さわだウィメンズクリニック培養室ブログ
日本産科婦人科学会PGT-A多施設共同臨床研究への参加が承認されました。
詳しくはこちらからご覧ください。
  • 30Jun
    • ピエゾICSIについての最新の報告 ‐ピエゾICSIはICSI後の卵子生存率と受精率を向上させるの画像

      ピエゾICSIについての最新の報告 ‐ピエゾICSIはICSI後の卵子生存率と受精率を向上させる

      顕微授精(ICSI)の方法として、先端にスパイクがついたピペットを卵子に刺し、卵細胞膜を吸引して穴を開け精子を入れるという方法が従来多く行われてきました。しかし最近では、ピエゾICSIと呼ばれる、先端が平らなピペットを使用して、ピエゾパルス(微小な振動)によって卵細胞膜に穴を開ける方法が普及してきています。ピエゾICSIについての最新の論文が発表されていますので紹介します。Evaluation of the effect of piezo‐intracytoplasmic sperm injection on the laboratory, clinical, and neonatal outcomes. Reprod Med Biol. 2020 Apr; 19(2): 198–205.2011 年 4 月から 2016 年 10 月までに行われた、145 症例から得られた1348 個の成熟卵子に対するICSIについて分析された報告です。従来のICSIとピエゾICSIの臨床成績が比較検討されています。ICSI後の卵子生存率は、従来型ICSIが94.1%、ピエゾICSIが97.0%で、受精率は従来型ICSIで70.6%、ピエゾICSIで83.5%であり、いずれもピエゾICSIが有意に高率でした。分割率、5日目胚盤胞形成率、妊娠率、流産率、出生率に関しては、従来型ICSIとピエゾICSIに有意差はありませんでした。この論文の著者は、従来型ICSIでは、スパイク付きピペットが卵細胞の周りを囲む透明帯を通過するときに透明帯が突然切れてしまい、ピペットで卵子を変形させてしまう、または透明帯が非常に貫通しにくい場合にも卵子を極端に変形させてしまうことがあったと述べています。また、従来型ICSIでは卵細胞膜が硬い場合には膜を確実に破ることが難しく、これらのような胚培養士の努力と技術では克服できない問題を解決するためにピエゾICSIを導入したとのことです。それ以外にも、精子の不動化(ICSIで卵子に入れる精子はあらかじめ動かなくしておく必要があります)は、従来型ICSIではピペットを精子尾部に擦り付けて傷をつける方法であるのに対し、ピエゾICSIではピエゾパルスを精子尾部に当てることで不動化することができ、この違いが受精率の差に影響した可能性があると述べられています。結論として、ピエゾICSIはICSI後の卵子生存率と受精率を有意に向上させることが示されました。当院でも2010年よりピエゾICSIを導入し、2016年からは顕微授精全例でピエゾICSIを行っています。以前からピエゾICSIは卵子への物理的負荷が小さく、良好な受精成績が得られる可能性があると言われてきましたが、紹介した論文のようにそれを裏付けるデータも出てきています。よりよい受精・培養成績を当院の患者様に提供できるよう、当培養室も技術の研鑽と最新報告の読み込みを行っていきます。(当院で行ったピエゾICSIの動画)

  • 15Jun
    • 多核割球が胚発生能、形態動態、および異数性に及ぼす影響の画像

      多核割球が胚発生能、形態動態、および異数性に及ぼす影響

      今回ご紹介する論文は多核についてです。多核とは、通常割球の中に1つあるはずの核が2つ以上みられるもののことを指します。主な原因は染色体の不分離によるものとされており、染色体数への異常が考えられます。ちなみに今回ご紹介させていただく2細胞期多核と受精後の多核との違いは2細胞期多核の方は正常な受精を経ていますが、受精後の多核は異常受精によるものです。今回の論文では異数性率、胚発生能、妊娠結果に多核がどのように影響しているかを検討しています。本論文では、296周期でタイムラプスにより評価された2,441個の胚のうち、合計1055個(43.2%)が2細胞期で多核でした。(1割球のみ多核:606個、2割球とも多核:449個)4細胞期での多核胚は357個と多核形成率が大幅に低下しました。(15.0%)これは2細胞期から4細胞期の間で核の自己修正が行われていることを示唆しています。患者因子での解析では患者年齢のみが2細胞期の多核形成の頻度に影響を与え、35歳以下よりも40歳以上の方で多核形成率が有意に高かったです。分裂時間の解析では2細胞期多核の正倍数性胚と多核でない正倍数性胚を比較して、多核胚で5細胞期になるまでの平均時間が有意に長くなっていました。胚盤胞に到達した607個の胚をPGS(着床前遺伝子スクリーニング)による解析をかけたところ、正倍数胚302個(49.8%)、異数性胚(染色体全体が影響を受けた)205個(33.8%)、分節異数性胚(一部の染色体が影響を受けた)83個(13.6%)でした。正倍数性胚、異数性胚、分節異数性胚の2細胞期多核率はそれぞれ40.7%、46.7%、36.1%で有意差は認められませんでした。妊娠率は2細胞期多核正倍数性胚で45.8%、非2細胞期多核正倍数性胚で51.1%でした。この論文により正倍数性胚盤胞、異数性胚盤胞ともに同程度の2細胞期多核が見られることが分かりました。これは正倍数性の予測の指標として多核の有無を用いることは適切でないことになります。また多核胚は初期の分裂時に自己修復する能力があり、正常胚盤胞へと発達すれば多核が見られなかった胚と遜色ない妊娠率があることがわかりました。当院でも以前に多核胚をNGSにより染色体解析した報告をしています。(NGSを用いた染色体解析における多核胚の評価)こちらの結果も多核の原因が必ずしも染色体異常にあるものではないと示されています。参考文献:Impact of multinucleated blastomeres on embryo developmental competence, morphokinetics, and aneuploidy Fertility Steril 2016;106,608-614

