北海道北部でも、ようやく根雪になり、後戻り無しの冬本番になってきた(といいつつ、今日は雨...)。研究林のすぐ脇を流れる天塩川には、ちいさな氷が浮かび始め、もう数週間もすると川面一面が凍りつくだろう。今年は、凍った川の上を歩いて渡ってみたいと思っている。

 

 

 

もうフィールド調査はおしまい...としたいところだが、なかなかどうして、山に行き続ける毎日。

 

今日は2月に予定している実習の準備で山に入り、雪を掘り、その下の土を掘った。意外と思う人も多いかもしれないが、冬、雪の下の土の中には沢山の生物が潜んでいる。今日もスコップ一振り目で、サクラミミズの成体を掘り当てた。

 

 

このミミズたちは、どんな冬の土の中でどんな働きをしているのか、というかしていないのか。

森の中で1m以上の雪を掘るのはただでさえ大変なのに、しかもその下の土まで掘って研究をするのは相当の好き者である。わかっていないことは山積みで、ワクワクしている。

 

小林

 

 

本年度から、豪雨や地震などで発生した山腹崩壊後の、植生の遷移に関する研究を初めています。

 

今日は、共同研究者の2人と、今後、人工的に山腹崩壊を真似た実験を行うサイトの事前調査に行って来ました。

 

サイトの1つは蛇紋岩土壌という特殊土壌の上に成立している森林に設置します。土壌や植生タイプ、斜度などが様々な場所で実験を行い、植生回復の速さを制限している要因を洗い出すのも目的の1つです。

 

 

蛇紋岩土壌の様子。

 

 

アカエゾマツに加えて、ダケカンバやトドマツなども生えています。

 

 

谷を挟んだ対岸の山を見渡せば、雪が積もっている場所の標高もだいぶ下がって来ました。今週は12月上旬並みの寒気が北海道の上空に入っているようです。

 

雪が降る前に、やってしまわなければならないことがたくさん...最後の掻き入れどき?です。

 

小林

人為的な要因によって頻発している山火事が、森林に及ぼす影響について研究をするため、10月上旬から2週間ほど、極東ロシア・アムール州北部へ行っていました。

 

アムール州までは、新千歳ー成田ーウラジオストクーブラガべシェンスクと、合計の飛行時間5−6時間ほどで行く事ができます(乗り継ぎが悪いので実際には1.5日かかってしまいますが)。

 

アムール州は、南部は北海道と似た森林(ミズナラやシラカンバ、カエデ、エゾマツなど多様な樹種が混ざって生えている森)が広がっていますが、北部は、いわゆるシベリアへの玄関口、樹種の数も減りグイマツ(カラマツの仲間)やシラカンバなど限られた種が優占する単純な森となります。

 

紅葉するグイマツ。

 

今回は、山火事が起きた際に燃料となる落葉のサンプリングが主な目的の1つだったので、枯葉が地面に落ち、雪が積もる冬直前に行きました。この時期は乾燥しがちで、山火事が発生しやすい時季でもあります。

 

朝晩の気温は氷点下となり、まだ寒さに慣れていない体には、だいぶ堪えましたが、天気に恵まれ、予定通りに調査を終えることができました。自然保護区にある山小屋での滞在も、とても貴重な経験になりました。

 

共同研究者であるセミョン、サーシャ、そして小林研M1の大塚さん。

 

野外調査が終わった後は、サンプリングをした樹皮や落葉をもって、共同研究者の所属先であるRussian Academy of Scienceの極東支部、 Institute of Geology & Nature Managementがあるブラガベシェンスクという街へ移動し、山火事実験のセットアップなどを行いました。

 

 

アムール川(黒龍江)のほとりにあるブラガベシェンスク。川の向こうには中国の町が見えます。

毎年、訪れるたびに新しいビルが立ち、夜にはビルの壁いっぱいに派手なプロジェクションマッピングが行われるなど、恐ろしい速さで発展している地域でもあります。

 

 

