最近、東田直樹さんの本
「跳びはねる思考」を読みました。
東田さんは生まれつき自閉症の方で、
人とコミュニケーションを取ることができません。
人になにかを話そうとすると、その瞬間頭が真っ白になり、言いたいことが分からなくなるのだそうです。
だから、専用の文字盤を使いながら会話ではなく文字で人とコミュニケーションを取っているそうです。
—————————————————
僕は、二十二歳の自閉症者です。
人と会話することができません。
僕の口から出る言葉は、奇声や雄叫び、意味のないひとりごとです。
普段している「こだわり行動」や跳びはねる姿からは、僕がこんな文章を書くとは、誰にも想像できないでしょう。
—————————————————
声は、呼吸をするように僕の口から出てしまうのです。
自分の居場所がどこにあるのか分からないのと同じで、どうすればいいのかを自分で決められません。
僕は、まるで壊れたロボットの中にいて、操縦に困っている人のようなのです。
—————————————————
この本を通して、東田さんは自閉症の人の気持ちや考えを伝えてくれています。
自閉症の人の行動で、わたしたちが理解しにくいことについて分かりやすく文章で伝えています。
東田さんの書く文章は、とてもシンプルで分かりやすく洗練された文章だと思います。
障害を抱えて生きることで人に理解されなかったり、人と同じようにできないことについて心の内を説明してくれていますが、
それに対する東田さんの受け止め方や考え方は障害者だけではなく、すべての人にとって共通することだと思います。
この本には、良いことがたくさん書かれていてすべては紹介できないのですが、一部紹介してみたいと思います。
—————————————————
障害者は決して不幸ではないと思っていますが、幸せになるためには自分なりの価値観を持つことが重要です。
僕は、自分が幸福になるために、これまでに何度も自問自答を繰り返してきました。その中で気づいたのは、人がどんな時も前向きでいたいと願っているということです。
なぜなら、気持ちが明るくなければ、生きるのが、とてもつらくなるからではないでしょうか。
—————————————————
僕にとっての現実世界は、ふわふわした雲の上から、人間界を見ているような感覚です。
怒ったり泣いたりしている人たちを、別世界のできごとのようにのぞいています。
ひとりでは寂しいくせに、地上に降りていく勇気がありません。どんなところにも行けるのに、どこにいけばいいのか分からない感じです。
そんな僕も、ただじっとしているだけではありません。
雲の上から手を差し出したり、足を伸ばしたり、いろいろ試してはいます。でも、地面に届かないのです。
—————————————————
何も考えずに空を見る。この当たり前の行動は、誰からも奇妙だと言われることはありません。
けれども、自閉症者の場合は、動作が大げさだったり、普通の人がしないようなことをしたりするので、問題行動だと指摘されてしまうのです。
人の行動は、なにを基準に異常だと決められるのでしょう。
—————————————————
僕は知的障害があると診断されたのにもかかわらず、みんなと同じような教育を受けることができました。それが僕にとっての幸運だったと思います。
人生にとって重要な学びはふたつあるのではないでしょうか。
ひとつ目は、勉強をして、考える力を身につけること。ふたつ目は、自分の幸せに気づくことです。
外から知識を吸収するだけでなく、自分の内側を豊かにするのも大事なことだからです。
—————————————————
もしも僕が自閉症ではなく、普通に生まれていたら、どんな人生を歩んでいたのだろう、と想像することがあります。
けれども、自閉症ではなく、他の障害を抱えて生まれていたら、どうしていたのかということについては、あまり考えたことはありません。
—————————————————
以上です。
周りに障害者がいない人達にとっては
彼らの苦悩や大変さはなかなか理解しにくいものだと思います。
この本を通して、少しでも自閉症の人達への理解が進むように東田さんは伝えてくれています。
わたしも周りに自閉症の人がいないので
彼らの行動について、その理由まで知る機会がなかったのですが、この本を読んでとてもよく分かりました。
心と行動が一致しないのは程度は違えど、
彼らだけではなくすべての人に当てはまることではないでしょうか。
だからこそ、この本を読んで共感できるのかもしれません。