「間違っている。」
偉い人に言わせれば
僕らの世界は誤りらしい
ところで昨日
生まれて初めてキスをした
昔の識者が綴った言葉
最もらしいその文字を
正しく処理できない
国語のテストはいつも苦手で
筆者の主張はわからないし
登場人物の心情は
いつまでたっても言葉にならない
君があの大雨が降った文化祭で
グチャグチャの演奏に乗せて
「優しくなりたかった。」
そう歌った理由も
未だに文字に起こせないんだけど
それでもちゃんとわかってるつもり
きっと何も知らないだけ
赤を見ることが出来ても
それがイメージできても
その色の絵の具がないと
キャンバスの上には描けない
それにこれを
キャンバスの上に描いてしまったら
それはもう違う何かなんだ
一方的な会話だった
僕の世界に溢れたコミュニケーションは
「君のセックスってほぼオナニーだね。」
矢印が向かい合って繋がっても
この心はつながらない
運命さえ共にする時にだって
きっと曖昧な絆なんだ
正しさを探して街を歩いた
電灯も
街路樹も
舗装された遊歩道も
新しくできた信号機も
全てが出来損ないだ
住宅地に埋もれた中学校
駅前のパチンコ屋
寂れたクリーニング店
若者のいない花屋
薬屋で万引きした少年
一人バスを待つ少女
ガタガタの地平線と
そこへ沈んでいく夕日と
不健康な色した雲と
虚な空
矮小な宇宙
拡散し続ける心
電子レンジにかき消されたWi-Fi
重労働な下り93mbps
暇そうな上り83mbps
動かないタイムライン
デタラメな検索結果
不恰好な指
眠れない夜
眠たい朝
死にたい昼下がり
最低な坂道を駆け降りて
陸上選手なスピードで
不完全な街に
未完成な僕ら
頑張って生きようとして
疲れてしまうことが
どうしようもなくダルくなっている
有限な時間のなかで
無限の欲望を抱いて
どうしようもない三角形の頂点
どうしたって真っ直ぐ繋げない
間違っていてごめんなさい
そうだとしてもなお
つながっていたいなら
どうしたらいいんでしょうか
教えてください偉い人