「極東ロシア」というと、モスクワからも遠いし、不便な場所というイメージがあるかもしれませんが、Russian Academy of Scienceの...というより近年のロシアの発展はめざましく、研究所には日本でもあまり見ることができない高額な分析機器がたくさんあります。また、研究面以外でも、個人的には生まれて初めて電気自動車に乗ったり、ローカル線のCAさんが英語で話しかけてくれたりと、調査を始めた10年前とは変わりつつあるロシアの「うごめき」のようなものを感じました。

 

今後、これらの成果を取りまとめにはいりますが、現在のプロジェクトは今年でおしまいです。

 

これまで、山火事など様々なテーマで極東ロシアで研究を続けてきましたが、自分がやりたいこと、今の自分だからできること、そしてすべきことは何なのかを改めて考えながら、今後の展開について、じっくり悩んで行きたいと思っています。

 

 

小林

 

 

 

9/9-14にかけて、天塩・中川研究林を舞台に、表題の実習を行いました。

 

温暖化研究を実際に行なっている現場を見た翌日から、文献検索、フィールドワーク、実験、成果発表と、1週間でやる内容とは思えない内容を実施しました。

 

 

 

今年は植物の地上部ー地下部の形質、深い土壌に注目して、それらの温暖化応答について取り組みました。

 

 

 

 

 

 

参加者の両名とも、熱心に取り組んでくれ、どちらのテーマももっと深く掘り下げたい!と思わせるような興味深い結果が得られました。

 

ここでの経験が、卒論など色々なところで役だってくれればと思います。

 

 

ちょっと寒かったけど、最後は恒例のバーベキュー。

 

 

 

7月下旬から8月中旬までの約1ヶ月間、スウェーデン北部のアビスコ周辺にてツンドラ植生の調査をしてきました。今回は、共同研究者たちが、将来予想されている気候変動を模倣する実験をしているサイトで、維管束植物やコケ植物、そして土壌を調べてきました。

 

 

 

調査地のある氷河の後退域までは、ヘリコプターで移動します。そこにテントを立てて、調査の開始です。

 

 

見た目では、当初の予想とは異なる応答を示していそうな植物たち。データをお取りまとめるのが楽しみです。

 

 

滞在当初は、記録的な猛暑で北極圏と言うにも関わらず平地にあるアビスコでは30度近い気温でしたが、山の上では雪もぱらつくほど寒くなる日もありました。

 

アビスコには2010-2012までの2年間、ポスドクとして住んでいました。久しぶりに会えた研究者仲間、友人も多く、昔のこと、これからの研究のことなど色々話すことができ、有意義な滞在となりました。

 

 

ベリーも美味しい時期で、各種堪能しました。何と言っても、クラウドベリーが一番!

おやつを現地調達しながら調査できるのも、北極圏研究の醍醐味です。

 

 

小林

 

小林です。

 

今日、研究林のみんなで今年6月に雄武町で発生した山火事跡地へ調査へ行ってきました。焼失面積は200ha以上、地面にはそこかしこで炭がつもり、日本離れした規模の山火事と、すでにササが勢いよく回復しているのには驚きました。

 

 

実際にフィールドを見ると面白そうなテーマが思いつきますね。再生している枝を食べている鹿がいたりして、山火事と鹿が樹木の更新などに及ぼす相互作用が気になりました。

 

さてさて。

1週間ほど、表題の学会に参加していました。ミラノといえば、「冷静と情熱のあいだ」の舞台。

 

さて、今回は、冬の気候変動が陸域生態系へ及ぼす影響に関するシンポジウムでの話題提供と、進行中の土砂崩れに関する研究の最新トピックを勉強することが目的でした。

 

 

シンポジウムでは、北米、ロシア、北欧、そして日本など、冬の気候がいかにも重要そうな国・地域からの研究が紹介されました。夏よりも予測されている温度の上昇幅が大きい冬、その気候変動に関する研究も、ここ数年でかなり多くなりましたが、まだ、土壌の窒素循環へ及ぼす影響など以外は結論的な見解は得られていない印象です。

 

