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私は何度か書いているように 日本語と英語のバイリンガル習得を研究しています。
日本にいた時は、日本人に英語を教えたり、映像翻訳や通訳の仕事をして、アメリカに来てからはアメリカ人に日本語を教えています。
そのため、日本でお仕事をする時は英語を使った仕事や英語教育に関する講演をしたりして、アメリカでは日本語を使って仕事をしていて日本語教育に関する学会発表や海外で日本語を学ぶ「継承語」のセミナーなどをしています。
以前にロサンゼルスでバイリンガル子育てのセミナーをした時、ある日本人のお母さんが「日本語と英語を両方同時に学ぶとセミリンガルになるというのは本当ですか。」と質問されたことがありました。
この時は、私ではなくもっとずっと年配でバイリンガル教育の大御所のような先生が「アメリカで英語で教育を受けながら日本語も学ばせたいという人はいわば『エリート教育』を目指しているのであって、移民してどちらの言語でも十分な教育を受けられなかった子供とは根本的に違う」と答えていました。
アメリカでも別の国でも 移民してくる人の中には自国で十分な教育が受けられなかった人、子供に十分な教育を受けさせるだけの経済力がなかった人が多数います。また移民先で暮らしていくためには移民先の国で使用されている言語ができることが最優先で母語を保持しようという余裕がない場合も多いです。
親が移民先の言葉ができないのに、子供は移民先の言語で教育を受けると、親は子に必要な知識を与えられないし、親子間でコミュニケーションが取れなくなることがあります。その結果、子供は家庭言語(親の母語)と学校で使う言語(学習言語)のコネクションができあがらず、どちらの言語でも新しい情報を得たり、深く思考することができなくなることがあります。
これも以前から書いているのですが、アメリカをはじめとする英語圏では移民は英語を学ぶことが大前提で、エリート教育としてのバイリンガルプログラムは英語が母語の生徒に別の言語もできるようにさせる加算型モデルです。日本での早期英語教育やバイリンガルプログラムやインターナショナルスクールもこれと同じで、日本語よりも英語の重要性を感じているご家庭がわざわざ母語(日本語)以外の言語を習わせているわけです。
最近、日本で話題になっている「外国にルーツを持つ子への日本語教育」は(日本では移民と呼ばず外国人労働者と呼びますが)海外から日本に来て子育てをしている家庭が対象となります。この人たちの中には自国で十分な教育が受けられなかった人、子供に十分な教育を受けさせるだけの経済力がなかった人も少なからずいるでしょう。
そのため 日本国内の日本語教育が日本国外に住む海外子女の日本語教育を参考にすることはできません。日本国外に住む海外子女の日本語教育は「あってもなくてもいい贅沢品のようなもの」でありエリート教育の範疇だからです。
そして日本国内の早期英語教育にアメリカ(や他の国)のESLを応用することにも無理があります。
日本の中学や高校の英語教育も実用性を重視していないので、英語圏に移住して生きていくために必要な言語能力を育むESLとはまったく別物です。それを考えると私がアメリカの大学院で学んだ「日本語教授法・教育法」も「英語教授法 (TESOL)」も日本国内の日本語教育や早期英語教育とは根本的に違って、応用しにくいということをひしひしと感じでいます。