お立ち寄りいただきありがとうございます。

前回の投稿が思った以上に多くの方々の目に触れたようで驚きました。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

前回の投稿はMV/VCR考察でしたが、BTSをきっかけに、KPOPやLGBTQについていろいろな記事を読み、学んだことがたくさんあったので、今回はその内容の一部をご紹介させていただきたいと思います。今回も長文になりますが、前回の内容とは一変して、「あんな考察まで紹介してみたけど、結局ははめられているだけ?!」というのが今回の内容の要約です。

 

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参考サイト:

K-pop: Why it's hard for stars to be gay in South Korea - CNN

KPOP:韓国でアイドルがゲイになるのはなぜ難しいのか -CNN

K-Pop Exposed: How the South Korean music industry turned queerbaiting into a lucrative business | MEAWW

KPOPを暴く:韓国音楽業界はどのようにしてLGBTQを餌にして潤うようになったのか -MEAWW

*直接引用した部分は英文も記載しています*

 

それではさっそくですが、

そもそも韓国では同性同士のスキンシップが濃厚である背景として、「この国の住人にゲイはいない。よってどんなスキンシップをしていようとも、ゲイではない」という論理があるみたいです。CNNの記事ではそんな韓国を「同性愛恐怖症」と表現し、近隣国の日本や台湾よりLGBTQへの風当たりがずっと強いことを解説しています。

 

韓国では同性愛を禁じる法律はありませんが、軍内では違法とされています。それにもかかわらず、アイドルたちがファンの前で様々なスキンシップに励むようになった背景には、1990年代に派生したfanfiction文化があるようです。1993年に初めて民間人の総理大臣が選出され、エンターテインメント業界も発展していった中で、10代のアイドルファンたちは、好きなアイドルを登場人物にした物語書くようになりました。SNSが登場するずっと前、日本のやおい文化を参考に描かれた物語は多くの場合、アイドル同士の同性愛をテーマにするものだったようです。同性愛がタブー視されているからこそ、それらの物語はより一層人気を博しました。

 

2000年代に入り、KPOP業界はそういった需要にこたえるようなファンサービスをアイドルたちに強要するようになります。これは、One Directionなどの欧米グループがメンバー同士の恋愛関係を期待するファンの声を強く否定していた点と相反しますが、韓国でも実際にアイドルがカミングアウトすることは絶対に許されないこととされてきました。

 

実際、2018年にHollandが韓国初のゲイアイドルとしてデビューしましたが、大手事務所にカミングアウトを反対され、独立せざるを得ませんでした。

 

"I wanted to prove that I am worthy of love, and that I'm worthy of achieving and being accomplished," he said. "I felt that was the only way I could love myself."

「僕は、(ありのままの)自分が愛されるに値することを、そして成功に値することを証明したかった」と彼は発言しています。「そうすることが、唯一自分を愛する方法だと思った」

 

海外ウケはよかったものの、国内の反応はネガティブでした。デビュー曲のプロモーションも許されず、同性同士のキスシーンが登場するMVは国内で19禁になりましたが、あえてキスシーンをいれることで彼は疑問を呈しました。なぜ異性のキスシーンは18禁にならないのに、同性だとそうなるのか。

 

Hollandのデビューよりさかのぼること10年、国内で保守的な価値観が根強く残る中、KPOPは国外マーケット向けの顔として、マイノリティーの受け皿になるべく懐の深さをアピールするような戦略に出るようになります。それが結果的に”Queerbaiting”すなわちQueer(LGBTQ)をbait(餌)にして注目を集める戦略になっていったというのです。

 

そもそも"Queerbaiting"という単語が欧米で登場したのは2000年代後半のようですが、やはりそこでも若者たちがLGBTQとしてのアイデンティティーを追い求める過程で書いたfanfictionを目にしたテレビ業界が、LGBTQを売りにするドラマなどの番組を作成するようになったことに端を発したと考えられています。

 

売りにするといっても、登場人物がLGBTQであることをほのめかすだけで実際にLGBTQの人物は描かないという手法をとることで、LGBTQコミュニティーの期待に答えながらも、保守層の支持も失わないような演出を目指してきたということみたいです。これは、一見多様性を受け入れるような印象を与えるものの、結局はLGBTQが本当に受け入れられているのかという疑問を残します。

