第一章 通則
第1条
1 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
民法はパンデクテン方式を採用しているので、抽象的規定が個別的規定よりも前に総則としてまとめられます。
よって、民法第一条とは民法典の中で最も抽象的な規定であり、民法の基本原則について規定されています。
民法の基本原則
民法は、権利能力平等の原則、所有権絶対の原則、私的自治の原則を基本原則としています。これらは近代私法の三大原則と呼ばれています。
これらの原則の重要度を理解しようと試みるとき、仮にこれらの原則が存在しなかった場合を想定することがおすすめです。もし、権利能力平等の原則がなかったならば、階級・職業・年齢・性別などによって権利や義務の主体となる資格が制限されてしまう恐れがあります。所有権絶対の原則がなくなれば、自己が所有する土地を不当に占拠する者に対して出ていくように請求する権利を持てないことになります。最後に、私的自治の原則がなくなった場合のことを考えてみましょう。そもそも私的自治の原則とは、契約自由の原則などを包含する多義的とも言えるとても重要な原則です。個人の独立や平等を前提としている点で近代的な概念であり、この民主的原則が失われれば封建的な社会になってしまうかもしれません。
では、基本原則を整理したところで次に条文を見ていきましょう。
まず1条1項に「私権」、「公共の福祉」という文言が出てきました。法律を勉強する際に重要になってくるのが、文言をしっかりと定義することです。私権の定義は、私法上(ここでは民法上)有することができる権利の総称となります。具体的には、財産権、身分権、人格権等のことを言います。公共の福祉は一言でいえば、社会全体の利益であり秩序のことです。公共の福祉の厳密な定義については、憲法に譲ります。
次に1条2項です。信義誠実の原則について定めた条文ですね。
そして1条3項は、権利濫用の禁止について定められてあります。これは、正義を振りかざして暴れる人を想像されるのがよろしいかと存じます。宇奈月温泉の判例が有名ですね。受験生の方は、ぜひ判決を実際に読みポイントを押さえておきましょう。
第2条 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。
2条は、個人の尊厳と両性の本質的平等について規定されてあります。
実務的にみれば、さほど意味を持たない条文ですが思想的にはとても意義深い条文だといえます。
今回は以上です。ありがとうございました。