  • 14May
    • 着床前診断(PGT-A)は費用対効果が高く治療時間を短縮し胚移植の不成功や流産のリスクを削減するの画像

      着床前診断(PGT-A)は費用対効果が高く治療時間を短縮し胚移植の不成功や流産のリスクを削減する

      今回ご紹介する論文はPGT-Aの費用対効果についてです。PGT-Aは通常のIVF費用に加えて検査費用がかかり、費用は国や施設によりさまざまです。本論文ではPGT-Aを受ける上でどれだけの費用対効果があり、どのような条件がより恩恵を受けやすいのかを調査しています。対象は8,998人の患者で、採卵時年齢は36.0±4.3歳でした。PGT-A後、正倍数性胚の単一胚移植を行ったグループとPGT-Aを行っていない胚の単一胚移植を行ったグループを比較しています。以下の表は本論文で解析モデル作成時に使用した仮想の確率およびIVFとPGT-A関連の費用です。D&C:内膜掻把術PGT-Aできる胚が一つしかない場合はかえってコストがかかってしまい、二つ以上の胚をもつ患者は移植可能な胚の数に応じてPGT-Aの利用により、931~2,411ドルの費用を削減しました。このコスト削減は全年齢層で確認できましたが、コスト削減の程度は年齢によりさまざまで38歳以上はより大きく、35歳未満は小さかったことが分かりました。特に35歳未満で移植可能な胚を8個以上持つ患者はコスト削減の恩恵を受けていませんでした。PGT-Aを利用する場合のコストの違い。PGT-Aは胚が1つしかない患者には費用対効果が高くありません。複数の胚がある患者の場合、PGT-Aにより931~2,411ドルの範囲のコスト削減が実現します。Neal. Preimplantation genetic testing cost. Fertil Steril 2018.治療時間の短縮については、移植可能な胚の数を2つ以上持っている方がより効果が大きく、最大で4カ月短縮しました。どちらのグループも治療あたりの累計出生率は同じでしたが、PGT-Aを併用したIVFは移植の総数、流産、胚移植の不成功が減少し、PGT-Aを利用しなかったグループは出産、または胚を使い切るまでに約2倍の移植数が必要でした。IVF/PGT-Aでの採卵から胚移植による出生または、胚を使い切るまでにかかる平均時間はIVF単独と比較すると治療時間を短縮しました。胚を2つ以上もつ患者の場合、PGT-Aは3ヶ月以上治療時間を短縮します。Neal. Preimplantation genetic testing cost. Fertil Steril 2018.本論文では主にPGT-Aなしのグループで、利用可能な胚を移植する前に治療をやめてしまった患者(両方のグループで採卵当たりの出生率は同じという仮定が前提のため、治療の途中放棄は出生率の減少につながる)や、PGT-Aを利用して第一子を出産し、その後移植可能胚がある状態で第二子希望の患者(PGT-Aに関する追加費用なしで移植に臨めるため)は含まれていません。また解析モデル構築の際に考慮しなかった費用があり、完全に現実通りというわけではありません。しかし、費用削減効果を除いても治療時間の短縮、流産や胚移植不成功の回数を大きく減らせることは、患者の精神的負担の軽減につながります。本記事がPGT-Aの導入を考えている方の一助になればと考えます。参考文献:Preimplantation genetic testing for aneuploidy is cost-effective, shortens treatment time, and reduces the risk of failed embryo transfer and clinical miscarriage

