最寄り駅を一つ北へ行った所に
世界でも有数の列車密着駅に指定されたO駅がある
そこに設置された巨大モニターが得意げに観光客向けのVTRを繰り返し映し出していた
上り列車と下り列車のすれ違う様がアニメーションで分かりやすく説明されていて
気付くと私も見入ってしまっていた
列車同士がぶつからないよう計算され尽くした勾配について画面の中で電車のキャラクターが説明している途中で
直に入ってくるであろう車両を迎え入れる作業に追われる駅員さんに目をとられた
何やら懸命に確認作業をし
丁寧に線路の整備をしている
その先に目線を投げると
一帯が池になっており線路が池に埋もれていた
どうやら水の中を列車が走る様になっているらしい
さらによく見るとそこには大きな鯉が悠々と泳いでおり
黒地に赤のまだら模様のもの、金一色のもの、鮮やかな朱色、目を凝らせばそれは無数にいるのではないかと思うほど何匹も確認できた
その中にはウツボも混ざっており
時折池から顔を出してはこちらの様子を伺っていた
するとそこへちょうど下り列車が入るとのアナウンスが流れ定刻通りに列車が水しぶきをあげながらホーム目掛けて入ってきた
残念ながらダイヤの関係で名物の近距離でのすれ違いは見られなかったが水の中を進む列車はどこか神秘的だと思った
暫くすると笛の音を聞いた列車が再び水を掻き分けて北上して行き
踏み切りが上がると同時に水上で放り出された乗客達がこちらへ向かって歩いてくる
私は誰を待つわけでもなくそこへ佇んでいた
先ほど見かけたウツボが何かを察知したのか
小さな音を立てて水中へ戻って行く
そこに大きな水柱を立てて現れたのは間違いなくこの池の主であるワニだった
私はその主に恐怖を感じるより早く違和感を覚えた
少しして違和感の正体は側面ではなく正面に並んで付いた円らな目だということに気が付いた
その二つの瞳は間違いなく私を捉えていたし
目測で200キロはあるだろう巨体を俊敏に動かし迷うことなくこちらへ突進してくる
私に逃げる隙を与えずに勢いをつけて何度もこちらへ向かってくるので
私の体を貫くのも時間の問題だと諦めかけた時
池の主と視線が交わる
ぎらつく二つの瞳孔に映る小さな自分の姿が見えた