第20回 ジャン=リュック・ナンシー、汪暉、ヴァルデンフェ、柄谷行人の話をきいてきた。 | TDGのブログ

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大学生・大学院生からなる自主ゼミ。

TDGでは第18回として、東京大学と東洋大学でそれぞれ行われたシンポジウムに参加しました。当記事では、その模様をお伝えします。

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まず向かったのは、東京大学駒場キャンパス。
汪暉による『中国の直面する問題——国家と民主の概念を再考する』と、柄谷行人による『〈世界史の構造〉における中国』が発表されました。
予備知識がまったくなかったため汪さんの発表は意味をまったくつかめませんでした。情けない。中国について現地でどのように語られているか、について無知な自分を恥じました。彼が著した著作がいくつかでているようです。これを読むことがいま自分に必要とは思わないけど、もっと中国については知っていこうという動機付けにはなりました。汪さんは、日本の知識人とはちがいます。ここからは私見で、気になったことに触れます。しかし残念ながら、内容ではないです。汪さんは、堂々としている。そして、快活である。一方、日本人の(現代の)知識人と呼ばれる人はどちらかというと優しそうで草食的である。汪さんはからだもガッチリしていて強そうでした。メンタリティにも、大きな変化があるようにみうけられるのですが、お国柄のちがいなのでしょうか。
柄谷行人さんの発表はめちゃくちゃおもしろく、時間も当初の予定を大幅にオーバー。『世界史の構造』で世に問うた図を一度わかりやすく復習したうえで、その構図でもって中国を俯瞰していく。こちらも、全体像を理解できたとはまったく言えないけれど、その視野の広さに学問の面白さを感じるとともに、著書を読んでみたくなりました。ユーモアを交えたチャーミングな方。

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移動して東洋大学白山キャンパスへ。柄谷さんの発表がオーバーしたことで会場入りも若干の遅刻。
国際哲学研究センターWEB国際講演会「ポスト福島の哲学-知の巨匠に尋ねる」。
こちらではジャン=リュック・ナンシー(ストラスブール大学名誉教授)とベルンハルト・ヴァルデンフェルス(元ボーフム大学教授)の議論が展開されました。
東洋大学で国際哲学研究センターのシンポジウムが催されるのは二度目です。すばらしい機関が発足してくれたことが、まずは嬉しい。議論の内容は、ちぐはぐした感じは否めなかったです。それぞれの主張は、客席の手許にも行き渡ったレジュメをたんたんと読み上げるだけだったし、議論は国際間通話だったこともあってか、終始噛み合わないようにみえました。
だからこちらも、シンポジウムの内容の如何にはとくに思い入れはありません。すばらしかったのが、i司会の村上勝三先生の態度です。彼は、議論を必死に深めようとした。
通常のシンポジウムであれば、問いへの応答が一通り済めばそこで切り上げてしまいます。今回はそうならなかった。彼はドイツとフランスを数回往復させることで、どこまでも深めてみようと試みていた。時間がすぎても探求をやめないこの大胆不敵な行動に、哲学への愛みたいなものを感じたんですね。

この文章をみて、読んでるあなたは、こう感じるでしょう。ではいったい、なかで何が話されたんだと。わからない。というか、ほとんど覚えてない。そしてそれはだいたいのシンポジウムにおいていえること。観客は内容もさることながら、そこで得られる動機付けこそを求めに、会場に足を運ぶのではないか。その点では、喚起されるもののあった両シンポジウムは参加できてよかったのでした。数年後、シンポジウムをただの自己啓発以上のなにものかにできますようにと、今日も勉学に励むわけです。


追記(2012/2/15)
シンポジウムの動画がyoutubeにアップされました。
WEB国際講演会「ポスト福島の哲学-知の巨匠に尋ねる-」(20111217)part1
http://youtu.be/JHfwzwgks0o



http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/events/2011/12/related_events_lectures_wang_h/

http://www.toyo.ac.jp/event/detail_j/id/4883/

第一回のシンポジウムの模様はこちら。加藤尚武、吉田公平、山口一郎、菊地章太各先生らの当日の公演の様子が一部うかがえます。
国際哲学研究センター設立記念シンポジウムを開催 - News & Information - 東洋大学


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