  • 30Apr
    • 桑実胚期に空胞を形成した胚盤胞が妊娠結果に及ぼす影響

      桑実胚期に空胞を形成した胚盤胞が妊娠結果に及ぼす影響という論文を読みましたので、ご紹介します。空胞とは、液体で満たされている球状の膜結合細胞質封入体です。細胞質内封入体は、細胞質内精子注入(ICSI)中に人工的に生成されることがありますが、大部分の空胞は自然発生します。空胞の大きさは様々で、直径が小さいほど消失する可能性が高いですが、大きな空胞や多数の空胞は、分割時に融合する傾向を示します。この論文は、2016年3月から12月までに顕微授精を受けた424人の患者(平均年齢32.8±5.5歳)を対象にして、4日目の桑実胚期の空胞形成の有無が、胚盤胞発生率や妊娠率にどのような影響を及ぼすか分析しています。また、プロトコールは75%がGnRH antagonist 法、25%がGnRH agonist(Long)法で、移植は、単一胚盤胞移植を行っています。まず、ICSI後の4日目の桑実胚期の空胞形成の有無で患者を3つのグループに分けました。4日目の全ての桑実胚に空胞形成が有る患者をA群、4日目の全ての桑実胚に空胞形成が無い患者をB群、4日目の桑実胚に空胞形成有りの胚と空胞形成無しの胚が混合している患者をC群としました。結果は、A群はB群やC群と比較して、5日目の胚盤胞発生率が低下しており、良好胚盤胞も有意に少ないということが分かりました。更に、A群は、妊娠率及び生児獲得率もB群やC群と比較して有意に低いという結果になりました。以上の結果から、空胞の数と大きさは、胚の発生に有害である可能性が非常に高いと考えられます。大きな空胞は紡錘体の位置をずらすことがあるため、受精障害や分割異常を起こしてしまうと考えられます。特に、中央にある空胞の近くに注入された精子が存在すると、精子頭部の脱凝縮を防いでしまい、受精に影響を及ぼしてしまうことが分かっています。更に、胚の空胞化による細胞質量の減少によって、胚盤胞の細胞数が減少してしまう可能性があります。4日目の桑実胚期に結合の緩い割球接触を示す胚は、細胞質を分極できないため、割球の代わりに空胞を産生することが示唆されています。また、形成された空胞の内容については、この論文では研究されていませんでした。しかし、この研究の症例数は比較的少ないため、より多くの症例数の追加報告を期待します。【参考文献】Good-quality blastocysts derived from vacuolized morulas show reduced viabilityFertility and Sterility; 109, Issue6, 1025-1029, 2018

  • 25Mar
    • 治療で辛かったことは何ですか?(患者様アンケート)の画像

      治療で辛かったことは何ですか?(患者様アンケート)

      治療が終了した126名の患者様に、今までの治療を振り返ってアンケートに答えていただきました。治療中どのように感じていたか、どういうことが大変だったかなどこれからART治療を受けられる方にとって参考になるのではないかと思います。その中で『治療で辛かったこと』について今回取り上げていきたいと思います。『治療で辛かったこと』第1位は注射・採血について、第2位は治療による痛み、第3位は時間の確保についてでした。細かく見ていきたいと思います。注射・採卵について、■ 元々注射が苦手■ 筋肉注射が痛い■ 注射・採血が続くこと があげられました。治療を受ける上で排卵誘発剤の注射、ホルモン値測定のための採血は避けては通れませんので難しい問題です。治療による痛みについて、■ 採卵中に麻酔が効かず痛かった■ 採卵後にお腹がはって痛かった麻酔の効き方には個人差がありますので、痛みを感じやすい方もいらっしゃいます。難しいかもしれませんが、緊張を解くためにあまり力まず、ゆっくり深呼吸してリラックスした状態で受けられるといいと思います。採卵後にお腹がはってしまった場合、体を動かすと炎症が酷くなってしまうので、できる限り安静に過ごし、炎症を抑えることが大事です。時間について■ 仕事との両立が難しかった■ プライベートとの時間のやりくりが大変だったART治療では、おひとりおひとりの体にあわせて行っていく治療なので、はっきりとしたスケジュールがどうしても組めません。急にこの日に来てくださいと言われたけど仕事を休めなかった、また第二子希望の方では子供を預けられず指定された時間に来れなかったなど治療を進めていく上で時間の調整についてはとても難しい問題であることがわかりました。多かった意見は以上です。この貴重なご意見を元に、当院でも何か改善できることはないか考えていきたいと思います。

  • 21Mar
    • PGT-A 解析に伴って加温、生検、再凍結された凍結胚盤胞の生存率、生検、倍数性、及び妊娠率

      PGT-A解析を行う際の融解、生検、再凍結が胚盤胞に与える影響を調べた学会発表をご紹介します。PGT-A解析と移植の手順は① 胚盤胞まで培養② TE(栄養芽細胞)を採取し、凍結③ 融解して移植になります。しかし、すでに凍結してある胚盤胞をPGT-A解析、移植を行うには① 凍結されている胚盤胞を融解② TEを採取③ 再凍結④ 融解して移植というプロセスになり、融解と凍結がそれぞれ1回ずつ増えます。*一般には凍結、融解を繰り返すと胚にダメージが残るとされています。本報告ではPGT-Aを行うために以前凍結された胚盤胞を融解、生検、再凍結を行うことで胚の生検、倍数性(染色体数の異常)、妊娠率に影響がないか調べています。融解された胚盤胞(n=61)の90%が生検され(n=55)、その全てからゲノム情報が得られました。脱出胚盤胞(HB)、拡張胚盤胞(EXPB)、早期胚盤胞(EB)のそれぞれ胚のグレード評価別にデータを集計しました。その結果、胚のグレードと生検率、倍数性は相関関係がみられました。妊娠率は67%でした。【融解/生検/再凍結後の胚盤胞の結果】 発達段階-グレード 融解胚数 生検胚数 生検率 正常遺伝子胚数 正常遺伝子率 脱出胚盤胞-Good 18 18 100.00% 13 72.22% 脱出胚盤胞‐Fair 16 16 100.00% 9 56.25% 脱出胚盤胞‐Poor 3 1 33.33% 0 0.00% 拡張胚盤胞‐Good 16 16 100.00% 8 50.00% 拡張胚盤胞‐Fair 7 3 42.86% 1 33.33% 早期胚盤胞‐Fair 1 1 100.00% 1 100.00% Total 61 55 90.16% 32 58.18% このことより、胚盤胞のグレード評価は生検される胚の正倍数性を予測する最も良い方法であることが示されました。また質の悪い胚は追加培養しても生検できないか、解析の結果が異数性(染色体数が異常)でした。融解胚移植に先立って融解/生検/再凍結を行った正倍数胚でGoodまたはFairの評価の胚の妊娠率(n=67%)が事前にPGT-Aを行い融解胚移植された正倍数胚の妊娠率(n=69%)と同等のデータが得られました。このことより、正倍数性の良好凍結胚盤胞を融解/生検/再凍結することは有害ではないことが示され、2度の凍結と融解に伴う懸念が軽減されると推測されました。今回の報告により良好な胚盤胞であれば融解/生検/再凍結しても胚生検、倍数性、妊娠率に影響がないことが示されました。しかし、本報告ではまだデータ数が少ない項目があるため、より症例数の多い検討に期待します。参考文献:The survival, ploidy and pregnancy rates of previously vitrified blastocysts subjected to warming/biopsy/revitrification for PGT-A analysis.

