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今頃は彼らも無事に米国入りして忙しくしているところでしょうか。

20日に出席するSDG Momentの今年の議題は  "Building resilience through hope to recover from COVID19, rebuild sustainability, respond to the needs of the planet, respect the rights of people, and revitalize the UN" ということでざっくり言うと、世界平和を実現しよう、ということらしいですが、今回はそれに因んで(?) BTSのソロ曲で私が好きな曲について書きたいと思います。

 

Ships in the Night – Musings of Anthony Arnold

 

On my pillow 
Can't get me tired
Sharing my fragile truth

That I still hope the door is open
’Cause the window
Opened one time with you and me
Now my forever's falling down
Wondering if you'd want me now

枕に頭をうずめても

なかなか眠くならない

だから消えてしまいそうな真実を打ち明けよう

今でも扉が開いたままであってほしいという僕の気持ち

だってあの窓は

僕と君の間で一度だけ開いたから

あの時僕が手にした永遠が崩れていく今

君がまだ僕を思ってくれているのか考えてる


How could I know
One day, I’d wake up feeling more
But I had already reached the shore

Guess we were ships in the night, night, night

We were ships in the night night night

わかるはずもなかった

ある日こんな気持ちで朝を迎えるなんて

でも僕はもう対岸についてしまっていたから

きっと僕らは夜に浮かぶ船だったんだね

夜に、よるに、夜に浮かぶ船


I'm wondering, are you my best friend?
Feels like a river's rushing through my mind
I wanna ask you if this is all just in my head
My heart is pounding tonight, I wonder
If you are too good to be true
And would it be alright if I
Pulled you closer

君は僕の親友なのかな

心の中を川が激しく流れてるみたい

これは僕の勘違いなのかな

いろいろ考えて胸が高鳴る夜

君は僕にとって都合の良すぎる奇跡

だから許されない気もする

君を抱き寄せるなんて

 

Vライブの内容やリリースのタイミングからテテが2019年年末にかけて書いたのではないかと言われているこの歌詞をはじめて聞いたとき、わたしの脳裏にふと浮かんだのは、彼を見つめるあのまっすぐな瞳でした。どんなときも一生懸命に見つめてくれるその一途な視線に耐えきれずに、目を伏せてしまった自分。それを、夜の大海原で2隻の船がすれ違う様子に例えています。甘酸っぱい後悔を表すにはあまりにも大人びた繊細な表現ですが、実はこれ、「行きずりの人間関係」という意味でよく使う慣用句のようです。

 

もとになったヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの詩がこちら。

“Ships that pass in the night, and speak each other in passing,
Only a signal shown and a distant voice in the darkness;
So on the ocean of life, we pass and speak one another,
Only a look and a voice, then darkness again and a silence.”

夜にすれ違う船は、すれ違いざまに会話をする

さりげない合図と暗闇に響く遠い声

人生という海で、我々はすれ違い、言葉を交わす

一瞬の視線と声、そのあとに残るのは暗闇と静寂

 

夜にすれ違う船はお互いに汽笛を鳴らして挨拶しますが、お互いの姿ははっきり見えません。このように偶然出会って言葉を交わしながらも、相手のことをよく知らないままに別れていく関係のことを "Ships in the night"というわけです。

 

改めて見てみると、Sweet Nightは、対岸に到着して朝を迎えた1隻の船が、また夜に沈み、前夜の航海を振り返って、孤独の海から救おうとしてくれたもう1隻の船のことを想って書いた詞ということになりますね。あの船はまだ、あそこで待っていてくれているだろうかと甘い期待を抱きながら再び暗い海を渡ります。冷たい夜に身を震わせながら待つ消え入りそうな光が遠くに見える気がするのは私だけでしょうか。。。

 

何とも言えない感性が光るこの歌詞、英語自体は非常にシンプルで、nightを何度も重ねていたりするあたりは特にテテの英詞のトレードマークのような感じがするのですが、だれが作詞をしたかをめぐって米国人作詞家とARMYとの間で生じた衝突があったことはご存じでしょうか。その件で再度浮き彫りになった人種差別について少しだけ触れたいと思います。(先に結論として、この曲がテテを含むいろんな方々の合作だということは間違いないです。)

 

参考サイト:

Who Is Melanie Fontana? And Why Is BTS ARMY Accusing Her Of Taking Credit For V's 'Sweet Night'? - Culture (mashable.com)

 

 Sweet Nightがリリースされた後、Universal Music は当初、インスタにこのような投稿をしました。

"all eyes on @melaniejoyfontana whose recent work on 'Sweet Night' by V from #BTS has just locked in the #1 spot on iTunes in the most countries in history".

