浅田次郎著『珍妃の井戸』読みました | J'aime・・・

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『蒼穹の昴』の続編として書かれた作品。『珍妃の井戸』読みました。浅田次郎さんの作品です。

 
本 作品紹介 本

美しき妃はなぜ、誰に殺された?

列強諸国に蹂躙(じゅうりん)され荒廃した清朝最末期の北京。その混乱のさなか、紫禁城の奥深くでひとりの妃が無残に命を奪われた。皇帝の寵愛を一身に受けた美しい妃は、なぜ、誰に殺されたのか? 犯人探しに乗り出した日英独露の高官が知った、あまりにも切ない真相とは――。『蒼穹の昴』に続く感動の中国宮廷ロマン。

 

コーヒー 感想 コーヒー

  面白かった~!夢中で読めました。でも、中国清朝末期の歴史は非常にややこしいので、そのあたりの歴史背景をもっと理解していたら、更に面白さは深まった思います。だって、「太平天国の乱」「義和団の乱」「アヘン戦争」、欧米列強や日本・ロシアの清朝介入とか、ホンマややこしい。しかも、清朝の中にも、漢族、満州族など民族の歴史や関わりが複雑で、ほんま中国四千年の歴史の偉大さ、深さや大きさに頭の中がぐちゃぐちゃになります。

 そんなことはさておいて、ミステリーな歴史小説の面白さを痛感できる本でした。歴史的事件も、人によって立場によってさまざまな受け止め方があります。おなじ事件でも、視角が違えば、見方も変わってきます。この物語は、珍妃の死を通して、珍妃の死に関わる6人の人物が語った珍妃が死に至った経緯の物語です。誰一人として同じ証言をしていない。だから読み手もあれこれ読みながら真相究明に関われる。実在した登場人物と架空の登場人物が織りなす歴史への誘いです。

 珍妃の死は、西太后が命じたものとされています。中国三大悪女として世界の誰もが認識している西太后。本当はどうだったの?素直にそう認めればよいものの、『蒼穹の昴』 『珍妃の井戸』を読むことで、偉大なる歴史を持つ中華の権力者としての、苦悩の選択故に、抗生で「悪」とよばれる決断をしたのでは?そう思える部分もあります(そういうには残酷すぎる出来事が多くて、正々堂々と西太后の方を持つのはちょっと難しい)。歴史って、歴史上の人物の真実を知るって、本当にミステリーです。

 この物語の主役、珍妃、聡明な方、光緒帝の寵愛を一身に受け、当時の王朝ではありえない「夫婦」のような関係で皇帝を支えた妃。歴史や人生に「If」はないけれど、もしも二人の人生に「If」があれば、清王朝の末裔として、あるいは、清王朝からの亡命者として、つつましいながらも幸せな人生が遅れたのではないかと思わずにはいられません。

 珍妃が、身を身を投げられた井戸は、今も「珍妃の井戸」として紫禁城に残っています。女性の身体がやっと入るくらいの小さな井戸に珍妃は頭からその身を沈められたそうです。井戸の淵には、蠍や蛭(ヒル)が生息し、珍妃の白く美しい肌を食い物にするという場面もありました。井戸に投げられ命尽きるまでの珍妃を思うと、本当に辛いです。歴史の中で繰り返される人が人の命を奪う残虐な行為。その非道さを知りながらもなぜ人はこの残虐な行為を止められないのでしょうか?

 この本には、前編『蒼穹の昴』の登場人物も出てきます。『蒼穹の昴』に描かれていなかった場面の様子もわかり、さらに前作の面白さが膨らみます。今回も登場するミセス・チャンという西太后の姪というミステリアスな美しい女性の存在がとても魅力的でした。

 さて、次は次の続編『中原の虹』を読もうと思います。気になる登場人物のその後どうなるのか?楽しみです。