  • 10Mar
    • 形態運動異常を伴う胚は、正倍数の胚盤胞に発生する可能性がある

      形態運動異常を伴う胚は、正倍数の胚盤胞に発生する可能性があるという論文を読みましたので、ご紹介します。この論文は、イタリアで2013年5月から2015年1月までに、着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)を受けた26~48歳の141人の患者から得られた791個の胚を形態動態学的に分析しています。重度の男性因子、高齢の女性、原因不明の反復流産、着床不全を繰り返した患者がPGT-Aを受けました。分析結果は、791個の胚の中で、111個の胚が細胞分裂異常を示しました。内訳は、1~3個へ直接分割が24個、5時間以内に1~3個へ急速分割が12個、2細胞から5細胞への分割が26個、2個の細胞が融合してしまう逆分割が20個、異常に延長した(4時間以上)3細胞から4細胞への分割が29個となりました。細胞分裂異常を示した胚は、35歳未満の女性が15%、35歳から39歳までの女性が13%、39歳以上の女性が14.3%という結果になり、細胞分裂異常は年齢と関係しないことが分かりました。更に、細胞分裂異常をA群とした111個の胚のうち24個(21.6%)は移植可能胚盤胞へと発生しました。また、正常に細胞分裂した胚をB群とした680個の胚のうち252個(37.1%)が移植可能胚盤胞となったので、各々染色体解析を行いました。A群では、24個のうち18個(75%)、B群では、252個のうち124個(49.2%)が正倍数胚盤胞という結果になりました。A群とB群の間で染色体的に正常な胚盤胞の数に差が認められ、A群の方が正倍数体胚盤胞の割合が有意に高いことが分かりました。細胞分裂異常を示した胚盤胞の方が正倍数体の率が高いという結果について、論文中では明確な説明は出来ないとしていますが、正倍数体胚盤胞に発達した細胞分裂異常胚は、桑実胚期の圧縮過程の間に、異常な細胞を排除することによって、受精後発育の過程で起こるとされるモザイク異数性から胚を救済し、胚盤胞に発生するための修正機能が働いていると推定されると述べられています。当院でもタイムラプスインキュベーターでの培養を行っており、受精後の分割速度や細胞分裂パターンを観察し、胚の質を正確に評価して、良好胚の凍結を行っています。参考文献:Embryos with morphokinetic abnormalities may develop into euploid        blastocysts.(Lagalla et al., RBM Online 2017)

  • 27Feb
    • PGT(着床前診断)と凍結胚移植はIVF患者の早産を相乗的に減少させる

      今回は、「PGT(着床前診断)と凍結胚移植はIVF患者の早産を相乗的に減少させる」という学会発表をご紹介させていただきます。選択的単一胚移植を行ったIVF患者に妊娠結果からPGTの効果を研究したものです。SART National Summary Report 2014-2016のデータを利用し、後方視的に解析しました。データに含まれた基準はeSET(選択的単一胚移植)で、ET(新鮮胚移植)、PGT/FET(PGTを行った凍結胚移植)、FET(PGTを行っていない凍結胚移植)に分類しました(代理母、ドナー卵は除外)。妊娠結果を正期産(妊娠期間37週以上)、早産(妊娠期間32-37週)、超早産(32週未満)で分類しました。 No PGT PGT Fresh embryo Frozen embryo   transfer(ET) transfer(FET)   PGT/FET 単一胚移植数 31670 39228 33256 移植あたりの出産率 47.0%*a 42.5%*a 52.2%*a 正期産率 88.6% 89.3% 89.9% 早産率 9.4%*b 8.8%*c 8.5%*b,*c 超早産率 2.0%*b 1.8%*c   1.5%*b,*c 31760症例のET、39228症例のFET、33256症例のPGT/FETを含む全部で104154症例を解析しました。PGT/FETの出生率52.2%でETの47.0%、FETの42.5%と比べて有意に高くなりました。(*a)PGT/FETはETと比較して早産・超早産が顕著に減少しました。(*b:P<0.0001)同様にPGT/FETはFETと比較して早産・超早産は顕著に減少しました。(*c:P=0.02)現在PGTはIVF治療で最も重要な役割の1つになっています。SARTの膨大なデータを用いた本研究ではPGTがIVF結果にとても重要であることが実証されました。本報告によりPGT-Aを行うことで、出生率の上昇だけでなく早産に対しても効果があることが分かりました。当クリニックはPGT-A多施設共同臨床研究施設に承認されています。詳細はこちらから(日本産科婦人科学会PGT-A多施設共同臨床研究への参加が承認されました)日本産婦人科学会では「早産とは正期産より前の出産のことであり、正期産とは妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産のことをいいます。日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます。妊娠22週未満の出産は流産といい、早産とは区別されます。」となっており、本報告の早産の定義とは異なります。参考文献:Preimplantation genetic testing(PGT) and frozen embryo transfer (FET) synergistically decrease pre-term delivery in patients undergoing in vitro fertilization(IVF).

