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前回までの投稿は何となくBTSが世界を変えてくれるような話が多かったと思うのですが、今日はもう少し地に足がついたような話をしたいと思います。

 

というのは、実はこの前のNY訪問、個人的に「さすがだな」と感じたのは、彼らのウェルカムジェネレーションスピーチではなく、PTDパフォーマンス中にメンバーが7つの扉から飛び出してきた瞬間でもなく、ナムジュンが立派にインタビューに答えた様子でもなく、はたまたジミンの愛すべき「ちぇそんはむにだ」でもなく、テテの空港でのモデル顔負けの着こなしでもなく、私がはっとさせられたのは、実は、舞台裏を語ってくれたVライブ中の、グクの湯気が立ちそうな五本指靴下アート、ではなく、少し疲れた様子のユンギの発言でした。一言一句は覚えていないけれど、自分たちは単なる「スピーカー」だから視聴率を稼ぐために来ただけであって、別に「色眼鏡をかけて」深いメッセージとか考えてくれなくてオッケーです、というようなことを言っていて、さすがだなと思ったのです。「持続可能な・・・なんだっけ、SDG?」とナムジュンに確認する様子に貫録さえ感じました。

 

前回、前々回触れた、英語覇権の終焉が見えてきたハナシも、KPOPだのメインストリームPOPだのとこだわるハナシも、正直なところ、彼ら自身はもうどうでもいいことだと思っているのではないかと感じていました。世界に認められ始めた頃は、その世界を変えたいと思っていたかもしれない彼らも、BTS自体が独自のジャンルのような地位を確立した今、きっと彼らは今まで以上に地道に、身の丈に合った活動をしたいと思っていて、その一環として政治的に利用されるのであれば、喜んで利用されよう、ということをユンギは言っているのだと思ったのです。メッセージの中身自体は俺らの管轄じゃないと言わんばかりの開き直り。

 

AgustDの数年前の曲を最近になって初めて聞いてみた私としては、虚勢を張るようなそれらの歌詞と、NY Vライブでの彼の発言との間に存在したであろうものすごい成長の過程を見たような心境になりました。その時になぜか脳裏をかすめたのはFIREの最後に彼が放つ「許してやるよ」というフレーズでした。彼はあの時、誰を、何を許したのだろう、と改めて考えてみたくなったのです。

 

BTS Suga saying "불타오르네" in Fire MV - YouTube

 

そこで自ずと最初に考えたのは「燃えてんなあ」というイントロのフレーズ。ユンギがフェンスを飛び越え、握手を交わす黒ずくめの男は、その握手の瞬間に燃え上がりますが、その光景を面白がるように見つめながらユンギは「燃えてんなあ」とつぶやくように言います。いろいろ調べてみた結果、死者を灰にして復活させるエジプト(?)の儀式をもじったMVであるという説に惹かれたのですが、今日は何の引用もせず、あくまで個人的な見解をとうとうと述べるだけの投稿にしようと思います。個人的に、この黒ずくめの男は、(エジプト説以外で言われているところの)ARMYでも、アンチでもなく、ユンギ(BTS)自身なのではないかと思っています。

 

朝、部屋で起きたとき俺には何もない

日が暮れたらふらふらと街を歩く

ぐだぐだに酔っぱらってな

道行く人に暴言を吐いてみたり

いっちまってるよな 俺は狂ってる

何もかもぼろぼろで くそみたいな生き方

 

MV全体を通して、黒ずくめの男だけではなく、自転車、車、飛行機、ステージ、フェンスと次々に火がつき、しまいには建物そのものが爆発しますが、これは情熱的な、あるいは外に向かう怒りに満ちたFIREというより、若者独特の「焦燥感」を表しているのではないかと思うのです。手に触れるもの、目が触れるものすべてに火をつけてしまうようなエネルギーを持て余して、それでもなお酔っぱらうぐらいのことしかできない自分に対する焦り、胸が焦げるような自己嫌悪。それをもう一人の自分が遠くから他人事のように眺めている様子が描かれているのではないでしょうか。

 

BANGTANARIOS 4 - BTS FIRE (#SQUADGOALS) - Wattpad

 

(Eh, eh-oh, eh-oh) 全て燃やし尽くして bow wow wow
(Eh, eh-oh, eh-oh) 灰にしちまえ bow wow wow

 

そう思ってイントロを見ると、「燃えてんなあ」というのは、自分自身に対して、「お前、だいぶ焦ってんなあ」と呆れながら独り言を言っている状態に思えるのです。実際、MVの中盤で燃え盛るガスコンロの前で大騒ぎする7人の様子が登場します。これは序盤でジンがアイロンをかけられるシーンの延長のようなシーンですが、本来であれば何かを焼いたり煮たり、調理に有効利用できるはずの火が、空しくただ燃えている、その様子があたかも、有り余るエネルギーが空回りして何も為せていない青春を象徴しているように感じます。

 

だから前サビの

「お前の人生なんだから好きに生きろ。頑張らなくてもいい。負けてもいいんだ」

という歌詞につながるような気がするのです。自暴自棄になったっていい、その焦りで全部燃やし尽くして一から始めたっていい、YOUTHは夢があるべき、こうあるべきだなんていう既存概念は燃やして、自分が好きなように生きればいい、というわけです。ジンのブリッジ部分の歌詞もこの流れだと自然に理解できますね。

 

(Fire) 臆病な奴ら 集まれ
(Fire) つらい思いをしてる奴ら 集まれ
(Fire) 拳を挙げて 夜を明かそう
(Fire) 行進するような足取りで
(Fire) 飛んで思いっきり荒れ狂え

 

BTS - Fire {slowed + reverb} - YouTube

 

