私はこれまで、アメリカ(主に南カリフォルニア)に住む日本語と英語のバイリンガルの言語習得調査をしてきましたが、日本語の会話力を測る時、よく被験者が「日本での経験」を語ることがあります。

 

アフリカ系アメリカ人のお父さんと日本人のお母さんを持つ高校生の男の子が話してくれたエピソードをご紹介したいと思います。(本人の許可を取ってご紹介しています。)

 

彼はアメリカで生まれ育ったのですが、小学校2年から6年まで日本の小学校に通ったそうです。そして今度はアメリカにいるお父さんの家族と暮らすため、アメリカにもどってきました。

 

日本の小学校に転校したばかりの頃、日本語もあまり上手じゃなかったし、友達もいなかったし、学校がつまらなかったそうです。そして仲間外れにされ、給食の時も一緒に食べてもらえなくて、辛かった時期があったそうです。

 

そこで担任の先生が「XX君を肌の色が違うからと言って、仲間外れにしたり、いじめたりするのはよくないよ。」と話してくれたそうです。

 

すると一人の男の子が「ぼくはXX君が黒いから嫌いなんじゃありません。XX君はトイレに行っても手を洗わないし、給食の前に手を洗わないから、ぼくの食べ物にさわってほしくないんです。それにXX君は休み時間に思いっきりボールをぶつけてくるし、順番を守らないで遊具に登るから嫌なんです。」と言ったそうです。

 

彼はその内容をハッキリとは理解できなかったけど、先生がもう一度説明してくれて、やっと何がいけなかったのかがわかったそうです。

 

そして、彼は「ぼくは人種差別されていたんじゃなくて、ぼくが嫌われるようなことをしていたんだ、って気づいた。」と言っていました。

 

そして自分は学校のトイレが苦手で、一度も使ったことがなかったけど、みんながトイレに行くからくっついて行っていただけだったことをうまく説明できず、「トイレに行っても手を洗わない」と思われていたことに初めて気づいたと言っていました。

彼は「アメリカだったら 他の子が手を洗っているかどうかなんて Who cares? って感じだけど、みんなボクのことよく見ていたんだな〜。って思った」と言っていました。

 

それからは、スポーツが得意で明るい性格の彼は、みんなと仲良くなって楽しい学校生活を過ごせたそうです。

 

日本には人種差別がない、なんて楽観的なことを言うつもりはありません。

でもこの話を聞いた時、だれかが嫌われていたり、いじめられていたりした時、それをその人の属性(人種や国籍など)によるものだと一方的に決めつけるのではなく、どうしてそんなことをするのか、なぜその人を仲間に入れられないのか、を聞いてみることも必要だと思ったエピソードでした。

 

ちなみに我が子は日本の小学校に体験入学していた時、しょっちゅう授業中にトイレに行き、先生に「ちゃんと休み時間に行きなさい。」と注意されていました。アメリカの小学校は休み時間が1時間ごとにあるわけではなかったので、いつも行きたい時にトイレに行っていました。そういうちょっとした文化の違いも慣れないと、とまどうことがあるかもしれません。

逆に日本からアメリカに来た子供は最初の頃、いつトイレに行ったらいいかわからず困ったという話をよく聞きます。日本の子がトイレでハンカチを使っていたら「それ、何回も使ったら汚くない? ペーパータオル使いなよ。」と言われたと言う話も聞きました。学校のトイレ事情、奥が深いですね。

 

 

 

 

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