新しいあなたで触れた

 

アップデートを続けるソフトと

 

古くなり続けるハードの矛盾

 

言葉が体に追いつくスピードで走れば

 

伝えたいことはきっと

 

伝えたい言葉になるのに

 

雨が降りそうな空の奥で

 

生暖かく僕等を包んだ朝日を

 

あなたの瞳のレンズに転送して

 

ファインダー越しに見たその姿が

 

僕の右半身を掠め取っていく

 

そして残された僕の左側が

 

ただ追いかけ続ける残像はまるで

 

この世界の犯している過ちを

 

ひたすらに浮かび上がらせるかのように

 

怪訝な程に美しく

 

自信なさげな金色の粒子を

 

無為に漂うだけの空気の中に

 

そっとひと粒ずつ丁寧に溶かしていった

 

そうやって風に揺れた不格好な髪

 

スカートの裾の解れた糸から

 

あなたという存在が

 

他愛のない朝の中にほどかれて

 

不可逆な星の自転に逆行して

 

夜の方へと引き寄せられていく

 

あなたは向こう岸へ行こうとする

 

川の流れは穏やかすぎて不安になる

 

まるで世界が逆さまに

 

ひっくり返る前兆のようなんだ

 

飛び石の上であなたは

 

重力に逆らって何を思うの?

 

間違いだらけの街の中で

 

ただあなただけが

 

正しく日々を置き去りにしていく

 

フィルムの中に

 

閉じ込められていたはずの

 

儚くて優しいあなたの笑顔が

 

網膜に張り付いた朝焼けに焼却されて

 

線香花火のような煌めきを

 

冷たく乾いた街に放っている