そうすると、最後の「許してやるよ」というのは、

夢がないお前も

頑張れないお前も

焦って空回りしてるだけのお前も

怖くて何もできないお前も

全部許してやるよ

という意味なのではないでしょうか。

 

そしてこれは歯がゆい青春を生きる若者だけでなく、精神的に追い込まれているすべての人にやさしく手を差し伸べる歌に違いないと感じたのは、ユンギが繰り返しインタビューなどで自分の精神疾患の既往について触れているからです。「The Last」という曲の中で彼は赤裸々に語っています。

 

アイドルとしての顔の裏にいるのは弱い自分 少し危険な

うつ病と強迫性障害 たまに戻って来るんだよ

てかそっちが本当の俺か くそ、現実味もねえな

理想との衝突で頭痛がするんだ

18歳で社会不安障害を発症 そう、俺の精神が徐々に汚れてったのはそのころだ

 

自分でも自分が怖いんだよ

俺を支配するうつ病のおかげで 自己嫌悪と

ミン・ユンギはとっくに死んだ 俺が殺したんだ

死んだような自分の情熱を他人と比較して

もうそれが日課になっちまった

はじめて精神科病棟を訪れたとき

両親が一緒に来た 一緒に話を聞いて

両親は俺のことが理解できないって言った

俺だって理解できない じゃあ誰がわかるんだ

友人?お前?誰も俺のことなんかよく知らない

 

医者が自殺しようとしたことあるかって

躊躇せずあるって答えたよ

 

もう口癖に癖になってる I don’t give a shit I don’t give a fuck

弱い自分を隠すための言葉
消したくなるようなあの日々 そう、あのパフォーマンスの日

自分と向き合ったあの日 トイレにこもったあの時

人に見られるのが怖くて

あの頃はな 成功すればすべて解決するって思ってた

でも見ろよ 時が経つにつれて俺は怪物になっていくみたいだ

青春と引き換えに成功を手にして 怪物はそれでも「もっと」と訴える

首輪をつけられたみたいに 欲が俺を台無しにして飲み込んでいく

奴らは俺の口をふさいで この禁断の果実を飲み込めって

俺がいらないって言えば 庭から出て行けって

くそだな、わかったからやめろって 自業自得だってわかってるから

俺の不幸がお前の幸せなら 喜んで不幸でいてやるよ

俺が嫌悪の対象なら ギロチンにかけられてやる

想像しかできなかったものが現実になって 幼少期の夢が目の前に

2人の観客を前にパフォーマンスしたあの夜 今や東京ドームが目と鼻の先

俺の一度きりの人生 誰よりも情熱的に生きてやる

My fan my hommie my fam

もう心配するなって 俺はもう大丈夫だから

俺は自分のことを何度も否定してきた

アイドルなんて呼ばれて それももう否定しねえ

俺の頭を何度もえぐってきた苦悩 彷徨ったって終わりはない

捨てたと思ってたプライドは いつしか誇りに変わった

俺のファンなら堂々と顔上げてろよ

俺以上にやれる奴はいねえからな
 

SEIKOからROLEX、AXホールから体操競技場へ

俺の身振り一つで何千人もが首を振る

あの番組だってな

俺は出れなかったんじゃなくて出なかったんだよ くそが

 

自分たちを売り物にしてるって

できなかったって ちげえよ 俺はやらなかったんだ

俺の創作の根源はすべてを味わった 酸いも甘いもこの世のくそも

トイレで眠ろうとしたあの日々 今となっては記憶の中

肩を粉々にして バイト途中のアクシデントのおかげで

藁にもすがる思いでデビューをつかんだ

お前な 誰の前で苦労した振りしてると思ってんだよ

 

SEIKOからROLEX、AXホールから体操競技場へ

俺の身振り一つで何千人もが首を振る

悲しみが作りだした俺 おい しっかり見ろよ おい

自分を売り物にしてるって言ってろよ

できなかったんじゃない

俺はやりたくないことをやらなかったんだよ くそどもが

 

ということで、英訳を和訳するのも正直、胸が詰まるようなリリックですが、彼の魂の叫びを中略するのも失礼だと思ったので全部訳しました。。。

 

12~FIRE編~防弾少年団 BTS 解読解説 | BTS(防弾少年団)解読解説はじめました

 

そしてこれを読んで改めて考えると、虚勢を張って、自己嫌悪の炎をまとっている自分自身を、ユンギはずっと許したかったのではないかと思うのです。でも自分を許す作業というのは少し筋トレに似ていて、ある程度意識的にやらないと習慣にならないというか、だからこそ、繰り返し繰り返し、言い聞かせるように時間をかけて、ユンギは自分を許してきたのだと思います。それでも許せない、自分を許せないそんな自分を許す、どこまでいっても根気強く自分を許し続けた彼の、すべてを受け入れる言葉が、あのFIREの最後の「許してやるよ」なのではないかと思うのです。そしてそこに彼の優しさの根源がある気がするのです。

 

Answer: Love Myselfの中でも「認めるところは認めて、そろそろ自分自身を許そう」とやはりまた自分とARMYに言い聞かせていますが、あのNY Vライブの様子を見る限りでは、きっともう彼は誰に何を言われても、しっかり自分を許せるような強さを身に着けたのだな、と安心するとともに、少しうらやましく感じました。もし私と同じように、また立派な若造に先を越されてしまったと思っている方がいらっしゃるなら、しっかり声に出して自分に言うのがコツらしいです。「許します」って。ユンギもステージでたくさん声に出して言ったから許せるようになったんですかね。私も今日という日が終わるときには「許してやるよ。今日も一日ありがとう」って自分に声をかけたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました!