労務問題でも××問題でも態度は同じもの | ★社労士kameokaの労務の視角

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ー特定社会保険労務士|亀岡亜己雄のブログー
https://ameblo.jp/laborproblem/

前回に連続して自治ニュースになりますが、取り上げる素材は労務ではありません。しかし、労務問題とまったく態様というか姿勢というか同じであることに一つ指摘しておきたいと思いました。

企業が潔く誠実に応じることが、心証につながることを改めて伝えておきたかったと思った次第です。

まず、毎日新聞の記事をそのまま登用させていただきます。

三菱マテリアルの子会社(三菱電線工業、三菱伸銅、三菱アルミニウム)が自動車や航空機向けなどに出荷した素材製品の検査データを書き換えていた問題は、出荷先が274社と広範囲に及んだ。神戸製鋼所に続く品質データ改ざんで、改めて日本のものづくりのあり方が問われそうだ。

 「不具合があるかもしれないと認識しながら製品の出荷を続けていた」。24日の記者会見で三菱電線の村田博昭社長は、不正を把握した今年2月以降も、10月23日に停止するまで不適合品の出荷を続けていたことを認めた。

© 毎日新聞 記者会見する三菱マテリアルの竹内章社長=東京都千代田区で2017年11月24日午…

 会見では「出荷を止めるのが当然で、売り上げ優先ではなかったか」などと厳しい質問が相次いだ。村田社長は「全容把握に時間がかかってしまった。親会社に報告して支援を仰ぐべきだった。反省している」と陳謝したが、三菱マテリアルの竹内章社長は「詳細にわたることはコメントする立場にない。把握していないので答えようがない」などと人ごとのように述べ、会場の記者をあぜんとさせる場面もあった

 子会社3社の出荷先は計274社に及び、10月に発覚した神戸製鋼所(525社)とデータ改ざんの手口が酷似している。「測定した記録をパソコンに入力する時、実際のデータと違う数字を入れていた。なぜ起きたのかは、弁護士が入った調査委員会に究明をお願いしている」。村田社長は記者会見で不正の実態についてこう述べた。ゴム素材のパッキンなどの寸法や材料の特性が納入先の要求や社内基準を満たしていないのに、現場の社員が基準に合うよう入力していた。

 神戸製鋼は納期やコストを優先した結果、「クレームがない限り、検査や製品の強度などの仕様が軽視され不正につながった」と説明している。この点についても質問が相次いだが、竹内社長は「弁護士らの調査結果を待ちたい」の一点張りだった。

 神戸製鋼では、事業所ごとの専門性を重視し、人事異動が少ないなど「閉鎖的な組織運営」も不正の要因となった。三菱マテリアルは不正が発覚した金属事業とアルミ事業のほか、セメント、電子材料など事業ごとに組織が分かれる「社内カンパニー制」を採用している。竹内社長は「社内カンパニー間の組織の壁が高く、人事の交流はほとんどなかった」と述べており、やはり閉鎖的な組織運営が不正の温床となった可能性が高い。

 「不正が組織ぐるみだったのではないか」という質問に、竹内社長は「本社の関与はないと思う」と強調したが、こちらも子会社の調査委員会にゲタを預けた格好で、真相解明はこれからだ。不正発覚後も不適合品を出荷していた事実は重大で、今後の対応次第では、神戸製鋼と同様に納入先から部品交換の費用負担や損害賠償を求められ、経営問題に発展する可能性もある。【川口雅浩、小原擁】

※斜体文字、下線は亀岡が記す
 
こんな具合に書いてありました。今後もこのような記事を見かけると指摘することがあるかと思います。いざ汚点の残ることをすると当事者とうのは、ほんとうに誠実さを押し殺して、保身に走るというのが印象です。
 
今後、訴訟になったことをも見据えていて、認識しながら対外的には、認めるというふうに受け止められる発言や態度を殺しているのでしょうか。もちろん、記者会見にあたっては、専門家の助言を受けているでしょうから、こうなるだろうと推察されます。
 
記事の冒頭部分を読むと、売り上げ確保を外せなかったことも否定できないところでしょう。そのうでの、竹内章社長のコメントです。決して心証がよくなるものではありませんし、企業の評判を悪くすることにもなりかねません。
 
