体育倉庫の窓には格子が付いていた


その隙間に雲が流れていく


真っ青な春先の空


霞む雲


埃っぽいマットの上には


乱れた制服を纏うあの子がいた


疑心暗鬼なんだ


僕らの箱庭について


君に触れて消えかかるモラトリアム


捨てられなかった自尊心も


わかった気になっていた世界の構造も


守らなきゃいけないと思っていて


でもなんでそうしなきゃいけないんだって


叛逆の念に駆られていた規範も


内向的な世界観も


純情も


全部が君のくれる途方もない愛で


溶かされていく


例えば星空を見上げて


宇宙に思いを馳せる時のような


そういう類の途方もなさが


実感として体を巡っていた


こんなにも心が満たされてしまうなら


もう他のことはどうでもいいなんて


思っても仕方がないと思うんだ


「気持ちよかったね。」


彼女は指を絡ませる


優しい声が鼓膜を揺らす


研ぎ澄まされた体は


その感覚にさえ敏感になっている


すこし後ろめたい気持ちがしたんだ