『向日葵の咲かない夏』

道尾 秀介 著 新潮文庫

 

 

【内容(「BOOK」データベースより)】

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

 

向日葵の咲かない夏

 

 

小学4年の ミチオ は欠席した S君 の家に、宿題とプリントを届けに行くよう先生に頼まれた。

そこで首を吊ったS君の死体を発見する。

慌てて学校に戻り先生に報告。

ところが先生と警察がS君の家に駆け付けると死体が消えていた

その後、S君はあるものに生まれ変わった姿で現れ、自分は殺された、消えた自分の身体を探して欲しいと訴える。

ミチオは3歳の妹 ミカ と一緒に、犯人と遺体のありかを捜し始める。

大筋はそんなストーリーだが、とても不思議な物語で、最初から最後まで引き付けられ、飽きずに読み続けられる。

いくつものジャンルが混在しているようで、どういう系統の小説と言ったらいいのかちょっと複雑。

ところどころ不自然な描写があり、それが何を意味するのか気になる。

3歳と思えない大人っぽい言動の妹ミカ。ミチオの母親は、ミチオにはなぜか冷たく意地悪だが、妹ミカに対しては変質的な愛情ぶり。

また、ミチオが住むN町では、犬や猫を殺して足を無残に折り口に石鹸を押し込むという事件が頻発している。

なぜ足を折るのか?なぜ石鹸を口に?

S君の事件とどう関係してくるのか。

多くの伏線と謎が上手に張り巡らされて、ページターナーとなる。

9歳のミチオが主人公で、僕という一人称で進んでいくので、ジュブナイル小説?と最初は勘違いしそうだが内容は、かなり緻密にできている。

 

スイスイと読みやすく、最初から最後まで中だるみせずに面白さが続くので大いに楽しめた。

 

読後この物語は何だったのか、これは読者により違う見解になるかもしれない。

ミチオが作り出した物語?幻想?

いろいろ思いめぐらせるのもこの小説の面白いところかも。

元に戻ってプロローグをもう一度読み確認。

また結末をどう解釈するか。ななか深みがある。

叙述トリックをうまく取り入れ、良くできたストーリーだった。