リバース分割とは、下図のように分割したはずの割球が融合する現象です。

割球が融合することによる染色体数の異常が懸念されます。

 

 

このリバース分割胚はその後の胚発育が不良と言われていますが、確たるデータはありません。

 

今回ご紹介する論文はリバース分割が胚にどのように影響を与えるかを検討したものです。

 

本論文ではIVFとICSIの合計126周期で3日目までEmbryoscopeで培養されたIVF由来胚353個とICSI由来胚436個を用いて後方視的に検討されています。

 

リバース分割は合計27.4%(216/789)の胚で発生し、この216個の胚のうち57個(26.4%)ではリバース分割が2回以上発生しました。

リバース分割が発生したタイミングの割合は1-2細胞で17.7%、3-4細胞では41.7%、5-8細胞で40.6%でした。

またリバース分割のパターンはタイプⅠが18.0%、タイプⅡが82.0%でした。

 

 

ICSI由来の胚では精子の運動性による比較も検討されました。

運動性が低い精子(運動率:<21%)由来の胚はTESE等で精巣から採取された精子、運動率:21-49%の精子、運動率:≧50%の精子に起因する胚と比較してリバース分割の発生率が有意に高かったです(55.2%vs21.1%、55.2%vs27.9%、55.2%vs29.5%)。

 

分割時間はリバース分割がある胚とない胚で比較したところ、リバース分割がある胚では3-4細胞および5-8細胞に分裂するまでにかかる時間が有意に長かったです。

 

胚移植結果の検討では、リバース分割が見られなかった胚は22.1%(29/131)で胎児心拍確認できましたが、リバース分割胚は胎児心拍が確認されませんでした(0/22)。

 

この論文ではリバース分割は胚の発生を損ない、着床の可能性を低下させると結論付けています。

しかし本論文では3日間までの培養となっているため、その後の胚盤胞到達率などは検討されていません。

またリバース分割胚による妊娠例はありませんでしたが、リバース分割胚が必ずしも妊娠しないとは限りません。胚移植の順序で評価が不良である胚から移植する例はあまりなく、リバース分割胚の移植データは少なくなりがちです。本報告のリバース胚移植のデータも少数であり信頼性が低いです。

 

当院ではリバース分割胚であっても少なくない数の胚盤胞到達を確認しており、少数ですがリバース分割胚による妊娠例を確認しています。

以下は2013-2019までの当院でのリバース分割胚移植の結果です。

初期胚移植 妊娠率19.4%(49/253) 流産率38.8%(19/49) 出生率11.9%(30/253)

胚盤胞移植 妊娠率25.4%(28/110) 流産率25.0%(7/28) 出生率19.0%(21/110)

 

この論文と当院での移植結果の差として考えられるのはデータ数の違いによるところが大きいと考えます。

当院のリバース分割胚移植結果からリバース分割胚であっても正常に妊娠できる可能性が示唆されたため、本論文も参考に今後より詳細に検討していきたいです。

 

参考文献:Prevalence, consequence, and significance of reverse cleavage by human embryos viewed with the use of the Embryoscope time-lapse video system 

Fertility and Sterility 2014;102,1295-1300