そんな状況を生み出している原因は、ひとえに夏の気温上昇ほど”こと”が単純ではなく、温度はあがるけど、雪は増えたり減ったりする場所があるという、冬の気候変化の不均一性にあります。さてさて、今後このテーマ、どう展開していくのがいいか。各研究で、想定(予想)している変動も、検証している方法も、見ている対象もバラバラのシンポジウムをみながら、色々思案していました。

 

また、学会では、土砂崩れが森林の生態系サービスに及ぼす影響、気候変動と山火事撹乱との関係などについての話題も多く、研究室で進行中の他プロジェクトのトピックも勉強できました。学会全体として、パターンを示して原因については言及していない(検証していない)研究が多かったのが印象的ですが、景観レベルのできごとは起こっているスケールも大きいし、実験的に原因を検証しにくそうなので、そういうものなのでしょうか。

 

学会の中日、講演が休みでエクスカージョンの日には、ミラノの北にあるベルガモ地方へ脚を伸ばし、地元の森林研究者に、イタリアンアルプスの森を見せてもらいました。ところどころSpruce Bark Beetleで枯死したヨーロッパトウヒが立っていて、アラスカでみた白骨化した森が懐かしくなりました。温暖化に伴って、虫害も拡大しているということです。

 

 

 

食べ物も美味しかったですが、熱波のせいで珍しく若干バテ気味です。早く北海道に帰りたい。

 

 

小林@羽田

 

 

 

珍しい国から天塩研究林にお客さんがいらっしゃいました。イスラエルで行われている長期生態学研究 (LTER)の代表で、山火事が土壌や植物に及ぼす影響に関しても詳しいPua Barさんです。

 

滞在中は、進行中のプロジェクトにアドヴァイスをいただいたりしながら、研究林を案内しました。

 

いつもは、黙々とやっても一向に進まず、「罰ゲームなのか?永遠に続くのか?」という自問自答に陥る落葉サンプル拾い(針葉樹)も、Puaさんのマシンガントークのおかげであっという間に感じました。イスラエルの真夏の砂丘で動物の力を借りて芽吹く不思議な植物、そもそもイメージすらできないイスラエルの森についてなど、興味深い話をたくさん聞くこともできました。

 

 

 

また、世界の何処かで会いましょう。

山もありそうだし、いつか、イスラエルにも行ってみたいな。

 

 

小林

昨年から、丸太の分解を調べるプロジェクトをはじめています。

 

森に乱立している膨大な量の木の幹たちも、木が枯れればいずれは分解し、土や大気へ還っていきます。分解しなければ、森の中は丸太だらけになってしまい、さぞや歩くのも大変でしょう。今見ている森がその姿に保たれているのは、丸太を分解してくれる生物のおかげといってもいいかもしれません。

 

しかし、丸太の分解には時間がかかるので、落葉や枝などにくらべてその分解にかかる時間や、分解に関わる生物(丸太を住処や餌資源としている生物)などについて、わかっていないことが多いのが現状です。

 

丸太は、北大の中川研究林と苫小牧研究林、岩手大学の滝沢演習林、そして宇都宮大学の付属農場にある森林で調査、比較しています。普段は、北海道北部にて笹薮と格闘しながらのフィールドワークばかりですが、これらのサイトは下層植生もまばらで作業も快適です。

 

 

計画では10年間モニタリングする予定です。地味で気の長い話ですが、木本植物の優占する森林という生態系でおこっている物質循環の特徴を明らかにする上で、重要な研究になると思っています。

 

 

小林

 

名寄にいる他研究室の学生も巻き込んで、ゼミ後に生態系サービス(別名ギョウジャニンニク)を採取しに行ってきました。30分ほどで食べきれないほどとれました。

道北は、生態系サービスの宝庫ですね。

 

 

チジミ、卵とじ、豚肉との炒め物など、酒が進みます。

途中で何の脈絡もなく、いただきものの巨大なホタテも登場しました。

 

 

来年は、生態系サービスの炊き込みご飯に挑戦したいと思っています。

 

小林