  • 23Jan
    • 第25回日本臨床エンブリオロジスト学会に参加しましたの画像

      第25回日本臨床エンブリオロジスト学会に参加しました

      2020年1月12日、東京・赤坂で行われた第25回日本臨床エンブリオロジスト学会に参加しました。この学会は胚培養士(エンブリオロジスト)が中心になって行われる国内唯一の学会で、例年2日間にわたって行われ、初日は胚培養士の技術・知識向上のためのワークショップとセミナー、2日目は学術集会とシンポジウムが行われています。全体を通して、タイムラプスインキュベータに関するシンポジウムや発表が多く見られました(タイムラプスインキュベータ: 内部に顕微鏡とカメラが設置されており、10~15分間隔で受精卵の写真を撮影し続けることにより、受精卵を外部環境に出すことなく観察することが可能な培養器)。国内にタイムラプスインキュベータが導入されてから約9年になりますが、いまだホットな話題であると感じました。特に受精卵の培養初期の分割状態による良好胚の選別や、AIによる良好胚の選別(まだ発展途上だとは感じましたが)といった発表が目を引きました。当クリニックでも2012年からタイムラプスインキュベータを導入・臨床使用しており、培養環境の向上や、より良好な移植胚の選別が可能になっていると考えています。

  • 28Dec
    • 日本産科婦人科学会PGT-A多施設共同臨床研究への参加が承認されましたの画像

      日本産科婦人科学会PGT-A多施設共同臨床研究への参加が承認されました

      日本産科婦人科学会PGT-A多施設共同臨床研究についてこの度当院は、日本産科婦人科学会より、R1年12月26日付けにてPGT-A多施設共同臨床研究への参加が承認されました。着床前診断とはPGT-SR、PGT-M、PGT-Aと分類されています。その中で、今回実施される臨床研究はPGT-A(着床前染色体異数性診断)です。 着床前診断の種類 対象・目的 PGT-A (着床前染色体異数性診断) 受精卵の染色体の数の異常がないかをみる 採卵後胚盤胞培養し、 TE生検 体外で受精させた胚の一部をとって検査します。 培養し始めてから5日目または6日目になると図のような胚盤胞と呼ばれる段階まで育ってきます。 この胚盤胞の外側の細胞の一部をとって検査します。 適応基準 反復不成功 直近の胚移植で2回以上連続して臨床妊娠が成立していない 習慣流産(反復流産) 直近の妊娠で臨床的流産を2回以上反復し、流産時の臨床情報が得られている 染色体構造異常 夫婦いずれかが染色体構造異常を持つ ※適応基準の詳細・費用については説明が必要ですのでご来院ください着床前診断をご希望の方はお問合せください。

  • 13Dec
    • 精子の酸化ストレスによるDNA損傷の画像

      精子の酸化ストレスによるDNA損傷

      今回ご紹介するのは精子の酸化ストレスによるDNA損傷についてです。方法正常な精液所見の男性8名、男性不妊外来を受診している14名の精子に酸化ストレスを与え、DNAの損傷の程度を検査しました。結果サイズが150~1000bpの約9000のゲノム領域に損傷を受けやすいことが認められました。特に15番染色体が酸化ストレスに敏感であり、性染色体は影響を受けていませんでした。今回酸化ストレスを受けやすかった領域はプロタミンとヒストンに収容されている外側でした。さらにこれらの影響を受けやすい部位は正常な人と比較して、男性不妊の患者さんのDNA損傷は2~15倍増加したことが確認されました。プロタミン、ヒストンとはヒストンとは上図のようにDNAを巻き取って保護しているタンパクです。プロタミンは精子にみられるタンパクで作用はヒストンと同様です。DNAはほどけている状態で反応しやすくなるため、普段はヒストンやプロタミンといったタンパクで解けづらくして保護されています。昨今話題に上がっている精子酸化ストレスについての論文です。本論文から酸化ストレスによる精子のDNA損傷は特定の染色体、プロタミンやヒストンで保護されていない部位に認められることが示唆されました。染色体は大きいダメージを受けると流産や発生早期の消失の原因になります。ただし本論文ではデータの数が少なすぎるため、より多くの集団での検討が待たれます。参考文献:Paternal impacts on development:identification of genomic regions vulnerable to oxidative DNA damage in human spermatozoa

