皆さまごきげんよう、エシュルンです(^-^)♪

 

 

 

私は心の病気で過去に何度か精神科の入院施設にお世話になったことがありました。今回は酷いうつ病のため療養させていただいた病院での思い出話です。その頃の私は週に1回精神分析的心理療法という治療を受けていました←ご興味がありましたらGoogle検索してください( ̄▽ ̄)トータルで7年程受けましたが、その途中でだいぶ心身が弱ってしまったので一時的に休息することになり、担当医が以前バイト(?)されていた病院を紹介していただいたのでした。のどかで空気のきれいな場所にあります。現在は建て替えをしているので面影はありませんが、病院は広い敷地に3棟の建物があり、外来受付&事務棟、3F建ての開放病棟、2F建ての閉鎖病棟からなっていました。私は開放病棟(とはいえ夜間は棟の出入り口からまるっと施錠です)3Fにある女性専用フロアの4人部屋で療養生活を送りました。

 

 

 

開放棟3Fは階段を上がったところに南向きに広いホール(談話室兼食堂)があって、隣にサブナースステーション、境のカウンターに公衆電話が1台置かれていました。懐かし10円玉タイプの赤い公衆電話です(昭和ですね)同じ南側には大部屋が左右に3つずつ(他に娯楽室等も有り)北側が個室や処置室、リネン庫になっていました。

私は歯ブラシがすごく重いと感じるほどまでに心身疲れていたので、やっと安心して休める所に来られた~♪だったのですが、超個性の強い女性の皆さんが集まる病院の特殊な世界に驚いて初日に階段の踊り場で密かに涙してしまいました。今思えば泣く必要など全くなかったのですけれど(苦笑)

 

 

 

当時のメモによると病院には約82名の医療従事者の方がいらっしゃいました。そのうち開放2Fを見守ってくださった男性看護師は私の覚えている限りでは8名、女性看護師は13名、入院中の私の担当医師の他に何名かの医師の方々がケアに当たってくださいました。さらに食事の提供をしてくださったり、5S(整理整頓清潔等)のお世話をしてくださったり、作業療法での回復を促してくださったりと、私は多くの方々に支えていただきました。本当にありがとうございました。あの時のサポートがあったからこそ、今の私が存在しているのです。ただただ感謝で一杯です。

 

 

 

案内された4人部屋はカーテンがない(精神科事情=自殺防止のため仕切りがありません)分だけ広く感じられました。窓は転落防止のため少ししか開けられませんが、南向きで明るく、外の香りが感じられる居心地の良いお部屋でした。このお部屋には既に3人の女性が入院生活をされていました。私はドア側のベッドで、お隣のベッド(窓側)には、明るくてお話が好きそうなTさんが、自己紹介と共にいろいろ案内をしてくださいました。私のお向かい、ドア側のベッドには人当たりの優しいIさんがちょこんと座っていました。Tさんのお向かいにはMさんという、可愛らしい相槌をされる女性がいらっしゃいました。皆さん私よりもずっと年上でいらっしゃいます。そして後に知ることになるのですが、この病院に入院しておられる方の多くは昭和の年代から入院(と言いますかもう生活ですね)されていらしたのです。

 

 

 

さて、同じ部屋で一緒に過ごせた大好きな3人について語ります。

先ずはTさん。Tさんのお話では、ずっと前にご両親と病院ではぐれてしまったとのことでした。現在のお母さまはある施設で暮らしている(もちろん真偽のほどは判りません)ということでした。Tさんはいろいろな精神科病院に入院された経験があり多くの経験を語ってくださいました。Tさんは抑うつと非常にお喋りな時とが交互に表われるので、沈黙が何日も続くことがありました。でも初めてお知り合いになれたのがTさんで私は良かったです。かなり中立的な視点で病棟のことを教えていただきました。

 

 

 

続いてIさん。Iさんは病棟の患者さんで私が最も親しくさせていただいた方です。いつも物静かで、柔らかい表情をされていました。お気の毒なことに常に幻聴がある状態で私と話しながら別の人と話したりしていました。彼女は幼い頃にご両親が離婚され、継母に育てられたそうです。昭和の時から長く療養生活されているため、必要最低限のお金しかありません。でも人をもてなすお気持ちを誰よりもたくさん持っておられました。初めてお会いしたときIさんは片手に熱いお湯と紅茶のティーパックの入った白いマグカップを持ってニコニコしながら、私に近づいて「どうぞ」という仕草をして歓待してくださいました。紅茶は何回か抽出済で、マグカップは彼女自身のものでした。でもその紅茶は彼女にとって全然少ない回数の抽出分の紅茶でしたしマグカップはIさんが持っている唯一つのマグカップだったのです。私は素晴らしい愛情をIさんからいただきました(≧▽≦)

 

 

 

