日本では、初等教育からの英語導入が始まり、さらには「日本語教育推進基本法案」が提案され、小学校での「言語教育」の議論が活発になってきています。
以前に、我が子が日本語の補習校に通い始めた頃、ひらがなの書き方に苦労した話をブログに書きました(その記事はこちら)
日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字と文字表記が複雑なので、小学校低学年では「書く力=文字が正確に書ける」ところから始まることが多いようです。
日本の中学校の国語の教科書に、向田邦子さんの「字のないはがき」という作品が入っていました(今も入っているかもしれません)。向田さんの妹さんは、小学校1年生で学童疎開した時、まだ字の読み書きができませんでした。それで向田さんのお父さんは妹さんに「元気な時は大きい丸を書いてはがきを出しなさい。」と言ってたくさんの宛名が書いたはがきを妹さんに持たせたそうです。丸を書いたはがきはバツに変わり、ついに手紙が来なくなって、お母さんが迎えに行った時は、妹さんは病気で痩せこけていたと書かれていました。その娘さんを連れて帰った時、お父さんは初めて男泣きをしたそうです。
私の娘が通っていたロサンゼルスの補習校の幼稚園では「ひらがなが全部かけないと、小学部に入れない。」といううわさがありました。実際、試験があるわけではなく、みんな小学部に入りましたが、娘は補習校の小学校1年生になった時、ひらがなも英語のアルファベットも書けませんでした。
それは「書けない」というか、その文字(シンボル)が何を意味するのかを理解していなかったのです。もちろん「A」という字を見せて「これ書いてみて」と言えば、上手に書けました。でも絵カードを見てスペルを覚えたり、ひらがな練習帳のようなものは一切やっていなかったのです。
今、日本の小学1年生で「ひらがなが書けない子」はどのように見られるのでしょうか。我が子のように書けたとしても、字体が悪いという理由で、何度も練習させられたりするのでしょうか。
「字を上手に書くこと」「字を正確に書くこと」と「文章を上手に書くこと」はまったく異なる能力を要求しているわけですが、小学校では、これが一括りに「書く力」として評価されているような気がします。
これは日本だけではなく、アメリカでも「Writing=good spelling」のような指導をする小学校の先生は多いです。
現在、娘が通っている小学校は、大学のリサーチ機関の付属校です。ここでは英語のスペルも教えないし、間違いも直しません。
このことについては、前にもブログで書きましたが(その記事はこちら)、こういう指導法を通して、子供はとにかく「自分のアイデアを文字化すること」を覚えていきます。
アメリカには日本の文部科学省の指導要領のようなものはありませんが、コモンコアという共通の教育の到達目標はあります。(コモンコアに関する過去ブログ記事はこちら)
小学校4年生では以下のような目標があります。
Write opinion pieces on topics or texts, supporting a point of view with reasons and information.
与えられたトピックについて、意見を書き、その意見の根拠となる理由を示す というものですが、これは4年生くらいの知的レベルではかなり難しく、教員の腕の見せどころです。
昨日の、娘の学校のOPEN HOUSE(展覧会)で、娘が書いたエッセイ(作文)を見せてもらいました。
これは最初の1ページ目ですが、「意見を書き、その意見の根拠となる理由を示す」という目標には達していると思います。
この文章をタイプして、ここまで仕上げるのに、娘は何度も何度も手書きで下書きをしていました。先生も根気よく直してくれたのだと思います。
もし現在、日本語でも英語でもお子さんの「書く能力」を伸ばしたいと思っている方は、まず「書く」ということは、何を意味するかを再考されるとことおすすめします。
そして、将来、別の言語(特に英語)で書く力を伸ばしたい時に 日本の小学校で求められた「書く力」=「文字を正確に書く」ことを応用せず、総合的な表現力を伸ばしてあげられたら、きっと世界的に「上手に書ける」能力が備わると思います。
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