こんにちは。LAC語学教室の中国語講師邱です。

 

  日本で生活していると、「え? 今のどういう意味?」と思うことがあります。もちろん、日本語の意味が分からないわけではありません。言葉は分かる。でも、「なぜその言い方をするのか」が分からない。逆に、日本人の友達からすると、「え? なんでそんな言い方するの?」と思う中国人の言葉もあるみたいです。

  

  長く日本で生活している私が感じた、日本人と中国人の「話し方・考え方」の違いをいくつか紹介します。

  まず、日本人から「今度、一緒にご飯に行けませんか?」と言われたとき。日本で生活する前の私は、「行けないかどうか聞かれてる?」と思っていました(笑)。でも日本語では、これは普通に「一緒に行きませんか?」というお誘いですよね。しかも、「行きませんか?」より「行けませんか?」のほうが、相手が断りやすい。もし都合が悪ければ、「すみません、その日はちょっと……」と断りやすいように、最初から相手に逃げ道を作っている感じです。

  ところが、中国人に同じように「你不能一起去吗?」と言ったら、「え? 本当は来てほしくないの?」となる可能性があります(笑)。中国語で誰かを誘うなら、「一起去吧!」「你要不要一起去?」「有时间一起吃饭啊!」など、もっと直接的に言うことが多いです。つまり、日本人は「相手が断りやすいように言う」、中国人は「自分が来てほしいことを分かりやすく言う」。同じ「誘う」でも、やさしさの表し方が少し違うんですよね。

 

  そして、日本語を勉強している中国人がかなり混乱する言葉が「大丈夫です」です。例えば、「お茶、もう一杯いかがですか?」と聞かれて、「大丈夫です」と答える。……え? 飲みたいの? いらないの?(笑)

「大丈夫」は本当に便利すぎます。「問題ありません」「必要ありません」「結構です」「心配しなくていいです」など、いろいろな意味で使われます。

  中国語にも似た表現はありますが、断るときは「不用了」「不要了」など、比較的はっきり言うことも多いです。だから中国人からすると、「大丈夫」が一番大丈夫じゃない言葉(笑)に聞こえることもあります。

 

  もう一つ、日本人との会話でよく出てくるのが「ちょっと……」です。「明日、飲みに行きませんか?」

「明日はちょっと……。」中国人だったら、「ちょっと何?」と思うかもしれません(笑)。「仕事があるの?」「予定があるの?」「じゃあ明後日は?」と、理由や別の日を聞きたくなります。でも日本語の会話では、「ちょっと……」は、かなり高い確率で「今回はやめておきます」という意味ですよね。

  中国語では、「今天不行」「我有事」など、理由や結論を比較的はっきり言うことがあります。一方、日本語では「NO」をそのまま「NO」と言わず、「ちょっと……」に包んで渡してくる。日本に住んでいると、だんだん「ちょっと……」の後に何が省略されているのか、分かるようになってきます(笑)。

 

  それから、日本に来た中国人が最初に不思議に思う言葉の一つが「お疲れ様です」ではないでしょうか。

朝、会って「お疲れ様です」。仕事が終わって「お疲れ様です」。メールを送って「お疲れ様です」。

……まだ何もしてないのに?(笑)

  もちろん、中国語にも「辛苦了」という似た表現があります。ただ、日本語の「お疲れ様です」は、単純に「あなたは疲れましたね」という意味だけではありません。「今日もよろしくお願いします」「いつもありがとうございます」「一緒に仕事をしています」というような、人間関係をスムーズにする役割も持っています。

言葉そのものより、人間関係の潤滑油のようなものなのかもしれません。

 

  そして、中国人の私が日本で生活していて、特に感じるのが「遠慮」です。

例えば、日本人の友達の家に遊びに行って、「何か食べたいものある?」と聞かれたとします。

「いや、大丈夫。何でもいいよ。」

「本当に何でもいい?」

「うん、大丈夫。」

  中国人の私だったら、場合によっては「餃子が食べたい!」と言ってしまいます(笑)。もちろん中国人も遠慮しますし、相手への配慮もします。でも、仲が良い相手には「友達なんだから、食べたいものを言っていいよ」「困ったときは頼っていいよ」という考え方もあります。

  一方、日本では「相手が用意する負担にならないかな」「図々しく思われないかな」と、一度遠慮することがあります。だから、「何でもいい」と言いながら、本当に何でもいいとは限らない(笑)。ここは中国人にとって、なかなか難しいところです。