最後にMさん。Mさんは、何と言っても相槌の言い方がめっちゃ!可愛い~のです♪その相槌の言葉とは・・以前に流行語大賞から商標登録候補にもなった「そだね~」です。北海道のあのお方よりもMさんのほうがずっと前から、この言葉を使っていたのでした(*^▽^*)Mさんは情熱的と言いますか、ロマンチストと言いますか、とても喜怒哀楽がはっきりしているのですが、最後はいつもこの「そだね~」で締めくくります。彼女が「そだね~」を言った数分後もしかしたら「そだね~」を言った瞬間、直前に彼女が何に怒って、何に悲しんで、何に笑って、何に喜んでいたのか、すべて忘れてしまうのです・・・。

 

 

 

 

私はここでゆっくり静養しているうちにここにいる患者の皆さんが明るい風でありながらも、何らかの痛みというか諦観的な思いを抱いていることに気づきました。病院から出ていきたいという気持ち、両親がいつかは迎えに来てくれるという期待は強いものですが、同時にどこかでいつまでも自分は出られない、外の世界では生きていけないということを悟っているようにも思えました。ご両親が迎えに来てくれるかも、と思っていても、ご本人が高齢な方が多いのです。ご両親は既に亡くなっておられるかもしれません。それでもご自分の年齢を忘れて「お母さん、お母さん」と、子供のように泣いている方がいらっしゃいました。自分が望んでいる家族というのは実際には存在しない方もいます。実の家族から厄介者扱いされて病院に「入れられている」方もいれば、もう引き取り手がない方もいらっしゃいました。これが現実なのです。

 

 

 

あるとき私は一人の患者さんからポツンと言われました「あなたは良いわよね、帰る所があるのだから。戻れるんだもの」確かにその通りでした。この中で私だけは旅に来ているかのように滞在しているに過ぎなかったのです。医師から真剣に診察をしてもらえることが、他の患者さんたちにとって、どれほど羨ましさを感じささせるものなのかを痛感させられました。他の方たちは医師から優しい言葉をかけられますが、もう匙を投げられている状態なのです。私は今も悲しそうにおっしゃった方のことが忘れられません。

 

 

 

ほとんどの皆さんが家庭環境に問題がありました。もちろん他にもいろいろな要因があったことでしょう。口には出しませんが、多かれ少なかれ「私は世間から見捨てられた場所にいる」ということを認識しておられたかもしれません。私はこの一見平和そうな病院に来て、初めて神の真理の光が届かない場所がまだあること、届かない所には絶望と諦めしかないことを知りました。そして世界をこんな風に変えてしまったサタンに対する強い憤りを覚えました。

 

 

 

私が入院して数か月後のある夕方、3Fのホールから出られるテラスからきれいな虹が見えました。第一発見者の私は急いで、ホールに戻って寛いでいる皆さんにきれいな大きい虹が見えますよ~(^^)と声をかけていきました。

わ~っ♪と皆さんが出てこられて、テラスや窓から虹を見ています。片手にブランドバックをいつも持っておられる患者さんが言いました「みんな、消える前に早く虹にお祈りしなきゃ!」そして多くの患者さんが虹に向かって、たった一つのお願い事をしました。それは「早く一日も早くここ(病院)から出られますように。」でした。皆さんは各々真剣に口に出して言いました。・・・私はその願いが今はかなわないと知りつつも、ここにいる全員がいつか必ず虹向こうにおられる本当の神さまを知って祈れる日が来ること、本当の健康を取り戻して幸せに暮らせることができるようにと隣で静かに熱烈に祈りました。

 

 

 

私の退院する日が来ました。特別なことはせず普段通りに生活して、なるべく目立たないように病院を出ることにしました。私はごく親しい人にしかお別れを言いませんでした。同室の人たちにはこれまでのお礼と、いつの日か役に立ってほしいと思い、聖書に関する希望のメッセージを簡単に書いた手紙を置いてきました。精神科病院は温かい休憩所のような所です。かつて私は残りの一生の間ずっと病院で暮らしたいと思っていたことがありました。厳しい外の世界に出なくて良いからです。でも、今は違います。あの場所は永く暮らす所ではありません。人間が人間らしく生きるための場所ではないのです。将来すべての精神科病院が解放されて、そこで借りの暮らしをなさっていた人たちが全員み~んな自由になって、自分たちの家を持って愛情に満ち満ちた家庭を持って、優しい天のお父さまとの絆を永遠に持てることを、私は心から願っています。

 

 

 

 

 

 

~今は届かないけれど、大好きなIさんへ~

 

 

Iさんが淹れてくださった愛情の抽出がたっぷりの紅茶はいつも本当に美味しかったです。私は・・あなたが淹れてくださった紅茶ほど美味しい紅茶を飲んだことがありません。Iさんが今度目を覚ますときは悩まされていた幻聴は消えています。本来の思慮深い冴えた思考のIさんと一緒に私の館でアフタヌーンティーするのを心待ちにしております。絶対絶対のお約束です(*^▽^*)

 

あなたの友エシュルンより(^-^)♪