「世界中でiTunes #1に輝くBTSのVによるSweet Nightを手掛けたmelaniejoyfontanaに注目」

 

しかし、ARMYの批判を受けてすぐに投稿を削除したのです。梨泰院クラスのOSTとしてフィーチャーされたこの楽曲制作者として名を連ねているのはテテ本人の他、Hiss noise、ADORA、 Melanie Joy FontanaとArschtritt Lindgrenであり、フォンタナも決して自分だけの功績と主張したわけではありませんでした。

 

それなのに、ARMYはなぜ彼女にバッシングを浴びせたのでしょうか。その背景には、西洋人がBTSの成功に「のっかる」傾向や、「米国人アーティストの関与のおかげで」BTSがメインストリームPOPとして認められることを毛嫌いするARMYの心境があったようです。

 

この事件の前年、2019年にMTV VMAsがBTSのためにわざわざ新しくBEST KPOPというカテゴリーを作ったことは周知の事実です。「LOVE YOURSELF: Speak yourself」ツアーが大成功をおさめ、POP界におけるBTSの影響力が証明された中、本来ならば、Justin BieberやTaylor Swiftと同じくVIDEO OF THE YEARやBEST POPなどの主要部門にノミネートされておかしくない立場にありましたが、MTVはそれを許さなかったのです。「仲間にいれたくないけれど、仲間に入れないわけにはいかない」。このジレンマを解消するために、MTVはBTSをアワードに招待し、表向きは仲間に入れる一方で、KPOPをPOPの仲間にいれないという選択をしたのです。そしてこの人種差別を受けて多くのARMYは↓のテテのような表情になったわけです。

 

BTS V confuse moment - YouTube

 

誰だったか忘れてしまいましたが、今ではとても有名な黒人歌手の方が「R&Bで一番になりたい」と発言された時、お父様が「いや違う、うちのせがれはPOPで一番になるんだ」とおっしゃったエピソードが思い出されます。かつて黒人がメインストリームで表彰されることを白人が拒んだ時代の話だったかと思います。最近でもthe WeekendやChildish Gambinoが果たしてR&Bなのか、ここまで人気があるのに(popularなのに)POP部門で受賞しない理由はあるのかと議論されていました。

Is the Weeknd pop, R&B or hip-hop? Why the distinction matters at the Grammys (nbcnews.com)

 

話を戻すと、2019年時点ですでにBTSは名実ともにメインストリームと呼ぶに値するリスナーを獲得し、ビートルズ以来の記録も打ち立て、欧米アーティストの記録を塗り替えながらも、‘Boy with Luv’ ft. HalseyでBEST COLLABORATION部門にノミネートされるという屈辱を味わい、結局GROUP OF THE YEARとBEST KPOPを受賞する立場に甘んじるしかなかったことを、多くのARMYは不満に思っていました。だからこそ、Sweet Nightの制作に関わった白人の一人がとりわけ注目に値すると主張するようなUniversal Musicの投稿をARMYは許せなかったのです。

 

BTSが白人グループだったとして、Universal Musicが同じ投稿をしたか、あるいは投稿に対するファンの反応が同じだったか考えてみると複雑な気持ちになりますが、度重なるARMYの抗議の影響か、Sweet Night騒動の数か月後、BTSは2020年のMTV VMAsでBEST GROUPおよびBEST KPOPだけでなく、いわゆる主要部門であるBEST POPを受賞する快挙を成し遂げました。Justin Bieberを抑えての受賞が、それまで以上に大きな意味のある一歩だったことは言うまでもありません。そして今年もBEST POPこそ逃したものの、やはりBEST GROUPとBEST KPOPを含む3冠を手にしました。

 

BIGHIT/HYBEが2019年より、グラミー賞の結果を左右するRecording Academyの会員となったことが音楽界にどれほどの影響力を持つのかという点に関しては勉強不足ですが、いずれにしても、今やStevie Wonder、MJやPrinceをPOPと認めない人はいません。人種に関係なく、popularなものはpopularとして評価されるそんな時代をまさに今、築こうとしているBTSの姿は頼もしい限りです。外交官パスポートまで渡され、そのうち地球代表として宇宙に送り出されてしまう日も遠くないのではないか?! そんな風に感じてしまいます。

 

一方では政治に利用されているなどと揶揄されることもありますが、でも彼ら自身だって本当は、国連も、世界平和も、母国の期待も、何も背負わずに、自分たちの未来だけを思い描いて、がむしゃらに歌って踊っていたあの頃に戻りたいと思うこともきっとあるのではないかと思います。そんなときに彼らが思い出すのは、常に胸にあった強いメッセージなのかもしれません。どんなアイドルよりも強く伝えたいと彼ら自身が抱いている大切な思い。それを伝える手段が、たまにメロディーやラップではなくて演説になったっていいじゃないかと笑うナムジュンの声が聞こえてきそうです。

 

それにしても、あの2隻の船はその後、月明かりに照らされた大海原でお互いを見つけ出すことができたのでしょうか。今は2隻の船が並んであたたかい太陽の光を浴びながら気ままに漂っている光景が見える気がするのは気のせいでしょうかね。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

*英訳はいずれも公式のものではありません(投稿者の解釈によるものです)*