小学校2年生くらいの時、私は担任の先生が大好きでした。その先生は若くてまだ独身でかわいらしくてやさしい先生でした。新任の先生で最初に会った時、「先生に何かしつもんがありますか。」と聞かれ、私は先生に「先生はどこの大学に行ったんですか。」と聞いてしまったそうです。母は自分が出た大学をとても誇りに思っていたし、よく大学時代のお友達が家に遊びにきていました。そのせいか私は子供の頃から「誰がどの大学に行ったのか」に興味があったのかもしれません。知らず知らずのうちに「学歴」を気にするように育てられていたのです。
今、考えると本当に子供らしくない質問をしたな〜と恥ずかしくなります。なぜこんなことを覚えているかというと、その後、十数年もしてから、その先生が連絡をしてきたからです。その先生のお子さんが母の勤務校に入学できないか、という相談のために連絡してきたのですが、その時に母が「あなたがあの先生をとても慕っていたから、いろいろお世話したのよ。」と言っていました。そして先生が、まだ10歳以下の私が自分の出身大学を聞いたのがとても印象的だったと母に話したらしいのです。私はほとんど覚えていなかったのですが、それを聞いた時は、「私はなんて嫌な子だったんだろう」と思いました。
*子供は驚くほど親や大人の会話をよく聞いている。そしてその会話を最初は「模倣」を通して流れをつかみ、さらに「内容」を自分なりのコンテクストに変えて実践していく。
これは言語習得学で一般化されている理論ですが、幼児がまるで大人と同じような口調で話す時は、周りの大人が言っていることを「模倣」している段階で、成長の早い子だと小学校に就学する頃には、会話の内容を十分理解したうえで、同じような会話を大人とするようになります。私の家では、両親がよく「学歴」について話をしていたんだと思います。このことは現在の自分に大きく影響していると感じています。