  • 22Nov
    • 帯広畜産大学のセミナー企画で講演を行いましたの画像

      帯広畜産大学のセミナー企画で講演を行いました

      2019年11月2日、帯広畜産大学の講演企画「Rチャットカフェ」に当クリニックの胚培養士が招かれ、講演を行いました。畜産技術と不妊治療は歴史的に深い関わりがあり、また近年では動物や畜産分野の大学から胚培養士になる学生も多いため、「胚培養士って何をしてるの? どんな人がなるの? 〜畜産とヒト不妊治療のつながり〜」と題して講演しました。内容としては、胚培養士の業務、畜産技術とヒト不妊治療との関わりの歴史、また、詳しいラボワークのひとつとしてタイムラプスインキュベータによる培養技術についてお話しました。講演企画には帯広畜産大学の学生さん達のほか、不妊治療クリニックのスタッフの皆様、ウシやウマの獣医師の先生方も来られており、講演後の質問時間にも多くの質問をお受けしました。また、学生さんの一人からは胚培養士として就職したくなったとの声も頂きました。

  • 21Nov
    • 生殖医学会へ行ってきました ②の画像

      生殖医学会へ行ってきました ②

      第64回日本生殖医学会に参加しました。さまざまな興味深い演題のなか、当院も演題発表を行いました。口頭発表1: NGS 解析データより胚移植順位の基準を再構築する口頭発表2:精子因子が異数性に与える影響ポスター発表1: 凍結融解胚移植において異数胚を避けるための条件ポスター発表2: NGS 分析を用いた胚発育の後方視的解析論文はこちらから今回演題発表をした中で、「精子因子が異数性に与える影響について」で再検討の結果、抄録と異なる点がありましたのでこちらのブログにて簡単にご紹介します。【目的】受精卵の発育停止や、発生不良の原因として卵子因子だけでなく精子因子の影響も考えられます。今回、研究同意を得られた廃棄胚盤胞を解析して、胚の媒精時の精液所見から精子因子が染色体の異常に関与しているかを検討しました。【方法】精液所見をWHOによる精液検査の下限値基準を用いて精子濃度:15×10⁶/ml以上 or 未満運動率:40%以上 or 未満 で分類して検討を行いました。【結果】精子濃度、運動率ともに有意な差はみられませんでした。バックグラウンドは妻年齢以外有意な差はみられませんでした。【結論】これらから精子濃度、運動率が受精卵の染色体異常の原因になる可能性が低いことが示唆されました。この演題ではこのような結果となりましたが、精子が受精卵に与える影響は十分に考えられます。そこで、現在精子側で話題にあがっているのが「精子の酸化ストレス」についてです。精子の酸化ストレスを簡便に計測可能な測定器が販売されたことにより、これらの論文も増えると考えます。精子がストレスを受けるとDNAが断片化するという説があります。精子のDNA断片化が胚発生に与える影響は過去の記事で掲載されています。(こちらから)今後の精子酸化ストレスへの動きに注目です。

  • 19Nov
    • 生殖医学会へ行ってきましたの画像

      生殖医学会へ行ってきました

      11月7.8日に神戸市で開催された第64回日本生殖医学会に参加してきました。当院も口頭演題、ポスター演題共に2題ずつ発表を行ないました。今回の演題の中で、当院でも採用している培養dishのID識別ラベルについて安全性を検討した発表を紹介します。(培養dishのID識別に用いられる素材の安全性評価試験:山下湘南夢クリニック)培養dishには氏名とIDバーコードなどが組み込まれたラベルシールを貼って個人識別をするクリニックが多くあります。そのうち一部のラベルシールがマウス胚の発生を阻害していることをこちらのクリニックでは過去に報告しています。その報告を元に開発された胚発育を阻害するガスを出しにくい加工をした低アウトガスラベルと、色鉛筆、ノンキシレンマーカー3種類を培養dishの蓋裏全面に添付して、マウス胚発育に影響があるか検討しました。胚分割率は全ての群で100%でしたが、胚盤胞発生率において色鉛筆は有意に低下し、ノンキシレンマーカーに至っては発生率0%という結果となりました。通常では蓋の裏側にラベルを貼ったり、文字を書いたりすることはないのでその辺りが少し結果に影響を与えている可能性もあります。しかし、胚盤胞発生率が有意に低下していることから、培養dishに用いるラベル等些細な所まで気を配る必要があると改めて感じました。当院では、この低アウトガスラベルを使用して2人1組で氏名のダブルチェックと、バーコードリーダーによりIDを確認して個人識別をしています。

