昨日、NHKで放映された不適切なアニメ動画についての記事を書いたのですが、日本では昔から、メディアが「外国人にある一定のステレオタイプを植えつける」ことに加担していたように思います。
私は幼い頃、父の仕事の都合で、イギリスに住みました。その頃のイギリスには中国人(香港からの移民)やインド人はある程度いたけれど、日本人は本当に少なかったと思います。
ある日、私と母は近所のハンバーガーショップに行きました。まだ日本にマクドナルド第一号店がなかった頃だと思います。
当時は、ロンドンの街中に、何件もあったWIMPYというチェーン店です。
慣れない母が、メニューを見て注文しました。私は幼くて何もわかっていなかったのですが、店の人が
Black or White?
と聞きました。多分、母が選んだのはセットメニューでコーヒーがついていたのだと思います。
当時の(今でもかな?)イギリスでは、コーヒーは ブラックかホワイトで、ホワイトを注文するとたっぷりミルクを入れてくれました。
母は、質問の意味がわからず、聞き返すと うしろに並んでいた男性が
Yellow
と言って周りの人が一斉に笑いました。
母は、お店の人をキッとにらんで
I don't need it.
と言って、注文をキャンセルして店をでてしまいました。
今ではアジア人のわたしたちを「Yellow (イエロー)」という人はほとんどいませんが、当時はあからさまに人種差別的な発言をされたり、バカにされたこともありました。
日本に帰った私たち家族は、家の2階を下宿にして貸し出していました。
どういういきさつだったかはわかりませんが、しばらくケニア人の男性が住んでいました。
彼は国費で留学していたと後で聞きましたが、とても礼儀正しくケニアに帰ってからも毎年クリスマスの時期にギフトを送ってきてくれていました。
これは産経新聞の記事から写真を借用しています。
少年ケニヤという物語が流行したあとだったので、その人が「ケニアの出身」というとみんなは「少年ケニヤを知ってるか」と聞いていました。大柄なアフリカ人男性の彼が近所で買い物をしていると、とても目立ってよくみんなに話しかけられていました。
その人がケニアに帰ることになり、私たち家族は近所の中国料理のお店でお別れ会をしました。ちょっと高級な結婚式もできるような駅前のレストランの円卓で私たちが食事をしようとすると、お店の人が彼だけに割り箸を出し、私たち家族には象牙の箸を出してきました。
母はお店の人に「どうして、この人だけにちがうお箸を出すんですか。」
と聞きました。
お店の人は「象牙の箸はすべるので、食べにくいと思って」と言いましたが、母は「それなら子供の方に割り箸を渡すとか、この人にお箸が使えるか聞いたらいいじゃないですか。」と抗議していました。
私はその時の、ちょっと険悪な雰囲気と母の表情を今でもハッキリ覚えています。いつも正義感の強い母でしたが、この時は本当に毅然とした態度でした。
その人が日本を発つ日、母が「いろいろ不便なことやいやなことがあったかもしれませんが、また日本に来てくださいね。」というと「ありがとうございます。レストランで僕にも同じ箸を持ってきて、と頼んでくれてありがとうございます。いつも同じコップを使わせてくれてありがとうございます。」と言って、いつものように私をひょいと抱き上げてくれました。
あれから半世紀たって、日本はどう変わったのでしょうか。
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