Le cerf-volant

 

著:レティシア・コロンバニ(Laetitia Colombani)

訳:齋藤可津子

 

2022年9月25日 初版発行

Originally published in 2021

株式会社早川書房

堺市立図書館より貸出

 

 

レティシア・コロンバニの第三作目となる

小説を読了しました。

小説「三つ編み」の続編とも言える本書では

 

 

異なる世代間における女性の連帯を描いています。

 

 

"たとえここでは「自由」と「平等が」

なんの意味もないとしても、

「博愛」に望みをかけることはできる。” 

 

「あなたの教室」(p.51)

 

 

フランスで人生のパートナーである

フランソワを喪い失意のレナは

インドに旅に出ます。

海で遭難しかけたレナを少女が発見します。

10歳の少女ホーリーは20歳のプリーティ率いる

「赤い部隊」(レッド・ブリゲイド)に知らせ

レナは無事に救出されます。

 

プリーティとホーリーにお礼を伝え、

2人と面識を持ったレナは

口を閉ざし言葉を発しないホーリーに

インドの公用語である英語を教え始めます。

そしてプリーティにも。

2人が不可触民(ダリット)であるが故に

教育が受けられない惨状を目の当たりにした

レナは彼女たちのような不可触民の為の

学校を創立することを決意します。

学校を運営する中で

数多の困難や悲劇に直面しますが、

レナはダリットとバラモンの子である

クマール、そしてプリーティと

力を合わせて学校運営を続けます。

そして父と生き別れ、

より良い人生を求め共に故郷を離れた

母と死に別れ、過去を棄てた

かってラリータと呼ばれていた少女は

自身を意に反した結婚から救い出してくれた

レナとプリーティとシスターフッドの

絆を結ぶことで物語は終わりを告げます。

 

"たとえ不幸が大きくとも、

人間は不幸より大きい”

 

ラビンドラナート・タゴール

 

 

訳者のあとがきによるとこの小説は

実際にインドで不可触のために

学校を設立したフランス人男性との

出会いを元に書かれました。

実在する「赤い部隊」(レッド・ブリゲイド)を

始めよく取材して児童婚など

インドの女性が苦しむ現状が

小説の中に描かれています。

著者の作品はシスターフッドが

特徴のフェミニズム小説ですが、

この「あなたの教室」では

そして40代のレナが20代のプリーティ、

10代のラリータと年齢を越えて

互いを支え合うシスターフッドが

一貫して流れています。

「三つ編み」や「彼女たちの部屋」でも

同様なのですが、

発展途上国の有色人種の女性が

先進国の白人女性を先に助ける所が

インターセクショナリティの観点から

よくできていると思います。

 

 

「三つ編み」では異なる国の女性たちの連帯が

 

 

 

「彼女たちの部屋」では時空を越えた連帯が

 

 

描かれており、訳者の力もあり

読みやすく本の世界に入り込みやすいです。

自由間接話法の使用が上手く使われています。

読んでいる側もエンパワーされる

フェミニズム作品を今後も著者に期待します。