もっとも、一時的に評判を落としても、あからさまに安易に事実を認める発言をするなという専門家からの助言を受けてのことなのでしょうか。
 
裏舞台の真意は不明ですが、多くの世論は、宜しくないという評価になるのかもしれません。
 
本業話に移りますと、労務問題が発症したときと態度、姿勢がやはり変わりません。今回のような態度等が問題の心証を悪いほうにしてしまっています。
 
把握していないので答えようがない式の態度は、ハラスメント問題の際に見られる典型的な姿勢です。私が言うのも変ですが、あえて指摘させていただきますと、「全体や詳細な点は今後の調査を経てからになりますが、まずは、このような問題が表面化するに至った点について、会社として責任を痛感しております」ぐらいは、一旦、とどめておかないといけないのではないかと考えます。
 
表ざたになったことは、何も問題がなかったわけではないと考えざるを得ないと思われますので、これぐらいは致し方ないかと受け止めないといけないのではないかと思います。
 
発言にあまりの防御の姿勢ばかりが目立ってしまうとよくないでしょう。企業の利益優先で、保身の姿勢で誠実な対応をしない、責任転嫁する、さらには、専門家の証拠ありき主義が読み取れる例として反面教師にすべきかもしれません。
 
労務テーマとしましては、今後、企業の経営が悪化して、人員削減などリストラ策を講じた場合、単なる整理解雇問題では済まない可能性がでてきます。
 
会社法429条の役員等が第三者に対して負うべき損害賠償責任の問題も対象になる可能性があります。神戸製鋼しかりですが、今回のような不祥事が明るみに出るたびにJT乳業事件(名古屋高判平17.5.18労判905号52頁、金沢地判平15.10.6労判867号61頁)が思い出されます。
 
この事件は、牛乳等の製造販売を営んでいたJT乳業(株)が、同社が製造した牛乳を飲んだ児童が食中毒事件を発症したことで、事業を解散し、従業員を解雇しました。元従業員11名と亡くなった従業員の相続人3名が、この食中毒事件は、同社の代表取締役であったY1がクレームを受けて回収した牛乳を牛乳の原料とする違法な再利用を決定して指示するなどの代表取締役としての職務を行うにつき悪意又は重過失による任務懈怠があったため発生したのであり、その結果、同社が廃業に追い込まれ従業員らは解雇され損害を被ったとして訴訟提起したものです。
 
商法266条の3(現行法は会社法429条)は、「役員等がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」とあり、これを根拠とする主張です。
 
この事件は、第一審の判決前に、代表取締役Y1が死亡していましたが、高裁で確定し、Y1の任務懈怠が肯定され、従業員らの解雇後の求職活動相当期間中の解雇前の賃金相当の逸失利益、再就職先における労働条件が解雇前の労働条件を下回った場合における賃金差額相当の逸失利益が、雇用存続想定期間(解雇後2年間)における雇用契約上の権利喪失による損害として認められています。
 
そのほか、Y1の任務懈怠により被った精神的苦痛が相当に重大であったとして、従業員ら一人あたり100万円の慰謝料が認められています。
 

こうして企業の不祥事のたびにこの事件が頭をよぎるのですが、昨今の不祥事は発症した企業においては、このような事態にならないように、対策が急務ではあります。

だからといって、不誠実な姿勢は歓迎できないものであり、世間の非難にもなりかねないし、企業評価を押し下げる要素にもなるところです。

取引先などビジネスに大きく影響するものでしょう。パワハラの事案に向き合うと感じることですが、コンプライアンスの対応組織は、相応の規模になりますと存在しているわけですが、どうも存在しているだけの名ばかりのコンプライアンス組織のように思えます。

構成メンバーが取締役や人事部長など経営側に立つ者だけの場合は、もちろん、きとんと対応している企業もあることはありますが、企業姿勢を貫くことになるケースも散見されるところです。中には、調査をせずに周囲の者に確認したが事実は確認できなかったとして鞘を収めるバージョンも少なくありません。

企業のリスク対策にも寄与するところですので、普段から防止策を厳重に講じてほしいと切望いたします。