  • 31Oct
    • 男性の睡眠時間の長さと受精能力の関係について

      男性の睡眠時間の長さと受精能力の関係についての論文を読みましたので、ご紹介します。この論文は、2013年から2017年の間に、21歳以上の男性であり、21歳から45歳の女性のパートナーがいる1176組を対象として、男性は平均睡眠時間、女性は妊娠しているかどうかの調査を8週ごとに12ヵ月間行い、評価を行っています。また、調査時に6ヵ月間の妊娠を試みていた夫婦を対象としています。この研究から、男性の平均睡眠時間は7時間が最も多く、次に6時間、8時間、6時間以内、9時間以上という順の結果になりました。8時間の睡眠時間を基準とした場合、睡眠時間が6時間以内の男性と妊娠率を比較すると、睡眠時間が6時間以内の男性の方がより妊娠率が低いという結果になりました。一方、睡眠時間が8時間の男性と6時間、7時間の男性の妊娠率を比較した結果、有意な差は認められませんでした。睡眠障害による中途覚醒が2週間の内に7日以上あった男性は睡眠時間が8時間の男性と比較すると、妊娠率は低くなっていましたが、有意な差は認められませんでした。男性は、睡眠中に精巣から精子の形成を促すホルモンであるテストステロンが多く分泌されます。男性の短い睡眠時間(6時間以内)は、テストステロンの分泌が減少してしまうため、精子の数の減少や質が悪くなってしまい、受精能力の低下に影響を与えているということが考えられます。以上より、睡眠時間は7時間から8時間が良いと考えられます。【参考文献】Male sleep duration and fecundability in a North American preconception cohort studyFertility and Sterility; 109, Issue 3, 453–459, 2018

  • 13Sep
    • ERA・EMMA・ALICE各検査導入のお知らせの画像

      ERA・EMMA・ALICE各検査導入のお知らせ

      ERA(エラ・子宮内膜着床能検査)は、胚の子宮内膜への着床能を評価する診断技術です。これにより「最も着床に適したタイミング」での移植ができるようになります。患者様個人の「着床ウィンドウ」の時期を特定し、それにより患者様に適した時期に胚移植が行えます。検査周期では移植は行わず、検査のみを行いますが、実際の移植周期と同様に内服薬や貼付薬を使用します。移植は結果が判明した以降の周期で行います。結果が判明するまで2~3週間要します。(患者様10人の内3-4人は着床ウィンドウの時期がずれています。ずれがとても大きい場合は、2回目の検査が必要となります。)検査周期とまったく同様の方法で移植する必要があるため、他院で検査した結果を持ち込まれても当院でそれを再現することは難しくなりますので、その点はご了承下さい。(アイジェノミクス・ジャパン資料より引用)EMMA(エマ・子宮内膜細菌叢検査)は子宮内膜の細菌の種類と量を測定し、そのバランスが正常かどうか調べます。子宮内膜の乳酸菌の割合は着床・妊娠率に関係があるとされ、子宮内環境を改善することにより、着床・妊娠率の向上が期待できます。ALICE(アリス・感染性慢性子宮内膜炎検査)は、不妊症・不育症の一つの原因となっている慢性子宮内膜炎を引き起こす細菌を調べます。 (習慣流産や着床不全患者では66%が罹患していると言われています)当院ではERA・EMMA・ALICE 3つの検査を同時に行います(別々でも行えます)。希望される方はお申し出ください。料金はERA検査のみは130,000円+消費税、ERA・EMMA・ALICE同時検査で170,000円+消費税です。

  • 09Sep
    • 男性因子とモザイク:ICSIサイクルでのPGSで精液所見が異常な場合の影響について

      今回ご紹介する論文は“男性因子がモザイク胚に与える影響について”ですはじめにモザイク胚とは・・・胚生検によって得られた細胞を解析した結果、染色体数が正常なものと異常なものが混在した胚のことです。正常な胚よりも妊娠率の低下、流産率の上昇がみられます。モザイク胚の判定は胚生検による解析で分かります。PGSとは・・・現在のPGT-Aであり、現在日本では認可されておりません。染色体数に異常がないかを確認するテストです。論文の内容についてです方法:ICSIを施行された5日目、6日目の胚を生検して解析しました。解析結果を精子数が少ない人と正常な人、運動精子数が少ない人と正常な人、精子数、運動精子数共に少ない人と正常な人のグループに分け、それぞれを比較しました。結果:精子数が少ない人(36/106、34%)は正常な人(115/617、18.6%)よりも高い割合でモザイク胚になることが分かりました。精子数と運動精子数がともに少ない人(15/38、39.5%)は正常な人(88/384、18.6%)よりも高い割合でモザイク胚になることが分かりました。この結果から、異常な胚は卵子だけでなく精子因子の影響も大きいことが分かりました。これにより特に精液所見が悪い症例のICSI時における精子の選別や調整により一層重要性が増したと考えます。当院でも精子の調整、選別方法に試行錯誤しています。現在、精子調整は高アルカリ性の調整液を使用しています。高いアルカリ性の環境下では精子の運動性の上昇が認められ、従来法より妊娠率の上昇が認められました。またICSI時の精子選別は運動性が良い精子を選ぶだけでなく、成熟した精子を選別するためにヒアルロン酸を添加したメディウムを使用し、従来よりも高倍率で精子の形態を判別するようにしています。参考文献:Male factor & mosaicism: Assessing the contribution of abnormal semen parameters to rate of mosaicism in next generation sequencing (NGS) preimplantation genetic screening (PGS) intracytoplasmic sperm injection (ICSI) cycles.

