営業所長が朝からどこかへ出かけてしまい、途方に暮れた。
何しろ出勤したらそのまま会議室で待っているように指示されていたので、自分の机すらどこかも分からない。
先輩社員もほぼ出かけてしまい静かになった執務エリアに移動した。なぜか出入口のそばに所長の席があり、一番遠い窓際に事務員さんが一つの島で座っていた。恐る恐る一番高齢の女性社員さんに自分の机はどこか聞いたら、微動だにせず面倒くさそうに、
「アンタの席はあたしの斜め向かい。座席表見てないの⁉」
と言われてしまったので、
「すみません…」
と返事するのが精一杯だった。
端から2番目、30代の若い女性社員と、自分より少し年上のチャラそうな先輩社員の間に座ることになった。ありがたいことに、そのチャラい先輩が早速話しかけてきてくれた。
「オレ、田崎(仮名)。『ザキ』って呼んで。君の教育係らしいから。よろしく!」
「よ、よろしくお願いします。自分は工場では『アホ1号』と呼ばれてたほどバカですので、かなりご迷惑をおかけすると思います…」
「なんだよ、『アホ1号』って⁉まあ、ここさ、田舎会社だからかな、規模の割に常識ねえ奴が多いよな。気にすんなよ」
助かった。何とかなるかもしれないと思えてきた。