  そして、この「遠慮」と関係しているのが、「相手に迷惑をかけない」という考え方です。

日本で生活していると、日本人は何かをするときに「相手に迷惑をかけないかな?」と先に考えることが多いように感じます。

  「忙しいところすみません」「お手数をおかけします」「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」など、まだ迷惑をかけていなくても、「これから迷惑になるかもしれない」というところまで考えていることがあります。

もちろん中国人も相手への配慮はします。ただ、中国では「困ったときは助けてもらえばいい」「友達なら遠慮しなくていい」という考え方も比較的強いです。

  だから中国人からすると、「友達なのに、なんでそんなに遠慮するの?」となることがあります。逆に日本人からすると、「友達だからって、そんなに頼んで大丈夫?」となることも。

 

  同じ「相手を大切にする」という気持ちでも、表現の仕方が違うんですよね。家族に対する考え方にも、少し違いを感じることがあります。

  中国には昔から「养儿防老」という言葉があります。簡単に言えば、子どもを育て、年を取ったら子どもに支えてもらうという考え方です。もちろん今の中国では価値観もかなり変わっていて、すべての中国人がそう考えているわけではありません。それでも、「家族ならお互いに助け合う」という意識は比較的強いように感じます。

  一方、日本では「老後は子どもに面倒をかけたくない」と考える人も多いですよね。自分のお金を準備して、必要になったら介護サービスなどを利用して、「子どもには子どもの生活があるから」と考える。

  中国人からすると、「自分の子どもなのに?」と思うこともあるし、日本人からすると、「子どもに迷惑をかけたくない」となる。

  こういう違いを見ると、単なる生活習慣だけではなく、「家族とは何か」という考え方にも違いがあるのかもしれないと思います。

  中国人同士では、「都是一家人」「自己人,不用客气」という言葉もよく使います。「家族なんだから、遠慮しないで」という意味です。仲が良くなると、「これお願い!」「ちょっと手伝って!」「今日泊めて!」と、一気に距離が近くなることもあります(笑)。

  日本人の場合、「家族みたいに仲がいい」と言っていても、「親しき仲にも礼儀あり」という感覚が残っていることがあります。

だから、中国人が「友達なんだから、遠慮しないで!」と言っている横で、日本人は「友達だからこそ、迷惑をかけたくない」と考えている。そんな、ちょっと面白い逆転が起こることもあります。

 

  「分からない」の言い方にも違いがあります。中国語では、「不知道」、つまり「分からない」と言うことがあります。もちろん日本人も「分からない」と言いますが、日本語では「ちょっと分からないですね」「どうでしょうね」「難しいかもしれませんね」など、少し柔らかくすることがあります。

  中国人が「不知道」と言うと、日本人には「冷たくない?」と感じられることもあります。でも本人は全然怒っていません。ただ、「知らないから、知らないって言っただけ」なんです(笑)。

 

  最後に、日本語を勉強している中国人がよく混乱する言葉が「今度」です。

「今度ご飯行きましょう!」

中国人:「いつ? 来週? 今月?」

日本人:「また今度ね!」

……そして、その「今度」がいつ来るのか分からない(笑)。

  もちろん、本当に予定を立てたいときもあります。でも「今度」は、具体的な日程を決めずに、「また行こうね」と関係をやわらかくつなぐ言葉として使われることもあります。

  中国人にとっては、「行くならいつ行く?」。日本人にとっては、「また行こうね」。これも、言葉の違いというより、「人との距離感」の違いなのかもしれません。

 

  こういう違いを見ていると、「日本人は遠慮しすぎ!」とか、「中国人は直接すぎ!」と思うこともあるかもしれません。でも、私はどちらが正しいという話ではないと思っています。

  日本では、「相手に負担をかけないこと」が人間関係のやさしさとして表れることが多い。一方、中国では、「相手との距離を縮めて、遠慮しないこと」が親しさの表現になることがあります。

  だから、「行けませんか?」という一言の中にも、「もし都合が悪かったら、無理しなくていいですよ」という日本的なやさしさがある。

  一方、「一起去吧!」には、「あなたと一緒に行きたい!」という中国的なストレートさがある。どちらも、相手を大切にしたいという気持ちから生まれているのかもしれません。

  言葉を勉強するとき、「この日本語は中国語で何と言う?」だけではなく、「なぜ日本人は、ここでこの言い方をするんだろう?」と考えてみると、言葉の勉強がちょっと面白くなります。

  そして日本人の皆さんも、中国人と話していて「なんでそんなにハッキリ言うの?(笑)」と思ったときは、もしかしたらそれは、「あなたと仲がいいから、遠慮していないだけ」かもしれません。言葉の違いの裏側には、その国の「人との距離感」が隠れているんですよね。

 

 

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