三菱電機は25日、労務問題を防止するための追加対策を発表した。上司のほか、部下や同僚からも人事評価を受ける「360度評価」を2021年4月に導入する。パワハラの事例や件数、心の健康を損なった人数などの従業員への開示も始める。
長時間労働の抑制など、働き方改革に取り組む姿勢を「労使共同宣言5か条」としてまとめた。全ての役員と従業員に、パワーハラスメントなどを行わないとする宣言書を提出させる。
三菱電機では昨年8月に20歳代の男性新入社員が、上司から「死ね」などと言われたと記した遺書を残して自殺した。他にも長時間労働が原因の自殺などが複数認定されている。
これを受け、1月に社員教育の充実などを盛り込んだ防止策を発表したが、外部の弁護士らから「有効性が十分ではない」との指摘を受けたため、労働組合も交えて追加策を決めた。
(読売新聞 2020年11月25日)
パワハラ対策もここまでやるかといった領域になってきました。11月25日の読売新聞のニュースです。働き方改革に取り組む姿勢に関して、「労使共同宣言5か条」にまとめたと言います。
このことは模範的な姿勢と言えます。働き方改革は立法措置が絡む話ですので、遵守は当然かもしれません。実務上の注目点は、こうした宣言条項が存在した場合、その宣言が守ることができているかの点です。労務・労働の世界は実態で評価されるだけに、気を引き締めないと宣言のみが立派だったということにもなりかねません。
今回の大きなテーマは働き方改革ではなく、パワハラの関する同社の方針・姿勢についてです。三菱電機は、全役員と従業員にパワハラを行わないとする宣言書を提出させるとしています。
小職の知る限り、そうそう例がない対応かと思われます。効果としましては、全役員と従業員という以上、外れる者がなく、全員としたことで、抑止力になる効果が大きいと考えられることです。
パワハラは、上司から部下だけではなく、同僚同士、部下から上司へのケースもありますますので、漏れなく全員を対象にしたことは首肯できます。
加えて、こうしてニュースになって駆け巡っていますので、さらに抑止効果があると言えます。ただ、実務でパワハラ問題を対応していて言えることは、どんなに宣言しても、決まりを作っても、パワハラの多くが、業務範囲や指導等の範囲を超えているかの問題になります。
ひとたび加害行為者とされる者が、被害者とされる者に対して行為する場合、ほとんどが感情の世界になっています。嫌がらせ行為ですから、その人物の何かが嫌だとか、気に入らないとか、頭にくるとか、そうした感情が表面化して行為となっています。
三菱電機の宣言書に、実務上、大人の世界とはいえ、感情をコントロールできる効果が、どこまであるかはわからないと言えます。うまく効果が得られるように願うばかりです。
こうした取り組み自体には拍手を送りたいと思います。なかなかここまで対策できるものではありません。仮に、社労士が同じことを企業に提案した場合に、企業体質や社風、パワハラの規制強化への意識にもよりますが、抵抗がある企業のほうが多いと推測します。受け入れてもらえないのではないか思います。
人間は「○〇をしない」ことを約束することに対して、ただでさえ抵抗感があります。ましてや役員や従業員でも役職者ともなれば、相当な抵抗感はあるでしょう。だからこそ、全役員と従業員とすることで抵抗感をかなり下げる効果もあるのでしょう。みんな宣言するんだからと。
こうした例に触れてみると、パワハラにあたる例とあたらない例をいくつか事例を挙げて全員に対して社内研修をしておくことは効果的でありますし必須事項だと考えます。
「パワハラはいたしません」と宣言はしたものの、業務上の必要な範囲で叱責する場面が絶対にないわけではありません。どのような行為ならセーフに転ぶのか、逆にどのような行為ならばアウトになるのかは、完全ではなくても、相応に抑えておくことが必須であると考えます。
また、セーフの行為でも、部下はパワハラされたと主張するかもしれません。全員に対し、共通の研修をしておうことが、効果的かと思われます。
もっとも記事になって出てきていないだけで、すでにこうした内容も専門家などからレクチャーを受けているのかもしれません。
ここまで三菱電機を駆り立てたものは、記事になっていましたが、上司からの「死ね」などのパワハラ行為が原因で死者を出していたり、長時間労働でも死者を出していたりするという事実です。
昨今は、裁判例でも自殺の裁判例を多く目にするようになっています。ここまでの事実にならないと、上記のような対策にならないのかとも言えます。これからの時代は、世の中の企業が、従業員の物心両面の幸福を考えるような大義名分のもとに経営する、利己ではなく利他の精神で経営する企業であってほしいと思います。
さすれば、宣言などなくても健康な企業になるのではないかと考えます。
最後までお読みいただきましてありがとうございます。
特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