  • 09Aug
    • 受精着床学会に行ってきました

      2019年8月1日~2日に東京で行われた第37回日本受精着床学会に行ってきました。多くの演題が発表された中で、一番興味をひかれた“MⅡへ成熟するタイミングが受精、胚発育に及ぼす影響(永井マザーズホスピタル)”という演題をご紹介していきたいと思います。この研究は、採卵した際の卵子の中のMⅡやMⅠにそれぞれの成熟度合いごとにc-IVFを行い、受精率や胚発育の比較を行いました。MⅠ卵子とは、第一極体が確認できない卵であり、MⅡ卵子とは、第一極体が確認できる卵子を指します。今回は、採卵直後にMⅡの卵子をA群、採卵後4時間でMⅡになった卵子をB群、採卵直後と採卵後4時間の観察でも第一極体が確認できなかった卵子をC群としました。更に、A群・B群には、MⅡ確認から3時間後に媒精を行い、C群にはMⅡは確認できていないが、採卵から8時間後に媒精を行いました。2PN率・有効胚利用率は、A群やB群に有意差は認められませんでしたが、C群は、A群やB群に比べて低いという結果が得られました。臨床妊娠率・生産率は、A群やB群に有意差は認められませんでした。C群は10例の胚移植のうち、1例のみ妊娠まで至りました。以上から、採卵時にMⅠであったとしても、その後4時間以内にMⅡに成熟した卵子は有用であるということが考えられます。当院でも、採卵後第一極体が確認できないMⅠ卵子を2~4時間培養を行い、第一極体の確認を行っています。

  • 02Aug
    • 中部生殖医学会に行ってきました

      6月15日(土)に愛知医科大学で行われた第41回中部生殖医学会に行ってきました。当院でも演題の発表を行いました。抄録はこちらから(凍結胚移植における胚発育と移植のタイミングとの関連)数ある演題の中から今回ご紹介するのは「ICタグシステムにおけるARTの安全性向上と作業効率化に対する取り組み」という発表です。ARTでは配偶子の取り違え防止のため、ダブルチェックが義務付けられています。しかしダブルチェックも作業量の増加などによって確認する側が無意識に行ってしまうことがあり、確実とは言えません。そこで最近では人だけでなく器械によるチェックを加えることで取り違え発生を防止する施設が増えてきています。今回演題発表された病院で導入されたのはICタグを用いたシステムでした。従来のバーコードを用いたシステムと違い、ICタグが貼られた容器を作業エリアに持ち込むだけで自動的にスキャンされるため、わざわざバーコードリーダーでスキャンする必要がなく迅速に作業を開始できます。また作業内容は施行者ごとに自動で記録されているため作業工程の調査も容易であるという内容でした。質疑ではICタグシステムはラジオ波を用いているが卵子への影響はないのかという質問が挙がりました。これに対する回答は、ラジオ波がもつエネルギーは大きくないため、そこまで影響は大きくないそうです。一方、デメリットは導入時のコストは当然ですが、大きなランニングコストがかかります。従来のバーコードタイプはシール1枚あたり5円程度かかりますが、ICタグは一つあたり300円程度かかるため、採卵一回あたり約3000円コストアップしてしまうことが挙げられました。当院での取り違え防止に対する取り組みとして、バーコードによるシステムを導入しています。ダブルチェックを人だけでなく、バーコードを用いたシステムによるチェックを加えて、取り違え発生を未然に防いでいます。

  • 19Jul
    • 母親の全粒穀物摂取量による体外受精結果

      母親の全粒穀物摂取量による体外受精結果に関する論文を読みましたので、ご紹介します。この論文は、2007年から2014年までの間に体外受精を受けた273人の女性(平均年齢35.4歳、BMI 24.2kg /m²)に食物摂取頻度アンケートを行い、結果から全粒穀物摂取量を分析し、評価を行っています。この研究では、全粒小麦及び全粒小麦粉、全粒オート麦及び全粒オート麦粉、全粒コーンミール及び全粒コーンミール粉、全粒大麦、そば、玄米米粉、ポップコーンを全粒穀物とみなされました。アンケートを分析した結果、全粒穀物摂取量の中央値は、1日当たり34.2g(約1.2杯/日)となりました。全粒穀物摂取量は、成熟卵母細胞の回収量、受精率、受精胚の数、胚の質とは関連していませんでした。移植を行う際、子宮内膜は8mmを超えていることで着床しやすくなります。今回の研究では、移植を行う際の子宮内膜の厚さについて注目していました。子宮内膜の厚さが移植を行える厚さまで到達しているか比較したところ、全粒穀物を多く摂取している女性(>52.4g/日)は70%、全粒穀物をあまり摂取していない女性(21.4g/日未満)は51%という結果になり、全粒穀物を多く摂取している女性の方が子宮内膜が移植を行える厚さまで到達している割合が高いということが分かりました。更に、全粒穀物摂取量と移植当日の子宮内膜の厚さを比較分析したところ、1日平均の全粒穀物摂取量34.2gから更に28g/日多く食べると、子宮内膜の厚さが0.4mm厚くなっていたことが分かりました。以上より、全粒穀物摂取量が多いほど移植の日における子宮内膜厚が増加し、着床の可能性が高くなるということが分かりました。また、全粒穀物には、食物繊維、ビタミンBやナイアシンなどのビタミン類、鉄、銅、マグネシウム、リン、亜鉛などのミネラルが豊富に含まれていて、更に、心臓血管疾患、がん、2型糖尿病、呼吸器疾患、肥満などの予防に有益であると認められています。治療を始める際に、全粒穀物を取り入れてみてはいかがでしょうか。【参考文献】Maternal whole grain intake and outcomes of in vitro fertilizationFertility and Sterility; 105, Issue6, 1503-1510, 2016