自分の子供の成長の遅れに気づいたのは、かなり早い時期でした。

もちろん、同じ月齢の白人の子供に比べると、身体が小さく食事の量も少なめでしたが、何よりも遅かったのが「言語発達」でした。

 

幸い、私は多くの日本語と英語のバイリンガルの子供の発達のデータを見ていたので、日本語と英語の両言語を同時に習得しているから、言葉が遅いのだとは思いませんでした。けれど同じくらいの月齢のお子さんが、どんどん言葉を発し、お母さんが迎えに来ると、楽しそうにその日の出来事を話しているのを見ると、涙が出たこともありました。

「〇〇ちゃん(ウチのコ)は、日本語と英語の両方を聞いているから混乱しているんですよ。」と言う日本人のお母さんもいました。心の中で反論しても「ここは学会じゃないんだ、こんなところでバイリンガル理論をかましても仕方ない」と唇を噛んだこともありました。

 

子供は言葉で自分の気持ちが伝えられないもどかしさから、泣いたり暴れたり、問題行動も多くなっていきました。(問題行動については、後から詳しく書きます)

 

娘が3歳6ヶ月の時、デイケアセンターの先生の勧めで、ロサンゼルス学校区の特別教育のセンターにテストを受けに行きました。視力や聴力などの身体検査と、コンピュータによる知能検査を受け、絵本を見ながら先生の質問に答えたりしました。

知能検査は、その子の一番強い言語で受けさせることになっていて、私は娘の母語を「日本語」と申請書に書いたので、日本語の通訳の人が同席しました。

その日、おそらく我が子は、一言も日本語を発しなかったと思います。通訳の人が「この子は日本語がわからないみたいです。英語の方がよくわかっていました。」と言い、我が子の「第一言語」は「英語」と言うことになってしまいました。

 

そのテストの結果により、我が子はSpeech Therapy(言語療法)とOccupational Therapy (作業療法)を近所の小学校で受けられるようになりました。日本の「療育」に当たるサービスだと思います。

 

親の中には、自分の子供の発達が遅れている、発達に障害がある、という事実を認めたがらない人も多いのではないでしょうか。私もその一人でした。

ただ自分が言語発達の研究者で、多くの子供のデータを見ていたからこそ、自分の子供の成長の遅れに気づき、早いうちに支援を受けられたのは良かったと思っています。

 

今、私は英語がわからない日本人のお子さんがロサンゼルス地区で知能テストを受ける際に、通訳の手伝いをすることがあります。そんな時「日本語を話さない=日本語がわからない」ではないということを頭において、辛抱強く、子供の発話を待ちます。そのたった数分が子供の将来を大きく変えてしまうかもしれないからです。

 

バイリンガル子育て〜我が子の0〜4歳[1]