あの子は死んだ


自殺だった


ひた隠しにされた真実を


誰も知らない


行き場のない怒りや悲しみは


結局宙ぶらりんなまま


みんなが不安を抱えている


スポットライトの下


彼女の亡霊はこの街を


呪いで覆い尽くした


あの小さな体に


これでもかと詰め込まれた


その悍ましい心の澱は


彼女の魂が破裂すると同時に


この町中に降り注いで


平和なふりを


安心なふりをしていた


この小さな世界を


濁流で洗い流して


その外面を剥いだのだった


誰がいけないんだ


なんて犯人探しが始まるのは


きっと誰もが


罪の意識に苛まれているからだ


日常の中の小さな綻びが


積み重なって


大きな歪みになって


彼女はそれを一手に引き受けて


爆発した


学校が悪いとか


いじめた子が悪いとか


死んだ彼女自身がダメなんだとか


そういうことじゃないことを


誰もが当たり前に知っていて


誰もが当たり前に目を瞑っている


みんな自分は悪くないと


そう思いたいだけなんだ


自分は被害者だって


そう思いたいんだよ


たった一人


加害者を買って出た彼女は


そうやってたくさんの自称被害者を


作り出したんだ


みんなを被害者にしてあげる代わりに


みんなの罪を


罪を