 

もともとファンサービスとしてのスキンシップ文化が存在したKPOPは、世界のメインストリームになっていく過程で、まさにこの「LGBTQをほのめかす」国内手法が国際的にも、恐ろしく売れるということに気づいていきます。世界中のファンたちがアイドル同士をカップルとしてシッピングするようになり、KPOPアイドルたちのスキンシップは激しさを増すようになりました。

 

もちろんBTSもその流れの中に存在していることは否定できません。たとえば、「事務所は『グクミン』推しで、『グクテテ』がカットされている」、「カットされることこそが、むしろ『グクテテ』がガチであることの証拠である」、なんて言われていますが、そんなことをarmyが考え、真実を求めて画像を繰り返し再生し、「考察」し、また画像をみて、編集して、ブログを書くというのは、KPOPビジネスの思うツボであることは確かです。

 

特定メンバーのやり取りをカットするところまでひっくるめてHYBEの演出だとして、前回の投稿で触れたMVなどの匂わせも何の意味もないとすればゾッとしますが、実際、単にはめられているのではないかと思う自分もいます。私がグクやテテのファンになりきれず、ジミンペンになったのは、彼のあからさまなファンサービスに逆に安心感と信頼感を抱いたせいもあるかもしれません。

 

And therein lies the issue with queerbaiting in K-pop: it profits off the marketability of LGBTQIA+ representation while not inviting any openly queer folk in its fold, all while still denouncing queer identities and remaining largely conservative. And that, essentially, serves as a horrible reminder to the queer community that their existence serves only one purpose: entertainment.

そしてここにKPOPにおけるQueerbaitingの問題が存在するのです。つまりKPOPは、実際にカミングアウトした者は寄せつけず非難する一方で、LGBTQIA+を代表し代弁するふりをして利益だけをかっさらっていく。それは、LGBTQコミュニティーにとって、「自分たちは結局のところエンターテインメントの対象にしかなりえない」という非常につらい現実を思い出させるのです。

 

心が痛くなるような搾取の構造。それでも、「匂わせLGBTQ」が過激さを増し続け、完全に振り切れれば、それはもしかすると、本当の意味でLGBTQが受け入れられる新しい時代の到来を意味するのかもしれません。中にはすでにLGBTQ支持を公言しているKPOPアイドルもいます。

 

BTSの立ち位置はというと、CNNの記事は、「あいまいな態度をとっている」と評価しており、もう一つの記事に至ってはBTSやarmyに対する下記のような皮肉ともとれる段落で締めくくっています。

 

…until the industry and its fandoms acknowledge the underlying issue, queerness will remain nothing more than an identity relegated to alternate universes where otherwise heterosexual idols get to pretend to be gay, just for a day

KPOP業界とそのファンたちが目を覚ますまでは、LGBTQというアイデンティティーは、ゲイでもないアイドルが期間限定でゲイを演じるパラレルワールド(←BANGTAN UNIVERSEを仄めかすalternate universeという言葉で表現されています)の中のものでしかない。

 

だいぶ辛辣な言葉ですが、私はそれでもBTSのメッセージを半分は信じたいような気持ちでいます。たとえば、グクテテのやり取りが意図してカットされているのは、ビジネスなんかのためではなく、むしろ彼らの真実を売り物にしないためであると。CNNの記事の最後の段落からも同じような気持ちがくみ取れるかもしれません。

 

"Idol culture is pretty conservative," ... "It's quite difficult for performers unless they reach celebrity status with the autonomy that brings ... For anyone else to rock the boat is pretty difficult."

「アイドルの世界は非常に保守的であり、自己決定権を持てるような確固たる地位につかない限りは、荒波は立てられない」

 

逆に言えば、荒波を立てて世界を変えられるアイドルがいるとすれば、やはりBTSぐらいだということでしょうか。。。彼らが本当にLGBTQIA+であるなら心から応援したいと思いますが、すべてが虚構の世界であるならば、消費者としてKPOPの闇の一端を担ってしまっているということに気づかされる記事を2つご紹介しました。

 

今回も最後までおつきあいいただきありがとうございました!