路地裏
半開きの扉の様な狭苦しい空を見ていた
もうすぐ雨が降りそうだ
君を見つけられないまま
もうこの夏が終わろうとしている
何年も前に潰れた診療所の壁は
酷く緑化していた
僕の心を診てくれた先生は
隣のクラスのあの子を犯して
今は刑務所の中らしい
塾の夏期講習で見かけたあの子は
いつも教室の隅で
5000円もしたあの参考書を枕に寝ていた
張り出された模試の成績は最下位で
その一個上が僕だった
夏期講習最後の日
講習の成果を測るためのテストが
一番前の席から配られる
大体100人くらい収容できるこの教室に
白い波が押し寄せてくる
テストが始まって
僕が数学の大問2番を解こうというところで
彼女は教室を飛び出していった
僕はその実追いかけてみたかった
テストを放り出して
彼女はどこへ行ったんだろう
数学どころではなかった
バラバラになった心を
整理するための公式を
僕は知らない
英語の試験が配られるまでの小休憩
僕は塾の入ったビルの外に立っていた
電車が通り過ぎる音が
灰色がかった残夏の街に
喧しく鳴り