いつものようにタバコを吹かしていると、やけにコツコツうるさい足音が近づいてきた。
相変わらず立て付けの悪いドアを開けて入ってきたのは警察の制服を着た女だった。
「FOPD、巡査のレイだ。チューナーはどこだ?」
「へいへい、ここにおりますよお巡りさん。」
FOPDというのがここの警察である。
もっともここでは追いかけっこの鬼程度のものだが。
「んで、警察様がどうしてまたこんな辺鄙な解体場に?」
「腕利きが居ると聞いてな。私のミニパトに市街の中心部に特化したチューニングをしてもらいたい。」
「了解。それじゃあんたのミニパトを見せてもらおう。」
……
「こいつだ。」
「ほう……'91年型キャロルのミレディか。」
FOPDのパトカーは隊員の私物なのでまるきり民生用なのだ。
「注文して良いか?」
「どうぞ。」
「このフォルムと黄色いナンバーが好きなんだ。この二つは崩さないようにしてもらいたい。」
「そんなキツい顔つきの割に可愛らしいこと言うじゃねぇか。」
「う、うるさい!女だからとなめてもらっては困る!」
「じゃあとびっきりホットに仕上げるぜ、巡査殿。」
「た……頼んだ。」
……作業場……
「F6Aか……これならツインカムターボのも載るな……」
「よし……こいつは軽く、キレよくしてやらにゃあな……」
……納車……
「私のキャロルは出来上がったか、チューナー?」
「もちろん。」
そこにあるのは、サイドにFOPDの文字が勇ましく輝くキャロル。
「メニューを聞かせて貰おうか?」
「エンジンを純正からアルトワークスと同じスペックのものに換装した。型式は同じだからしっかり660ccに収まる。今回はECUに吸排気、タービンも手を入れたから、120馬力位は軽いな。」
「なるほど。」
「クロスミッションもセットだ。路地裏なら最速だろうな。その代わりすぐ頭打ちになるからロングストレートは諦めてくれ。」
「なに、元々そのつもりだ。」
「規格が当時から変わってるから少しだけボディを広げた。まぁバックミラーで見られる分には分からんだろうが。ロールケージをビルトインしたんだが、自然になじんでいるだろ?」
「なに?それは分からなかった……」
「ま、他にもあるがこんなもんだ。ちぃとヤンチャ坊主だからな、ヤケドするなよ?」
「なめてもらっては困るな。」
キャァゥルルル、ブルルゥ……
ブゥン!……ンゴンゴンゴ。
「な?」
「な……!」
キャゥルルル、ブゥン!
ブワンゥワァアアン!ブヮアアア!……
「おーおー、なかなか可愛いじゃねぇか……」
照れ隠しのように大急ぎで走り去るレイを、目を細めながら見送った。
「さぁて、と……店じまいにしようか。」
ドアの古びた看板を「CLOSED」にして、オヤジは一日を終わらせた。