労働基準監督署は何をするところか | ★社労士kameokaの労務の視角

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ー特定社会保険労務士|亀岡亜己雄のブログー
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働く人の間で労働基準監督署を知らない人はいないといっても過言ではありません。なにか、労働に関して「法律違反ではないか」「おかしいのではないか」と思った瞬間に、労働基準監督署に確認しに行くケースも増えています。また、多くの場合は、労働基準監督署に出向かずに電話で気軽に聞こうとします。企業も従業員がなにか言ってくると労働基準監督署に確認しようとします。

 

その内容が、たとえ、労働基準監督署の業務管轄外の内容であってもです。従業員も企業も、監督署の管轄かどうかまで意識にありません。まず、労働基準監督署に行きます、聞きます。

 

しかし、労働基準監督署は万能の駆け込み寺、労働のすべてを対応できる場所ではありません。実際は、賃金、休日、労働時間、割増賃金(法定外残業、深夜、休日の労働時間分の賃金)、解雇予告手当、年次有給休暇、安全衛生など非常に限られています。

 

これらについて、国に与えられた監督権限により、行政として取締り、罰則付きで会社に遵守してもらおうという役割を負うのが労働基準監督署です。労働基準監督署で働く者は原則、国家公務員です。

 

したがって、一般の民事には介入できないのです。一般民事とは、解雇が違法かどうか、従業員の行為は競業避止義務に反しないかどうか、各種ハラスメントの違法性、低い人事評価は恣意的なものかどうか、違法な配転命令かどうかなどですが、これらについては、労働基準監督署は判断することはできないのです。

 

 このように労働基準監督署の行う業務は非常に限られていますが、従業員が相談等で訪れれば、話を聞くことは行います。そのうえで、労働基準監督署の管轄外の内容の場合は、労働局の労働相談・助言を案内します。

 

また、企業が、残業代を請求されて労働基準監督署に聞いたケースですが、時間の記録があって長時間労働であっても、「企業が残業はさせていない。本人が勝手に残ってダラダラしていただけだ」と言えば、労働基準監督署は、「確実に残業があったと言えるのは9時間分です」などとコメントするがゆえに、労使紛争へと発展している例もあります。

 

この例では、労働基準監督署は、時間記録を確認し、確実に法定時間外労働時間と言えるのは何時間あるかを指摘しているにすぎません。グレーの部分、つまり、本人がかってに残ったのか、従業員の働いた時間は指揮命令下にあった時間なのかについては、法的な判断が必要になるため、明確なことは言えず、そういった点は結論を出しません。

 

しかし、この例では、従業員が残業があったと言って対象としているのは、自分が働いた時間は指揮命令下にあった時間で、すべて業務時間だとしている点です。労働基準監督署は、中途半端な対応になります。

 

労働基準監督署は、労働基準法の条文に関する違反がある場合で、はっきりした記録で確認できる場合でなければ、グレーなコメントになると考えておべきです。

 

したがいまして、労働契約法に書いてあることの違反は、労働基準監督署の業務範囲ではありません。しかし、労働問題の実務をやっている経験では、根拠法として最も活用しその解釈を探り、あてはめることが多いのは、労働契約法のように思います。

 

よって、労働基準監督署は、労働に関するすべてを扱うところではないどころか、ほんの一部しか扱わないところだということを知る必要があります。

 

労働基準監督署は、上記のようにグレーな点は扱いませんから、今は、あっせん紹介所になってしまっています。

労働基準監督署:「まあ、あっせんていう制度があるから、やってみたら」「この申請書を出すだけでできるよ」

本人:「どう書いたらいいんでしょうか」

労働基準監督署:「そんなの適当に書けばいいんだよ」

 

この会話は、実際にあった例です。あまりにもひどい対応だと言えます。労働基準監督署の業務ではないためこうなるのでしょうか。労働者が知りたいのは、いきなりあっせんをやることではありません。

 

こうした例は後を絶たないのです。労働基準監督署が対応するだけに、本人はすっかりそうなんだと信用することにもなります。先の残業代や労働時間の企業の話も同様ですが、非常にリスクの大きい話です。

 

労働基準監督署は万能どころか、ほんの一部しかやらないことを知っておきましょう。また、労働基準監督署に話すにしても、詳細な事実を伝えなければいけないものは、電話ではなく、労働基準監督署に行って、対面で話しましょう。病気になった時の診察と同じなのです。