凍結保存胚の移植後の臨床転帰における季節、日長、気温の関連性についての論文をご紹介いたします爆  笑

 

自然妊娠による出生率は季節によって異なることがすでに報告されています

体外受精では、新鮮胚移植や移植当日の季節についての報告はありますが、採卵時の季節・日長・気温についての報告はまだありませんでした。

採卵時の季節・日長・気温との関係性を調べることで、季節性と卵子の質や着床に対する子宮の受容性、またはその両方が関連しているのかがわかりますキラキラ

 

 

 

 

 

胚の移植は、3日目に分割確認を行い、不良胚は3日目で凍結、良好胚は5日目の胚盤胞まで育てて凍結し後に移植しました。

 

1937人の女性(平均年齢:採卵時34.8歳、移植時36.2歳)から合計3004周期の凍結融解胚移植を行いました。

採卵時の季節や凍結融解胚の季節、平均年齢や成熟卵子数など、どの季節も同様でした。

 

●採卵時の季節と凍結融解胚移植の季節による臨床結果

採卵時夏の胚は、採卵時冬と比較して、オッズ比が着床率51%、臨床妊娠率45%、生児出産率42%高かった。流産は同様でした。

 

●採卵時気温と凍結融解胚移植時の気温による臨床結果

採卵時の平均気温が>17.2℃の凍結融解胚移植では、平均気温が<6.7℃と比較し、オッズ比が着床率54%、臨床妊娠率41%、生児出産率34%高い結果となりました。

凍結融解胚移植の気温では3群間で差はありませんでした。

 

●採卵時日長と凍結融解胚移植時日長による臨床結果

採卵時>13.64時間の凍結融解胚移植では、<10.81時間と比較して、着床率のオッズ比が高い結果となりました。

凍結融解胚移植時の日長では3群間で差はありませんでした。

 

●3日目の胚と5日目の胚での違い

3日目の胚を用いた凍結融解胚移植では、サンプルサイズが小さいため結果がでませんでした。

5日目の胚を用いた凍結融解胚移植での臨床結果は、生児出生率で夏が冬より31%高く、採卵時気温が高くなるほど増加しました。

 

今回の研究で気をつけなくてはいけないこと

 

●卵巣機能に対する周囲の温度の根本的な影響は不明です。

●今回の研究でも『夏に採取した卵子の数は他の季節より少ない』傾向があり、これは過去に報告された、気温が高いほど胞状卵胞数が少ないことと一致します。

また、温かい時期のライフスタイルが臨床結果の成功確率を高くすることに関連があるかもしれません。

●卵巣刺激のパラメーターや卵子の特徴に季節による顕著な違いは観察されませんでした。

よって、今回の研究では測定していない、季節や気温に関する卵母細胞や胚の質の側面がある可能性があります。

●精子パラメーターを考慮していません。

温かい気候は、精子濃度が低く、形態の正常性と関連しているという報告もあります。

今回の研究では、精子パラメーターと関連がないと考えられますが、季節性に影響を受ける可能性があるより具体的な卵子、精子、胚の品質特性を特定するためにさらなる研究が必要です。

●今回の研究で測定されていない、または未知の因子が関連している可能性もあります。

例えばPM2.5などの大気汚染が多い場合、凍結融解胚移植の後の生児数の有意な減少を認めていますガーン

 

まとめると、

凍結融解胚移植で、採卵時の夏の気温の高さが臨床妊娠および生児出産の高いオッズと関連することがわかりました爆  笑

 

このことから、体外受精の成功に対する季節性の影響は、卵巣機能と卵子の質に関連し、子宮受容性には関連しないことが示唆されましたびっくり

 

今後は季節性に影響を受ける可能性のあるより具体的な卵子や精子、胚の品質特性について検討する必要があり、大気など今回の研究以外の要因との関連性も調査する必要があります。

 

参考文献:The association between season, day length, and temperature on clinical outcomes after cryopreserved embryo transfer

Katharine F B Correia, et al. Fertil Steril. 2022. Mar;117(3):539-547