかさどる遺伝子を共有することが多いみたいです)。我々は曾々々祖父が誰かも知らないことが多いと思いますが、家系図に頼らずとも、より多くの遺伝子を共有している人と本能的に惹かれ合うということですね。

 

一方で興味深いことに、免疫システムに関しては大きく異なる相手を友人として選ぶ傾向にあるようです。ざっくり言えば、遺伝子Xは、異なる免疫システムを有する個体に乗り込み、お互いを引き合わせて助け合いの関係を築かせることで、ある感染症で一方が倒れても、他方の中で生き残れるようバディー体制を構築するということなのでしょう。ではどうやって遺伝子X同士は出会うのか。たとえば遺伝子Xがコーヒーの香りを好む遺伝子であれば、遺伝子Xを持つ人間はコーヒーショップに集まって友人になる機会を得るかもしれません。あるいは同じ音楽的感性をつかさどる遺伝子を持った者同士が音楽を通じて出会うこともあるでしょう。いずれにしても研究者は次のように述べています。

 

"Social networks are an important engine for human evolution," Fowler said. "Our friends are sort of like family members. They're functional kin."

「社会的なネットワークというのはヒトの進化にとって非常に重要なエンジンの役割を果たしている」「友人というのは家族のようなものなのだ。機能的な血縁とでも呼べばいいかもしれない」

 

BTS #DNA #Kookie #V #Jungkook #Taehyung | Dna, Taekook, Jungkook v

 

心配しないで
これは偶然なんかじゃないから

僕らは別格なんだ

運命を見つけた2人だから

 

宇宙が生まれたあの日からずっと

無限の世紀を超えてずっと

僕たちは前世でも きっと来世でも

永遠に一緒だから

 

これは偶然なんかじゃない

運命を見つけた2人だから

 

何千年何万年も前に一つの生命体の中に誕生した遺伝子Xは何度も入れ物を乗り換えてようやくテテとグクにたどり着き、そして遺伝子Xの「利己的な」作用で2人は惹かれ合い、助け合う運命になったということなのでしょうか。今後、彼らがどういう形でこの遺伝子Xを引き継いだとしても、あるいは引き継がなかったとしても、別の時代の別の世界で別の入れ物に入った遺伝子X同士は、何度だってめぐり逢い、惹かれ合い、運命を共にするのでしょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!